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イタリアからの手紙   塩野七生

2008年12月13日 18時13分27秒 | Books

 再び塩野さんのイタリアシリーズです。イタリアからの手紙。これは彼女の30ちょい過ぎぐらいのエッセイ集です。 いわば 彼女の遊学時代のエピソード集というのか。 あまり理屈っぽくなく、説教臭くなく、へぇ~といった珍しい話が載っています。感覚としてはまだまだ若い塩野さんの青春時代のエッセイといった感じが得られます。

 地中海

ある年の夏、ギリシアの島めぐりを終えた私たちのヨットは、ナポリの港へ、夕日を背にしつつ帰ってきた。カプリ島を回った時は、太陽はまだ、大きな燃える球となって水平線上に輝いていたのだが、ナポリ湾に入る頃には、それが水平線にふれた時だった。水に触れたとたんに、落日は、金色の光をあたり一面に投げ散らす。おだやかな海が、一瞬、金色の延べ板に変わるのはその時だ。速力を増した私たちの船は、その金色の延べ板の真ん中を突き進んだ。割って、それを左右に切るようにしながら。  さわやかな風が、あらいセーターを着ている私の首もとを吹きすぎる。髪の毛が、長くうしろにひるがえっては、頬を打つ。  進むにしたがって、ナポリ湾は、広く両手を広げるように大きくなった。    ・ ・ ・  同じ船の友人たちは、皆無言だった。  ・ ・ ・  静かに眺めて楽しむのではない。全身でそれにひたって、それにすべてを投げ込んではじめて得られる、恍惚の境地とでもいおうか。それは、絵画の持つ美しさではなかった。肉体のすみずみにふれ、それを愛撫し、やがて通り過ぎてゆく、交響詩のようなうつくしさだった。

  この情景を想像すると、いてもたっても自分もその中に置きたくなってしまう。 塩野さんの表現力も素晴らしいと思う。

 もう一節 同じ地中海から  『ヴェネツィアに死す』の中で、トーマス・マンは、ヴェネツィアへは、海から訪れるべきだと ・ ・・ そうモネのあの素晴らしいベネツィアの絵画も 海から見た絵でしたね。あの様々な光が瞬き交差する印象派の。

 その他 シチリア、マフィア、マカロニ、など面白いテーマで書かれてました。

  人間は、金を貯える時よりも、金を使う時の方がより人間的になる。     なんて面白い考察ですね。