内水氾濫
10/23 Wed.
列島に大きな被害を及ぼした台風19号が通過後、22日に 再びまとまった雨が降ったことから、長野市内における千曲川下流域においては、本流(千曲川)に流れ込む「浅川」からの水門(浅川樋門)を閉じ、それによって発生する「内水氾濫」を防ぐために「浅川第2排水機場」を稼働させ、同時に流域住民に再び避難勧告を発令したと報じられました。結果は 大過なく推移したことが併せて報じられ、安堵を共有しました。
しかし、今回の台風災害においては、堤防決壊や越水などの本流がもたらした水害と同時に、この「内水氾濫」が、 いわば〝鬼門〟になっていると実感させられます。
この日、被災地支援のため北部エリアに足を運んだ際 豊野の現地を視認しました。
昨夜 本流(千曲川)の水位上昇に伴い閉じられた「浅川樋門」、二つの弁が設置されています。
これらが閉じられることで 本流(千曲川)への余分な水の流入と 本流からの逆流を防(ふせ)ぎ、より大きな氾濫を抑止することになっています。実際、その(閉門の)おかげで昨夜は大過なきを得ました。
雨も止み 快晴となった翌日、水門から先は 穏やかさを維持していました。
一方の「浅川」この日は本流と同様、穏やかな流れとなっていますが、ひとたび水門が閉じられれば、当然ながら 行き場を失った水は「内水」となり、上流から限りなく流れ来るまま、この樋門付近に溜まることとなります。
そこで機能するのが「排水機(場)」です。
本流の溢水を防ぐため浅川の流れを遮断した後、内水の水位を見ながら、堤防内部に氾濫が起きないように排水機を稼働させ、内水を適度に本流に移してくれるものです。
機場には国交省の作業車(ポンプ車)がありました。排水が間に合わないことを想定し 必要に応じてポンプアップ(排水補助)を行なったものです。
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昨晩については、前述のとおり 一連の流れ(本流増水~樋門閉鎖~内水上昇~排水機稼働~内水被害予防)が機能したところですが、今回の台風19号においては、そのシステムが機能せず(または機能し切れず)、多くの地点で「内水氾濫」が起きてしまう事態になってしまっています。
例えば篠ノ井御弊川。
ここは排水機はありません(それが そもそも問題なのです)が、横田水門を閉じたことで そこに流入する岡田川の水が堆積して逆流、岡田川流域の住宅などに浸水被害を及ぼしてしまいました。
(当時 内水被害を及ぼした岡田川下流部分)
(画像奥(岡田川方向)から浸水)
御弊川のみなさんは、本流(千曲川)から越水が来るかも、と 前(本流方向)を注視し 身構えていたら、あろうことか 後ろ(岡田川)の方が氾濫し、水は〝背中〟から押し寄せてきて浸水被害に遭ってしまったのです。
一方、同じ篠ノ井の小森エリア。
こちらには「小森第一排水機場」があり、今回もフル稼働していました。
しかし、稼働中に 上流から多くの異物(葦/ヨシ)などが吸水口に漂着するなどして吸水がうまくゆかずトラブっているうちに 本流(千曲川)の流量が異常に増えて水位が逆転、やがて この排水機場そのものが浸水してしまい機能不全に陥り、結果、当エリアへの浸水を許すことになってしまったのでした。
松代エリアにおいては、水害の多発箇所である温泉団地が やはり排水機能が追いつかず、やがて排水機事態も不調となって冠水を招くことに。
また、松代西寺尾地区をはじめ 多くの町内の低地では、町内を流れる 本流(千曲川)の枝川である神田川や蛭川の内水氾濫により 多くの家屋などが水に浸かってしまいました。
(画面中央が神田川、右が西寺尾集落)
(普段は穏やかな神田川)
今回の内水氾濫の〝元凶〟は、本流たる千曲川の「異常なほどの水位上昇」に他なりません。
本流の水位が上がるから水門を閉じる。でも 排水機を機能させようとしても、本流の水位が限界以上に上がってしまったので 機械による排水ができない。結果、浸水被害。
松代地区に在住し、気象に詳しい識者は 私に対し「地球規模の気候変動に伴い 台風の進路が、今までは太平洋上に逸(そ)れていたカーブが北寄りになり、つまりは 何回かの台風は列島を縦断するようになる。これまで〝今までに無い〟と言われてきた大きな台風が、毎年に亘って襲来するようになってくるだろう。」と〝予言〟しておられました。
こんな大被害を、たびたび受けるようでは たまったものではありません。
しかしながら、本来 河川から 住民の社会安全を守ってくれるハズの排水機が、その役割を発揮し切れないままに被害を招いてしまったことは大きな問題であり、その設置主体である行政当局においては、よくいう〝想定外〟で済ませてはなりません。
この対策については、抜本的には国レベルで行なうべきものであるところですが、せめて我々とすれば、今回 次々に発生した水害について、時系列に基づき、どのくらいの時間でどの範囲に、どのくらいの規模の被害が及ぼされたかを分析・検証し、そのうえで〝実力〟を発揮し切れなかった排水機の再整備や、水門閉鎖のタイミング、または枝川の容量増加のための浚渫(しゅんせつ/川ざらい)など、今回の災害を轍(てつ)とし「できること」を確実に行なってゆくべきと 思いをいたしたところです。
浅川樋門から目を転じると、久しぶりの青空が広がっています。しかしその下(もと)には、累々と 上流から運ばれた土砂が堆積していました。
変わりゆく気象、その猛威との戦いは「これから」です。