二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2013 J2第25節 北九州vs京都

2013-07-20 | 蹴球

ギラヴァンツ北九州△1-1△京都サンガF.C.
49'森村昂太
             89'山瀬功治


■紫の城
 秀吉しかり、黒田官兵衛しかり、攻城戦を得意とする武将は、基本的に知将である。城攻めは正面から当たっていても土塁や陣地を構えて守る方が圧倒的有利なのだから、馬鹿正直の猪突猛進型ではラチが開かない。まずは敵の手薄な箇所をサーチして、そこを衝いていくのがセオリー。その際、敵の虚を衝いて付け込めばなお良し。もしくは持久戦に持ち込んで相手の士気を落としてしまう手も常套。いずれにしろ、集中して守りにきている相手を崩すのは難しいというお話。
 市政50周年の紫ユニをまとった柱谷ギラヴァンツは、まさに紫の城だった。蟻の一穴の隙もなく、白い大木たけし軍団は城壁に阻まれ、スローダウン。狙ったのは、裏に出して三平和司や駒井善成を走らせる程度。射程圏外から鉄砲を撃ちかけるように可能性が低く、とにかくアイデア不足だった。正面に回れば壁を崩せないのはわかっているので、漫然と回すだけ。遅攻になるので、紫が守るのはたやすかっただろう。籠城する方は、単に守っているだけではいずれ耐えきれなくなる。そこは知将・柱谷幸一、夜討ち朝駆けの奇襲をしかける。北九州は京都の選手がボールに食い付いてくるタイミングを見計らってボールを左右に散らして揺さぶった。先制点もまさにその形。敵を知り、己を知った上で戦略を練った柱谷監督は、少数兵で戦う術を知っている楠木正成型かもしれない。


■ハシラに走らされ消耗
 紫の堅城を崩すために京都は前半からボールをよく動かし、人も前へ横へと動いていた。だがそれも柱谷監督は織り込み済だったはず。動いても走っても有効な崩しにならず、逆に先制点を奪われ、さらに気持ちは焦っていった。落ち着いて狙いを定めればいいものを、簡単なパスミスや誰にも合わないクロスを連発し、相手に拾われて逆襲を浴びるという負のスパイラルに陥る。暑さ、そして思うようにいかない精神的な疲労。後半、大木の兵たちは明らかに消耗した。横谷繁は中盤中央でよく相手を御し、ボールを前に運ぶ役目を果たしたがその先で精度を欠く場面も目立ち、最後は膝に手を突っ立てて困憊した。駒井も敵陣を突破にかかるところまでは行けるものの、トラップやラストパス、シュート精度、あと一歩が足りなかった。
 消耗が激しいからこそ、新規兵を投入すれば局面を変えることも可能だったはず。ところが大木総大将、原一樹と中村祐哉を投入したものの、結局交代のカードは1枚残したまま。引いてくる相手に対し、原めがけて横谷のロングフィードから1点を奪えたことはいいのだが、それが「限界の1点」だという現実を見せつけられた気がした。消耗激しい選手がいても交代できないほどベンチに座る選手は使えないのか。それとも先制して守りきることだけ考えてエントリーしたのか。この日の大木采配の冴えのなさは、敵将・柱谷兄の采配が水際立っていたから、という話だけでは収まりそうにもない。


〈京右衛門的採点〉
 オ 5.5 …安定したセーブが多かったが、失点シーンはやや連携不足気味。
安藤 5.5 …クロス精度が悪くほとんどチャンスメイクできず。守備面では踏ん張った。
染谷 5.5 …良くも悪くも安全運転。動きが少なくややアグレッシブさに欠けた印象。
酒井 5.5 …右に左に走り回ったが、裏抜けの相手に対しての不安定さを露呈。
福村 5.5 …守備に追われる時間多く左の攻撃力を落とす。守備では競り合いの強さも。
 姜 5.0 …相手を止める所では目立つも、寄せは甘い。攻撃につながるパス激少。
工藤 5.0 …全般的には運動量が少なく、敵の虚を衝くフリーランも見せられず。
横谷 5.5 …ボールを中盤でよく収め、攻撃の基点として活躍。一方でミスも疲労も目立つ。
駒井 5.5 …唯一突破で相手を崩す動きはできていたが、仕上げのところであと一歩。
山瀬 5.5 …敵ブロックの打開を狙うが自由にさせてもらえず。同点弾への詰め方はさすが。
三平 4.5 …敵陣に孤立し、収まらず、ボールも引き出せず。敵を欺くような動きも欲しい。
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 原 5.5 …裏狙いの的として噛み合わなかったが、最後に裏で受けて見事なアシスト。
中村 5.5 …トップ下で何度かボールを受けるも、持ち味の斬り込みはかけられず。
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大木監督 4.0 …引いた相手と対峙するプランがよく見えず。有効な手を打てない采配も疑問。