倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

「空き家シンポジウム」開催 ~「今のうち」から 考察を~

2020-02-17 | 日記

2/16 Sun.

 

この日、長野市川中島町公民館において「空き家問題」に関するシンポジウムが開催されました。

 

 

これは、昨今 社会問題化している「空き家問題」の解消をめざし、長野県司法書士会が企画した「川中島地区 空き家対策連続講座」が、国土交通省「空き家対策の担い手強化・連携モデル事業」のモデル事業(地区)に指定されたことを受け、これまで4回に亘り行なってきた「連続講座」の〝集大成〟として行なわれたものです。

 

 

このシンポジウムは、「空き家問題」について、少子高齢化・人口減少社会が伸長する中 いずれ大きな社会問題となることが〝予見〟されながら、現時点では なかなか触れられない問題であることから、この際、皆で〝課題意識〟を共有しながら 早い段階での適切な対応が図られるよう意識喚起を図ってゆくことを目的に開催されたものです。

これまで4回に亘り行なわれた「連続講座」、当初は かかる〝無関心状態〟が響いてか、出席者は非常に少ない状態でありましたが、回を重ねる毎(ごと)に市民関心も高まりを見せ この日のシンポジウムには100名近い方々に足を運んでいただくことができました。

 

シンポジウムは 二部構成で行なわれ、第一部では〝空き家問題解決の第一人者〟である、中川寛子さんによる「空き家問題から考える 未来の地域づくり」との表題による講演が行なわれました。

「空き家」は、放置すれば朽ちるばかりで いずれ〝負の財産〟に陥るばかり ⤵ ですが、もし利活用できれば 家主にとっては家賃収入や売却益などの利益が生まれ、利用者や地域にとっては、新たな住まいや 住民の寄り処として活用できるなどの〝富の財産〟にとって変わる ⤴ ものです。

 

中川さんは 現下の人口減少傾向を踏まえ、今後 空き家が増加することを前提にしながら、それらを如何に利活用すべきかということを 国内の先進事例を引き合いにしつつ、判りやすく解説してくださいました。

 

空き家の利活用は、個人や社会の〝マイナス要因〟を〝プラス要因〟に転換(逆転)する「魅力」に満ちている。古い物件だからといって、むざむざ抱えこむことをせず、積極的に社会活用してゆくことが求められていることを述べておられました。

 

 

 

そもそも 今回の企画は、家屋の「相続問題」に端を発しています。高齢化が進む中で 跡取り世代は上京してそれっきり、もし 今の世帯主が逝去したり施設に入った瞬間に、今までの住居は「空き家化」してしまう。それを未然に防ぐために 予め 行政窓口や司法書士などに相談してもらいたいとの、どちらかといえば〝後ろ向きの課題〟として提起されたところですが、この日の中川さんの講演は、何だか「空き家には〝夢〟がある。」と思わせてくれるような〝前向き話題〟となっており、私自身 目からウロコが取れたような新鮮味のある聴講となりました。

 

 

第二部は パネルディスカッションとして、関係者が登壇したうえで それぞれの立場で「空き家問題」について意見を述べ合いました。

 

私も 主催者に乞われ「住民代表」として座することとなり、中川講師・長野市建設部建築指導課 空き家対策室の小林室長・長野県司法書士会 丸山会長と共に、「空き家」について発言いたしました。

 

川中島地区における「空き家率」は、今のところ 平均以下(2%)に止まっています。では なぜ、国交省は 川中島地区を「空き家対策のモデル地区」に選んだのか。

それは、今後「空き家」の大量発生が懸念される〝空き家予備群エリア〟だからではなかろうかと考えるところです。

川中島地区内には、昭和40年代の高度経済成長期に、複数の振興団地が造成されました。その後、時間は流れ「あれから40年・・・」当時 働き盛り(40代)でおられた入植者の方々は等しく年齢を重ね、その多くの方々が70~80歳代の年齢に至っております。一方、それらの方々の〝跡取り世代〟の多くは 学生時代に上京したまま都会で就職、そちらでマイホームを建てたりマンションを購入し、Uターンの見込みは少ない状況にあり、また、地元に戻った 跡取り世代の方々についても「実家」とは別に家を建てるなどするケースが多く、今を暮らす高齢者の方々は、向こう10年以内に平均年齢を迎える中、自分たちが逝去したり施設に入った瞬間に、それぞれの家は「空き家化」することが予見されるところなのです。

しかしながら、残念ながら かかる「空き家問題」が、それが表面化しないことには 家族間の話し合いの俎上に載ることは非常に少ないのが実際のところです。

自分たちが暮らしている間は、この家は 空き家ではない。だから今のところは(話題にしなくても)大丈夫。これは、災害時に「自分の家だけは(避難しなくても)大丈夫。」との〝正常化バイアス〟に近いものがあるのでは、と。

そんな(相続など)概して面倒になりそうな課題は、とりあえず先送り。難しい話は、自分たちがどうにかなってから 残された者で話し合ってもらえばイイ。

残念ながら、これが地域の現状であることを述懐し、そのうえで 中川先生の提案なども参考にしながら「どうするべきか。」の意見が交わされました。

 

パネラーの発言の中で、長野県司法書士会や、長野市建設部建築指導課 空き家対策室は、他市に秀でた相談体制を備えていることが紹介されました。

 

空き家の所有者の親身になって相談に乗り、その状況に応じて 関係機関を紹介できる「相談システム」があることが紹介され、とにもかくにも「相談してください!」と 声を大にしての呼びかけがされていました。

 

「空き家問題」は、単に人が済まなくなった物件が増えるというだけの単純な問題に止(とど)まらず、地域のコミュニティの存続の問題、また 地域の社会安全の維持の問題、また 地域社会福祉の問題にも関連する「まち全体の将来課題」であることが再認識されました。

 

そのうえで 私たちは、この課題を「個人的な問題=他人事」とせず、地域全体の共通課題と捉え、前段の中川先生の講演にもあったとおり、その利活用も含めて「今のうちに、共に考える」機会とすることが求められていると存じます。

また、空き家の解消のために 例えば上京した若者たちに対し、ただ単に「戻って来い。」とは言えません。そこには就労の場も必要でしょうし、公共交通などの社会インフラも求められるでしょう。

「空き家対策」とは、基本的な社会環境の整備も併せて求められる「総合的な社会問題」とも言えのではないでしょうか。

 

 

今回のシンポジウムを通じて、私自身「空き家問題」を さまざまな視点で考える機会となり、それぞれの立場からなる意見交換を通じて、空き家対策についての認識を新たにさせていただきました。

そのうえで〝空き家予備群〟でもある 川中島地区が、今後 さらなる時間経過の後にも、いたずらに空き家が発生しない地区となれるよう、みなさんと人智を尽くしてゆきたいと 思いをいたしたところです。