『なぜネットでピアノが売れるのか』 石山雅雄氏著 文芸社
何か仕事の参考にでもならないかなぁと思って軽い気持ちで読み
ました。
売上が好調な理由や方法等いろいろと参考にさせてもらうところが
ありました。
でも、僕にはなかなか出来そうにないなぁ~と思いながら読み進め
ていったのですが、本の後半に書かれた挿話や著者自信の体験話
に思わず目頭が熱くなって涙がこぼれました。
著者自信の体験ではなく引用されていた話のひとつを紹介します。
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ある会社の「入社試験」でのお話しです。
その会社は筆記試験後にある質問をし、変わった課題を与えます。
そこの社長さんは、毎年の入社試験の最後に、学生に次の二つの
質問をします。
まず、学生に向って
「お母さんの肩たたきをしたことがありますか?」
と問うと、ほとんどの学生は「はい!!」と答えるそうです。
次に、
「あなたは、お母さんの足を洗ってあげたことがありますか?」
と問うと、これにはほとんどの学生が「いいえ」と答えるそうです。
「それでは、三日間差し上げますので、その間に、お母さんの足を
洗って報告に来てください。それで入社試験は終わりです」と・・・。
学生達は、そんなことで入社できるのならと会社を後にします。
ところが、母親に言い出すことが、なかなかできないと言います。
ある学生は、二日間、母親の後をついてまわり、母親から「おまえ、
気が狂ったのか?」と聞かれました。
ついに息子は思い切って、「いや、あの~、お母さんの足を洗いた
いんだけど」
それに対し母親は「なんだい?気持ち悪いね~!!」と話します。
こうして、その学生は、ようやく母親を縁側に連れて行き、たらい
に水を汲みお湯をたして準備をしました。
ところが、洗おうと左足を持ち替えた瞬間、あまりにも荒れてひび
割れた母親の足の裏に気づきます。
その学生は心の中で、「うちはお父さんが早いうちに死んでしまって、
お母さんが死に物ぐるいで働いて、自分と兄貴を養ってくれた。
この荒れた足は、自分達のために働き続けてくれた足なんだ!!」
と初めて気づき、こみ上げてきて胸が一杯になりました。
そして、「お母さん、長生きしてくれよな」と、思わず一言小さな声で
言うのが精一杯でした。
それまで、息子の「柄にもない親孝行」をひやかしていた母親は、
心から「ありがとう!!」と言ったまま黙り込んでしまいました。
そして、ポトリ、ポトリと息子の手に母親の涙が落ちてきます。
学生は、母親の顔を見上げることができなくなって、「お母さん、
ありがとう!!」と言って部屋に引きこもりました。
そして翌日、会社に報告に行きました。
「私はこんなに素晴らしい教育を受けたのは初めてです。社長、
本当にありがとうございました」としみじみと話しました。
「君は一人で大人になったんじゃない。
両親をはじめいろいろな人たちに支えられて大人になったんだ。
これからはなあ、自分一人の力だけで一人前になるのではないんだ。
私も、お客様や従業員や、いろいろな人達との出会いの中で、
一人前の社会人にならせていただいたんだよ。」と・・・。
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この本には書かれていませんでしたが、これは実話で、この社長さん
というのは東日本ハウス創業者の中村功氏のようです。
他にも著者自信のお客さんとのふれあいや、ディズニーランドのスタッフ
の心温まるエピソード等を紹介しながら、人間力というものの魅力につい
て語られていました。
ビジネス指南書というよりも、人としての生き方や考え方を学ばせて
もらいました。