倉野立人のブログです。

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市内大手印刷会社の経営危機に思わされる

2023-04-01 | 日記

過日、長野市内の老舗ともいえる印刷会社「蔦友印刷」が、事業を停止し自己破産申請の準備に入ったことが報じられ、驚きと共に この業界の厳しい状況を知らされました。

 

 

 

報道(帝国データバンク等)によると、負債額は約12億4,400万円。

蔦友印刷は明治35年(1902年)創業の老舗。官公庁などから受注を得て 2001年12月期の売上高は約26億1800万円を計上したとのこと。

しかし、昨今の需要減と 同業他社による競合激化等で受注は低迷、21年12月期の売上高は約7億3,700万円まで落ち込み、債務超過に陥ったそうです。

この厳しい状況に際し、経費削減やグループ企業の株式売却などを進めたが 事業継続は難しいと判断されたようです。

 

ご案内のとおり 昨今は社会全体でペーパーレス化が進み「紙」による情報媒体が大きく減する傾向になっています。

また いわゆるSDGs社会の推進に伴い、環境に配慮した社会活動が求められる中 紙による印刷物は減りこそすれ増えることはほぼ考えにくい状況となっており、旧来からの紙の印刷による事業展開では立ちゆかなくなったということなのでありましょうか。

業績が下がれば このような破産の道を選択せざるを得ない…民間の厳しさを実感させられるところです。

 

ところで この状況に鑑み、ブレーンのMくんが やや規模や環境は異なれど、かかる民間事業者に対比される状況を話し、私も同意を感じたところでありました。

 

従前にも触れましたが、長野市内にある知的障がい者施設に 財団などの補助金を得て設置された高性能の印刷機が設置されています。

ところが、せっかくの高性能印刷機でありながら その稼働は「フル(稼働)」とは言えず、限られた受注の中で やはり限られた(印刷)業務を行なっています。

と いうのも、そこにはやむを得ない事情が。

かかる施設は、知的障がい者の就労を支援する施設であることから、例えば その印刷機についても、それを障がい者さん(利用者さん)が使用して一定のスキルを身につけ 将来的には生業(なりわい)として関係する企業などに就労(就職)できるようになることが目的とされているからです。

その前提に立って施設(職員)に求められるのは、利用者さんが就労に向けた訓練となるようジョブを受注し、そのうえで給与(工賃)アップにつながるよう職場環境を整えることに他なりません。

ところが実際には、それに見合った受注・受注に見合った作業・作業に見合った工賃(アップ)につながっていないのです。

しかし そんな状況でも、施設は破産することは無いし 施設の職員は守られているのです。

それは(既にご案内のとおり)マイナス分には公的機関からの補助金が購(あがな)われるからです。

 

障がい者支援事業は、通常の社会経済活動とは異なり いわばハンディを負った方々をケアする種別であることから、一概に同じ土俵に乗せるのはどうかとも思います。

しかし いわば理念の面において考えれば、例えば高額の資金をもって設置した印刷機は あくまで利用者さんのスキルアップのために導入されたハズであることから、設置した以上は 予定年限での減価償却をめざして活用され、施設と利用者さんにとってプラスの資産とならなければなりなせん(この場合の「減価償却」とは、単に経年による償却ではなく、設置の目的(障がい者支援)に見合った形で使い切られたかという意味での現下償却です)

それが かかる見通しも無く〝機械を設置することが目的〟となってしまった場合、機械を置いてから使い方を考えるような「本末転倒」になってしまう。こんなことは許されるべきものではありません。

しかし実際にはどうか。私の知る限り、施設の機械(印刷機)は 設置の目的に叶っているとは言い難いと言わざるを得ません。

それでも、施設運営は大過なく回っている。

 

・・・・・・。

今回の 市内大手印刷会社の自己破産(申請へ)は、民間事業者の悲哀と 補助金で生き残れる施設運営との「違い」のようなものを感じさせられることとなりました。

知的障がい者施設においては、事業の性質上 自己破産のようなことは無いにしても、何というか そのくらいの必死さ・ひたむきさをもって設備の稼働→ひいては利用者さんの就労の充実(工賃アップ)につながる努力を怠りなくすべきでは、と Mくんと一致したところでありました。