倉野立人のブログです。

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「長野市議会 水道広域化調査研究特別委員会」の行政視察報告

2024-02-10 | 日記

今期 所属する「長野市議会 水道広域化調査研究特別委員会」の行政視察(1/22〜24)に参加しましたので、その概要をご報告いたします。

 

◇君津地域水道事業の統合広域化(かずさ水道広域連合企業団)の取り組み (1/23)

 「かずさ水道広域連合企業団」は、千葉県内を流れる小櫃川(おびつがわ)流域の 木更津市・君津市・富津市(ふっつし)・袖ケ浦市の4市が水道事業・水道用水供給事業を広域化した連合企業団です。

 

 

 

◎当地域における広域化の経過

 平成19年 「君津市地域水道のあり方検討会」による検討

 平成23年 「君津市地域水道統合研究会」による検討

 平成25年 4市の関係者が 君津水道事業統合・広域化に関する「統合協議会」を発足

 平成29年 千葉県が構成員として参画

 平成31年 総務大臣から「かずさ水道広域連合企業団」の設置許可(連合企業長は木更津市長)

 平成31年 4月より事業開始

 

 「かずさ水道広域連合企業団」の所属自治体は、それまでは各地区の水道事業が いわば危機的な状況に陥っており、その点をクローズアップすることで 統合広域化の道筋をつけてゆきました。

・ヒト モノ カネの危機的状況

 各自治体は、下記の具体的課題を抱えていました

 モノ/管(かん)など施設の老朽化が全国ワースト2位→統合広域化で老朽管の解消をめざす

 ヒト/技術職員の高年齢化(平均49才)による技術継承の危機→統合広域化で独自職員を採用

 カネ/4市すべてが赤字経営→統合広域化で費用の抑制と財源の確保を図る

 

 

 

◎「かずさ水道広域連合企業団」における激変緩和措置

・同地域では自治体ごとに料金格差があるため、令和10年までは従来の(市域の)会計を継続

  →セグメント会計

・統合広域化当初は各市からの職員派遣で運営

 

◎「かずさ水道広域連合企業団」における統合広域化の効果

・施設→統合前と比較し、施設更新率1,0%を維持(統合前:0,7%/年)

 

 

 

・施設→統合前各市の整備水準の平準化と経営基盤の強化

   →事業量は増えているが、各市の出資金は減っている(自己費用負担の軽減)

 

 

 

   →施設の統廃合と耐震化の促進・料金の統一

    →水源29箇所・施設9箇所を廃止(効率化)/基幹浄水場・配水場の耐震化

 

 

 

・職員体制→40才以下の派遣職員を対象に身分移行を実施

・ヒト(職 →独自職員の確保:社会人経験枠拡大/採用試験回数増加/採用条件緩和

 

 

 

・職員体制→職員の「縦割り(セグメント会計の弊害)」の打破

・職員体制→独自職員による業務フローの統一化・効率化/工事の効率化

 

 

 

 

「かずさ水道広域連合企業団」においても、複数市(4市)での水道関連事業の統合・広域化は それまでの窮状を打破(改善)するために欠かせない事業でありました。

 ただ、22日に視察した広島と状況が異なっていたのは「かずさ水道広域連合企業団」は在の千葉県の主体的関与は無く(平成29年に構成員として参画)、主体はあくまで関係市が横断的(並行的)に担ってきた点でありました。

 私自身も、もし長野エリアで統合・広域化を進める際には、県はあくまでアドバイザー的な立場に置いたうえで、関係市の横の連携を直接的に深める中で事業を進めるべきと思ったところです。

 ところで、当委員会の視察に先立ち、同企業団のS事務局長から歓迎あいさつを受けましたが、その内容は実に「現場目線・利用者目線」に立ったものであり、この歓迎あいさつの中に「かずさ水道広域連合企業団」の〝価値観〟のようなものを実感させられたところです。

 S事務局長は、水道事業は「単なる効率化推進や経費削減の狭義では事業の意味が無い」旨を強調されました。

・統合には応分の費用がかかることから、統合=経費削減 の目的では事業はうまくゆかない

・統合に欠かせないのはマンパワー(人材)であり、統合=リストラ推進 の目的ではうまくゆかない

・新たなシステムを導入しても、それが(職員等にとって)慣れないものであれば機能しない

・リストラの概念は、管理職を減らしても技術職は維持すべき=現場職員を大切にすべき

・統合広域化においては、特に財政シミレーションは甘く算定しない

・統合しても料金は安くならないことを当初から正直に市民説明すること

等を述べられ、統合広域化が〝単なる夢物語ではない〟こと(現実)を直視し、いわば腹を据えて事業に臨むべきことを強い口調で述べられ、そこに この事業団の取り組み姿勢を感じ取ることとなりました。

 特に、激変緩和措置の中で、職員の体制(意識)までも〝縦割り〟を引きずってきたことによる市民サービスの限界、それを打破(改善)するために独自職員による 自治体の枠を超えた「業務フローの統一化」の取り組み成果に注目させられました。

 水道事業の統合広域化にあたっては、組織やシステムの統一と同時に、職員の意識そのものも統一(意識共有)させることこそが重要と実感させられました。