ございません*2 申し訳ない

2016-01-07 | 言葉遣い
 前回 「やりきれない」 と書いた後で、そういえば 「やるせない」 も似た心持ちと考えるうちに、

この二つの言葉が歌詞として登場する 「悲しくてやりきれない」 という曲を思い出しました。

1968年(昭和43)年に、ザ・フォーク・クルセダーズが歌ってヒットした曲ですが、

作曲家の加藤和彦さんが出来立ての曲を持ち込んだ先は、作詞家のサトウハチローさん宅。

あの 「ちいさい秋みつけた」 の歌詞を書いた方です


 それでは、今日は 「申し訳ない」 についてお話しいたしましょう。

こちらも 「やりきれない」 と同様、もともと 「申し訳ない」 でひとつの言葉であり、

「申し訳ない事をいたしました」 「申し訳ない気持ちでいっぱいです」 というように、

「事」 や 「気持ち」 に掛かる形容詞です。

ところが、謝罪の言葉といえば 「申し訳ありません」 「申し訳ございません」 が一般的であり、

ビジネスの場面では誰しも、詫びる側、そして言われる立場になった経験がおありでしょう。


 この言い方が一般的になった理由として、私は二つの事が考えられると思います。

ひとつは、「申し訳」 という名詞がある ため。

「申し訳程度の雨」 「それでは申し訳が立ちません」 のように、後ろに 「ない」 が付かなくても、

「申し訳」 だけで存在できるところが、「やりきれない」 「やるせない」 などと異なります。

そしてもうひとつは、謝罪の場面で使われる言葉である ため。

「ない」 だけを見てみますと、「ありません」 や 「ございません」 に比べて丁寧さに欠け、

謝罪の意を表すのに、「ない」 では相手に対する敬意が感じられないという思いからか、

「ありません」 「ございません」 へと、より丁寧と思われる言い方に変化したのでしょう。


 「申し訳ありません」 や 「申し訳ございません」 がここまで一般的になりますと、

言葉はいきものであり、時代の流れと共に変化しているのだと、つくづく思うしだいです。


 さて、お次の 「ございません」 は、何が登場しますやら?


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