ある土木技術者の講演を聞きました。
日本列島は南北に弧状に伸びています。
この形のおかげで気候や植生は変化にとみ、
モンスーンと海流が豊かな水と食料をもたらしました。
しかし、一方で日本列島は、
太平洋プレートとフィリピン海プレート、
ユーラシアプレート、北米プレートがぶつかり合う、
とても不安定な場所に位置しています。
豊かで美しいけれども、
地震、噴火、津波、台風といった災害の危険に常にさらされている国、
それが日本です。
こんな国は、世界中どこをさがしてもありません。
そんな国土に住む日本人は、昔から災害にみまわれては克服し、
やがて、災害に備える智恵を身につけ、技術を発展させてきました。
日本の土木・建築技術が世界最高水準になったのは、
長きにわたる自民党の公共事業政策が理由ではないのです。
災害に対する考え方はさまざまです。
被害を最小限にするため。人間の智恵と技術で国土に手を加える。
あるいは、どうせ避けられない災害ならば、いっそ悪あがきをやめて自然にまかせ、
壊れたらそのたびに造りなおす。
防災工事にはお金もかかるし、
災害がなければムダ遣いだとして批難もあびます。
しかし、悪あがきをやめれば、
時として自然は、多くの人の命と財産を容赦なく奪っていきます。
何が正しいかなんて、誰にもわかりません。
ただ、災害が起きたとき、失われた人の命と財産は報道で伝えられるけれども、
「砂防ダムがあって救われた」「堤防によって助かった」といった、
起きなかった被害は報道されないということを認識しておかねばなりません。
そして、どのような道を選ぶにしろ、決して忘れてはならない現実。
それは、この世界に類を見ない不安定な場所に日本があり、
その国土の上に私たちが住み、数多くの原発があるということです。
この半年あまりの間に、
私たちはそのことを嫌というほど思い知らされたはずなのですから。