報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

日本のために命を賭ける外国特派員

2005年10月22日 00時02分48秒 | ■時事・評論
前回、フォーブス誌の特派員ベンジャミン・フルフォード氏の著作から引用させてもらったが、このフルフォード氏はすでに日本について何冊もの著作がある。まだ『泥棒国家の完成』しか読んでいなのだが、すべて読んでみたい。前二作の方が評判はいいようだが、この本もけっこうな内容である。命がけでものを書いている人はそうはいない。

この本の最後の章は、『私が殺されれば本はベストセラーになる?』というタイトルで締めくくられている。この章で氏は、「ただ、怖いのは、怖い。しかし、臆病になっていては、問題は解決しません。私も直接脅かしを受けたことがあります。カマボコにするとか言われました。」とさらりと述べている。

『それから、私の本の担当者はヤクザより非情です。私が書きすぎて殺されたらどうすると聞くと、「その方がいい」と言うんですね。なぜなら、その本は間違いなくベストセラーになるからです。(笑い)』

ユーモラスに書かれているが、決して冗談ではない。これらの言葉の中に著者の強い決意を感じる。実際、僕は著書を読みながら、「こんなことを書いて、よく生きているなあ」と本気で思った。そういう本はそうそうあるものではない。カレル・ヴァン・ウォルフレン氏の『日本権力構造の謎』以来だ。

フルフォード氏やウォルフレン氏が書くものは、本来、日本人が書かなければならないものだ。それを、外国人特派員が命を賭しても書くというのは、まったく主客逆転である。しかし、なぜ彼らはそうしなければならなかったのだろうか。それは、日本のジャーナリストは知っていても絶対書かないからだ。日本人が書かないから、彼らが書くしかなかったのだ。我が国のジャーナリズムの頽廃と臆病を如実に物語っている。

「日本のマスコミは責任を果たしていない」とフルフォード氏は断じている。「私と同じように思っていた日本の記者も、あるところまで行くと、結局潰される。書かなくなるんです。」

日本のマスメディアは、記者クラブというギルドによって特権を享受し、競争もなく、絶対安全なぬるま湯の中で権力に迎合している。それをまったく疑問にも思わなくなっている。そんな彼らが「真実」に対して命を賭けるなど、あり得ないことだ。外国人特派員の方が日本人のために、命を賭して日本の矛盾を突ている。日本のジャーナリスト(と呼んでいいのか?)は、恥を知るべきだ。大衆紙の方がよほど忌憚なく堂々と政府を批判している。

<フルフォード氏が分析する小泉改革とは>

フルフォード氏は、小泉改革についても言及している。小泉首相の「道路公団改革」「年金改革」「三位一体改革」について、小泉改革というのは「実現させてはいけない”見せかけ”のシナリオだった」、「大増税計画の方が本当のシナリオ」と述べている。

『国家が収入 income を増やす方法は、国民から税金を取れるだけ取るか、金を貸してくれる外国から借金をするしかないのだ。現在の日本は、このうちの「税金を取る」方法を強化できるだけ強化しているのである。それを、小泉は「改革」”reform"と称しているにすぎない。国債も形を変えた税金にほかならないのだ』

つまり、旧来の利権構造は、実はまったく手が付けられていない。それどころか、強化されている。小泉改革とは、改革に見せかけた旧体制の強化にほかならない。一時、メディアは、道路公団や社会保険庁の不正や腐敗をあぶり出しているかのような報道をしていたが、これは単に、改革が進んでいるという印象を与えるためのダミー報道にすぎない。単発のザコのようなネタでしかなく、本質的な腐敗のと利権の構造には一切触れていない。

また、フルフォード氏は、『いま小泉がやっていることは、ほぼアメリカが失敗したことの模倣 imitate にすぎない』『彼の政策を「構造改革」と呼ぶこと自体がおかしいのである』と述べている。

まさしく、その通りである。しかし、日本のメディアは小泉首相を「改革者」と持ち上げることしか能がない。「郵政民営化」法案が成立したあと、絶賛する記事しか載っていないようだ。僕は新聞を取っていないし、読む気にもならない。森田実氏のサイトでこの間の新聞の内容を知り、さもありなんと思った。日本のメディアは、日本人の生活を奈落へと導く共犯者というしかない。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C02216.HTML

フルフォード氏は、日本の政治経済のもっと深い闇に焦点をあてているのだが、ここでは触れない。フルフォード氏は、その著書で日本たたきをしたいわけではない。日本と日本人に対する深い愛情なくしてこういうものは書けない。だからこそ、命を賭けられるのだと思う。氏の祖父は、戦前の排日移民法にただひとり反対したカナダの国会議員だそうである。

日本のメディアには、ぜひフルフォード氏の言葉を受け止めてほしいと思う。本来、あなたたちメディアがしなければならない仕事を、外国人特派員が命を賭けて代行しているのだから。