倉野立人のブログです。

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「ヘーゼルナッツ」の〝多面性〟に期待

2024-02-18 | 日記

地域の基幹産業である「農業」…しかし その現状は、担い手の面や収益の面・さらに苦労の絶えない〝▽K労働〟とも揶揄される状況となっていますが、そんな中 俄(にわ)かに〝救世主〟とも評され期待が寄せられ始めている、農産物というか果樹というか木の実というか いずれにしても当地には見慣れない品種があります。

 

「ヘーゼルナッツ」です。

 

 

 

ヘーゼルナッツは 一見ドングリに似ていますが、(ドングリの)ブナ科ではなく「カバノキ」科の樹だそうです。

今から2000年以上も前に トルコ北部の黒海沿岸で栽培が始まり、古代ギリシャを経てヨーロッパへと広がり 日本には奈良・平安時代に伝来してきたそうです(普及してはいませんが)。

樹はリンゴや桃の木に近いサイズの中低木(広葉樹)で、土壌を選ばず育成するそうです。

 

 

 

ヘーゼルナッツの樹は「雌雄同株」=同じ木に雄花と雌花の両方を生成し、主産地のトルコでは1月頃に開花し その後結実→9月頃に収穫されているとのことです。

種から植えて大体4~5年で実をつけ始め、(種から)約10年後に成熟するそうです。

 

その実は「奥深い香りに包まれながら舌に余韻が残るような旨み」があるとされ、チョコレートやスイーツの隠し味としておおいに活躍しています。

世界ではスイーツや料理に広く食されているため、アーモンドとカシューナッツと並んで「世界三大ナッツ」と呼ばれて重用されているのはご案内のとおりです。

 

 

 

そんな 世界に冠たる「ヘーゼルナッツ」は、世界の生産量の75%をトルコ北部が占めています。

日本の生産量は遠く及ばず、その殆(ほとんど)どを トルコはじめ欧州からの輸入に頼っているのが現状です。

 


 

 

そんな〝知られざる優等果実〟である「ヘーゼルナッツ」が、ここへきてにわかに脚光を浴びることになっています。

欧州で盛んに栽培されるヘーゼルナッツを、ナガノの地でも生産しようじゃないか。

長野市出身のОさんは、長野市に20年ほど前にUターンし(ヘーゼルナッツの)栽培に取り組んでおられるそうです。

食品機械の輸入商社に勤めていたОさんは、世界一おいしいと言われるヘーゼルナッツの産地イタリア・ピエモンテを冬季に訪れた際、雪の中で元気に育つヘーゼルナッツの樹を見て「これなら 気候の似ている長野エリアでも育成できるんじゃないかと閃(ひらめ)き、そして「これが、次世代の長野の新しい農産物になるのではないか」とご自身の中で確信したとのことでした。

その後 Оさんは、一念発起のうえで会社を早期退職し、農業経験が全く無い中で長野市にUターン 直ちにヘーゼルナッツの栽培に乗り出し、試行錯誤の末に 昨年には150本の木から300kgほどの実を収穫することができたそうです。

 

 

 

 

かかる「ヘーゼルナッツ愛=ナガノ愛」の意気に燃えるさんは、ヘーゼルナッツの栽培育成の伝播(でんぱ)を期して、市内(真光寺/しんこうじ)『ヘーゼルナッツ学校』を開校し、広く門戸を開いたうえで 栽培から加工・販売まで学ぶ〝場づくり〟をも手がけられているそうです。

ご自身のノウハウを惜しみなく伝え、信州をヘーゼルナッツの一大産地にするとの夢の実現に向け まさに先駆者として歩んでおられるとのことでありました。

 

これら ご関係者の胎動(たいどう)に呼応するように、長野市においてもヘーゼルナッツの栽培促進に力を入れ始めることになっています。

さきに発表された長野市の新年度予算編成において、荻原市長の掲げる「定着・変革・挑戦」のスローガンの中の〝挑戦〟のジャンルに「ヘーゼルナッツ振興(15,220千円)」が計上され、試験圃場での栽培や苗木の購入を補助することになっています。

 

 

 

ローカル紙においても「ヘーゼルナッツ 産地化めざす」と大きく取り上げるに至っています。

 

 

 

 

 

この「ヘーゼルナッツ振興」について、私の立場でも大いに着目しているのです。

と いうもの、私の住む川中島平(かわなかじまだいら)は 従来より桃やリンゴなどの果樹栽培が盛んな地域なのですが、近年は とりわけ桃の営農について、通年に亘る消毒や育成・収穫の専門性の必要性などの課題に高齢化が拍車をかけ、年を重ね営農不全となった耕作者が廃農するケースが相次いでいるのです。

とりわけ桃については 樹の放置は病害虫の巣となることから、廃農=伐採となり 今や域内のそこここで有休農地化(ほぼ更地化)した(かつての)桃畑が散見される由々しき事態となっているのです。

それら 実質的な有休農地に、もし メンテナンス不要のヘーゼルナッツを植え、桃農業より平易な形で実りを得られるとすれば、有休農地の解消と 新たな農作物の創出との〝一石二鳥効果〟が得られるのではないか。

 

そのうえで 私が「ヘーゼルナッツ振興」に期待するのが〝農福連携〟の伸長です。

農福連携とは、障がい者(知的・精神)の方々の活躍(雇用)の場として農業現場を勧め、片や農業者においては担い手確保につなげようという いわば共存共栄のマッチング事業です。

これまでも、果樹の剪定枝を集めるなどの役務に就いていただくことはありましたが、いかんせん平易な作業に限られるため、桃の摘果や収穫などの技術を要する作業には参入していただけないジレンマがありました。

ところが、この「ヘーゼルナッツ栽培」においては (側聞している範囲ですが)収穫作業は、熟して枝から落ちた実を拾うだけとのこと…これなら障がいを抱えた人でもできる・イヤ もっと言えば、一点集中型の障がい者の人なら 根気よく収穫(実拾い)作業に励み、営農に貢献してくれるほどになってくれるんじゃないでしょうか。

 

これに関し、当地区では更に朗報が。

新年度「地域おこし協力隊」として(結婚を契機に)当地区にUターンし、協力隊員として専ら農業に従事したいとされる人(若年女性)が、それまで都内で養護学校の教員を勤めておられたとのこと。いわば養護教育の元プロが故郷回帰を果たしてくれたことから、かかるビジョンに大いに頼りになる存在になり得るのです。

そして何より、域内には かかる「役務(障がい者就労)」の担い手となる方々が通所される授産施設が複数に亘り設置されていることから、他の地域に比しても農福連携の可能性を有しており、それらの好条件をもって「ヘーゼルナッツ振興」が〝農福連携のコラボレーション〟の具現化に向けた可能性を秘めているとも言えるのです。

 

 

 

で このことを、地域の農業振興の先達であり かかる地域おこし協力隊員の〝育ての親〟でもある、地元のTさんに水を向けると「おおいに結構!」と協力(というより主体となる)意向を示してくださいました。

このことが実現すれば「ヘーゼルナッツ振興」は、一石が三鳥になり さらに販路ができたり地域の菓子店などとのコラボが実現すれば、一石が三鳥にも四鳥にもなることが期待されることになるでしょう。

 

 

これらを踏まえ、私の立場で 取りあえず長野市の農業政策課と連絡を取り「勉強会」を行なうこととします。

そのうえで、当地域における「ヘーゼルナッツ振興」の適応性と可能性を模索し、でき得る範囲で実現性を模索してゆくための仲立ちを担わせていただきたいと考えています。

 

長野市在住(Uターン)のОさんが提唱してくださった「ヘーゼルナッツ振興」

私たちは、その〝多面性〟に大いに期待しながら、イイ意味での試行錯誤を重ねてゆくことになります。