二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦[60]C大阪vs京都

2016-09-04 | 蹴球

セレッソ大阪○2(1ex0)1●京都サンガF.C.
            14'山瀬功治
             (↑ダニエルロビーニョ)
25'杉本健勇
 (PK)
107'ソウザ
  (↑山村和也)


[警告・退場]
・C大阪
27'藤本康太(C1反スポーツ的行為)
・京都
17'染谷悠太(C2ラフプレー)
24'吉野恭平(C1反スポーツ的行為)
36'本多勇喜(C2ラフプレー)
54'染谷悠太(C1反スポーツ的行為)→CS(警告2回)
110'エスクデロ競飛王(C2ラフプレー)
120'清水圭介(C3異議)


【全体の印象】
 序盤からイヨンジェの裏への抜け出しでペースを掴んだ京都。スローインの流れからキープした堀米をダニエルロビーニョが追い越してドリブル突破からクロス→走り込んだ山瀬が決めて先制。セレッソは京都のコンパクトでバランスの良い4枚-4枚の守備ブロックを攻めあぐねていたが、堀米のフォアプレスで1枚守備網がズレたところを杉本が衝いてこれを吉野が倒してPK(ファウル地点はエリア外に見えたが)。その後も京都が主導権を握っていたが、ミスを衝く形でセレッソが攻勢を強めはじめ、形勢逆転。後半になると再びイーブンな鍔迫り合いとなったが、ソウザの突破で混乱した一瞬から玉田にスルーパスを通され、染谷が倒して警告2回目で退場。数的不利に陥った京都はパス出し役のソウザ・山村へのプレスを捨てざるを得ず、圧倒的にゲームを支配された。しかしセレッソは意思疎通のミスや枠外シュートも多く、京都は冷静に粘り強く跳ね返した。京都はエスクデロのキープに逆襲の活路を見いだそうとするも、攻撃時に人数が足らず。延長後半、バイタルエリアで受けたソウザが切り返しからシュートを決めて勝ち越し。京都はGK清水を中心に最後まで粘り強く身体を張り続け好機を狙ったが、最後のチャンスはアンドレイがパスを選択して終了。120分の死闘の末、天皇杯敗退となった。


【雑感】
■大坂夏の陣
 大坂夏の陣・天王寺口の戦いは、リザルトだけ見れば数的不利の真田信繁が徳川家康の大軍に敗れ去った戦いである。スタッツを追っても真田の決定機はゼロ。しかし内容的には、真田が2~3000の手勢で1万5千の松平忠直隊を突き破り、家康本陣に迫るも多勢に無勢、勝利を取り逃がした、ということになる。信繁の戦いぶりを伝え聞いた島津忠恒(家久)は「真田日本一の兵(つわもの)」と手紙にしたためたという。勇敢なる敗者が讃えられているのだ。
 このゲームをキンチョウスタジアムの南半分で観戦していた人々も、試合終了後、敗者に賞賛の声援と拍手を送った。数的不利に陥った京都は、とにかく粘り強かった。5-3-1の陣形を布き、1人少ない分はエスクデロを除く8人の運動量と闘志で埋め合わせた。数少ないチャンスは、エスクデロが相手3~4人を引き受けて突破口を開く形。80分以降ははむしろ京都が主導権を握り、エスクデロ+堀米のコンビネーションだけでも攻撃を成立させていた。ただ、次第にエスクデロへ援軍を送る体力的余裕もなくなり、攻撃面は絶望的な状況に。90分、エスクデロがキープし、最後尾から駆け上がってきた菅沼が敵陣深くまで突破してクロスを上げた。その姿に、夏の陣で家康本陣に迫った真田信繁が重なった。

■意思統一
 真田信繁の敵陣突破は、講談などでは猿飛佐助が虚報を流して敵を混乱させ、そこを衝いたという話になる。史実かどうかは疑わしい。最近では真田隊は陣形を乱すことなく槍を揃えて一丸になって正々堂々と突入したという説もあり、「真田丸」でどう描かれるか興味深いところ。石丸監督も、不利な状況を奇策を用いたり破れかぶれの突撃などのギャンブル的な手段は取らず、5-3-1の布陣の「5-3」で守り、「1」が攻撃の糸口を作るという戦術で全員の意識が統一されていた。攻撃時には山瀬がトップに上がり、左の岩沼、右の内田が上がって3-4-2に。82分の山瀬が奪ってエスクデロに通してシュートに至った場面など、数的不利ながらも可能性が見える戦いぶりだったが、残念ながら「体力」という資源が尽きてしまった。
 延長前半、もはやカウンターの余力もなかったが何度かCKは奪えていた。ただし中のターゲットは本多のみ。最後の交代カードにアンドレイを選んだのも、中盤の活動量+セットプレー要員ということは想像に難くない。残念ながら交代するまでにプレーが途切れず、ソウザの得点を許してしまったが、狙いは明確で理にかなっていた。相手が個の力に頼って力押しを繰り返し山のようなチャンスをモノにできなかったという面もあるが、破壊力のある相手に10人でも崩れない組織力は今後の大きな糧となる。一人一人の闘志と戦術理解が噛み合って、また一段階チームが強くなったことを実感できたゲームだった。ノックアウト方式での「苦境」を体験できたことも、いずれ役に立つかもしれない。
 ただ、前半30分ごろまでゲームを掌握していた「11人で、整っていた状況」ももっと長く見てみたかった。エスクデロが不在になることでFWからの追い込みが効き、守備面バランスも、守→攻の切り替えも良い面が多かった。この続きはぜひ来週・松本山雅戦で!