報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

取材準備:体力

2005年03月08日 19時48分32秒 | 報道写真家から
 報道カメラマンにとって、これが一番大事かもしれない。
 極端に言えば、写真の腕よりも腕力、いや体力の方が重要と思える。僕のカメラバッグは7~8kgあるが、これをぶらさげて、炎天下を丸一日歩き続けるのはかなりつらい。体力の低下とともに、集中力、判断力が失われ、ついにはシャッターを切る気力すら失われていく。とにかく、一日最後まで集中力を失わず撮影するには、体力あってこそだと思う。

 自分の足で歩き回らなければ写真は撮れない。撮りたいものは向こうからはやってこない(まれに、やってくる場合もあるにはある)。300ミリの望遠でも、写真として成り立つのは、せいぜい半径50m程度だろう。よほど特殊なレンズを使わない限り、100m先の被写体は捉えられない。10km先の被写体となると、風景は別として、いまのところ撮影できるレンズはない。普通、我々が撮影できる最大半径は、せいぜい20mくらいだ。つまり、こちらから20m以内まで近づかなければ、撮れないということだ。写真とは、そういう宿命にある。

 いい写真を撮れるか撮れないかは、ひとえにどれだけ自分の足で歩いたかによる。かといって、一日10km歩けば、いい写真がたくさん撮れるなどという保証はない。宿から三歩出ただけで、撮れるときもある。そういう幸運を除けば、写真とは徒労の連続だ。とにかく歩き続け、撮り続けるしかない。

 足繁く通っている東ティモールでは、体力を節約するために自転車を買った。赤道南緯10度の東ティモールの太陽は、情けを知らない。何度も通っているうちに、ついに根を上げてしまった。しかし自転車はあまりいい判断ではなかった。撮影のためいちいち自転車をおり、カメラバッグからカメラを取り出し、ようやく撮影・・・と思ったころには誰もいない。走りながら撮るという芸当もできない。やはり、歩くしかないというのが結論だった。

 数日前から、足に重りをつけて走り始めた。