くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

どこから密接交際者?~暴排条例(4)

2011-10-25 23:02:00 | 総務のお仕事(反社対応)
暴力団員になってしまった同級生と酒を飲んだら、
暴力団との密接交際者とみなされて警察にマークされる。
ピザ1枚でも暴力団事務所に配達したら、
暴力団関係企業とみなされて社名を公表される。

暴排条例が施行される前、一部でこのようなことがまことしやかに言われました。
だから、暴排条例は人権無視のとんでもない法律だと。

しかし、これまで書いてきたことからもわかるように、
暴排条例は、そのような法律ではありません。

あくまでも、暴力団の活動促進となるような利益供与をしたり、
逆に暴力団の威力を借りてトラブルを解決するなどの利益を得たりしなければ、
ただちに暴力団との密接交際者とされることはないのです。

これが、私たち一般人における暴排条例です。

しかし、芸能人の場合は少々異なります。

松山千春は会津小鉄会などの暴力団の会合に出席したことについて、
「個人的な参加で、報酬は一切もらっていない」と胸を張り、
島田紳助は引退の記者会見で、
「たったこれだけで引退しなければならないんです」と理不尽そうに言いました。

無名の一般人であれば、その言いわけも通用しますが、
その存在自体に価値のある芸能人は、そういうわけにはいきません。

暴力団に限らず、我々一般人でさえも、
有名タレントや著名人などと付き合いがあることは、一種のステータスになります。

暴力団にとっては、組織幹部の慶弔や会合に大物タレントが来たり、
有名芸能人の〇〇と付き合いがある、というだけでひとつのハクになります。
つまり、お金だけが暴力団の活動促進を助長するわけではないということです。

ただ摘発されたり、氏名が公表されないのは、
そういった無形の利益供与だけでは、立証が困難であるからに過ぎません。

「自分は、一般人とは違う」ということを自覚し、脇を締め直さない芸能人は、
これからの芸能界で生きていくことは、不可能なのではないでしょうか。

松山千春のように暴排条例の施行に反対を唱える者を見聞きすると、
「こういう人は、反社会的勢力に悩まされたことがないんだろうな」
「どれほど多くの人が、反社対応に苦労しているのか知らないんだろうな」
と腹立たしくなります。



どこから密接交際者?~暴排条例(3)

2011-10-24 22:31:26 | 総務のお仕事(反社対応)
経営者の肉親に暴力団員がいるとわかっている場合、
その相手(会社)と取り引きすることは、暴力団排除条例に抵触するのでしょうか。
つまり、その相手の会社は、暴力団関係企業とみなされるのでしょうか。

結論から言うと、経営者の親兄弟などが暴力団関係者であっても、
その会社の経営や事業などに暴力団関係者である肉親が介入していなければ、
その会社が当局から暴力団関係企業と指定されることはありません。

したがって、この会社と取り引きすることは、ひとまず「セーフ」であるというのが、
研修で講師を担当した弁護士の説明でした。

しかし、外部からの反社会的勢力の遮断には徹底していても、
身内が暴力団関係者であれば、脇が甘くなるのも容易に考えられます。
まして、同居や同じ地域に居住していればなおさらです。

そこで、こういった会社と取り引きする場合は、
少なくとも、その会社と経営者の素性を調査し、
反社会的勢力とは無関係であることを確認することが必要です。
もちろん、契約書には、「暴排条項」を入れることも不可欠です。

暴力団排除条例には、事業者の契約時における措置(第18条)として、
「暴力団関係者でないことの確認」と「暴力団排除条項規定」が義務付けられています。
罰則はによる不利益処分はないものの、あくまでも「自助」が基本だそうです。

また、弁護士によれば、
ここまでしておけば、万一、あとで暴力団関係企業と判明した場合でも、
「実は知っていたんじゃないのか?」というような疑いは晴れるのではないか、
ということでした。

なお、具体的な確認方法としては、
①自社の反社データとの照合や調査会社への依頼(自助)
②業界団体からの反社情報の提供(共助)
③暴追センターなどへの照会(公助) などがあります。

ただ、このような方法があるとしても、
私たち素人には、相手が暴力団関係企業か否かはわかりにくいものです。
そこで、東京都の暴排条例では、適用除外(第28条)の条項を設け、
取り引き後に判明した場合の自主的な関係遮断を促しているのだそうです。

また、保護措置(第14条)では、
このような暴力団との関係を遮断しようとする者が、
暴力団や暴力団員から危害を受ける恐れがあるときは、
警察官による保護措置を講ずることになっています。

実際に警視庁では、
10月以降、保護担当警察官の増員をしているとのことでした。


どこから密接交際者?~暴排条例(2)

2011-10-21 23:22:11 | 総務のお仕事(反社対応)
これまでの「暴力団追放三ない運動」の理念は、
「①暴力団を恐れない」「②暴力団に金を出さない」「③暴力団を利用しない」でした。

東京都の暴力団排除条例では、
これに「④暴力団と交際しない」を加えた、四つを基本理念としているのが特徴です。

この、「交際しない」が、「同級生が暴力団員だったら・・・」、
「親戚に暴力団員がいたら・・・」という疑問を生じさせ、
施行反対派に「人権侵害だ」と主張する口実を与えているようです。

もちろん、暴排条例をきちんと読めばわかることですが、条例には、
「暴力団員とは、たとえ同級生や親戚であっても付き合ってはならない」
などとは書かれていませんし、そのようなことを禁じてもいません。

それではどのような交際が禁じられているのでしょうか。
東京都の暴排条例を例にとって見てみます。

暴排条例の「禁止措置」に関する条文は、第21条~第25条です。
そのうち、私たち一般人にもっとも関係があるのは、
第24条の「利益供与の禁止」と第25条の「他人の名義利用の禁止」です。

第24条では、事業者が、「暴力団の活動を助長し、
又は暴力団の運営に資することとなる」ことを知りながら、
規制対象者(暴力団関係者)に対して利益を供与することを禁じています。
また、逆に規制対象者から利益を受けることも禁じています。

つまり禁じているのは、
あくまでも暴力団の「活動助長」や「運営推進」につながる利益供与だということです。
言い換えれば、暴力団員個人の利益になるだけでは、これに該当しません。

具体的には、
暴力団の襲名披露や事始式などで配られる弁当の販売は、
「活動助長」につながる利益供与行為となりますが、
コンビニが、来店した暴力団員に昼食用の弁当を売っても、これには当たりません。

また、暴力団関係者の葬式や結婚式を請負う場合でも、
組織名を出して威力を示すような式を請負うことは条例に抵触しますが、
家族葬のような個人的なものであれば、該当しないと考えられます。

さらに、例え暴力団の活動を助長する可能性があったとしても、
医療関係者による医療行為は適用除外されると考えられます。

これが第24条に対する弁護士の見解でした。

したがって、暴力団員になった同級生と同窓会で一緒に酒を飲んだり、
親戚に暴力団員がいるからといって、真面目に生活している人までが
直ちに暴力団との密接交際者とみなされ、罰せられることなどありません。

問題となるのは、
あくまでも暴力団の活動助長につながると知りながら、
暴力団に対して利益を供与し、
または暴力団から利益を受けている場合に限られるのです。

暴排条例はたとえ相手が暴力団員だと言えども、
「人権侵害」と言われるような、「個人」を「村八分」にするための法律ではないのです。

ただ、最後に「暴力団員を個人的に利するだけでは該当しない」 と言っても、
「代金を受け取らない」とか「無償で提供する」といった、一般の客とは違った対応は、
暴力団の活動助長につながる行為とされる可能性が高いので注意してください。
ということでした。



どこから密接交際者?~暴排条例(1)

2011-10-18 23:15:41 | 総務のお仕事(反社対応)
10月1日から東京都と沖縄県で暴力団排除条例が施行されました。
これで日本全国、すべての都道府県で同条例が施行されたことになります。

法律(国会で制定)ではなく、条例(自治体で制定)とされたのは、
暴力団の状勢が地域によって異なっていることに対応するためで、
条例だからといって法的な縛りがユルイというわけではありません。

たとえば多くの自治体の暴排条例では、
暴力団への利益供与者(条例違反者)は再発防止の「勧告」を受け、
一定期間内に改善されない場合に「公表」されることになりますが、
岡山県の条例では、「勧告」と「公表」は同時にできるそうです。

また、東京都の暴排条例では、
同条例に違反した者が公安委員会に自主申告し、
再び違反行為をしないという誓約書を提出することによって、
勧告の適用除外になる条項が特徴となっています。

これは、できるだけ適用除外を受けやすくして、
自主的な暴力団との関係遮断を促すことを目的としているためだそうです。

そこで一番気になるのは、
「どんなことをしたら暴力団への利益供与者(条例違反者)となるのか」
ではないでしょうか。

今月初め、東京都の暴排条例が施行されるにあたって、
暴力団と交際のある松山千春が、コンサートツアーで暴排条例を過激に批判しました。

また、山口組組長が産経新聞の取材に応じ、
暴排条例を「異様な時代が来た」と批判しています。

批判の言い分は、概ねこうです。

「暴力団も同じ日本国民である。
 それを国家権力で一部の国民とは付き合うなというのはおかしい。
 何でもかんでも、腐ったものは排除しろでは問題は解決しない」
 
「暴力団にも親がいれば妻や子ども、親戚や幼なじみもいる。
 こうした人たちとお茶を飲んだり歓談したりするだけで、
 暴力団の周辺者とみなされ、暴力団と同じ枠組みで処罰されるのは異常である」

本当に暴排条例では、親族に暴力団がいたら、
親戚一同みな暴力団との密接交際者とみなされてしまうのでしょうか。
同級生が暴力団員になったら、同窓会で一緒に酒を飲むことも違反となるのでしょうか。

東京都暴力団排除条例の施行から半月たって、
ようやく弁護士による詳細な研修を受けてきました。

結論から言えば、暴力団排除条例は、
松山千春や山口組組長が言うような、お粗末な条例ではありませんでした。
彼らの批判は、明らかに条文を一度も読んでいないことがわかります。

どんな行為が「暴力団との密接交際者」となり、「条例違反者」となるのか。

次回、紹介します。


反社と共通していた芸風

2011-09-30 23:59:59 | 総務のお仕事(反社対応)
人は初対面がマイナスの印象から入ると、
ちょっとしたことで、コロッとだまされてしまいます。

相手を徹底的に「こき下ろし」ながら、
ふと「やさしい」言葉をかけて、「ほろり」とさせる。
悪態をついて「ワル」を演じながら、
ときに「優等生的な」発言で周囲を感心させる。

すると人は、「この人って意外といい人、優しい人」の好印象を持ちます。

思い返せば、一ヶ月前に芸能界を引退した島田紳助の芸風は、
暴力団が一般市民や家出少女、ツッパリ少年を陥れる手口と似ていました。

暴力団は、最初から脅したり凄んだりするわけではありません。
もともと見た目や立ち振る舞いが「怖い」という印象を与えていますから、
「義理や人情に厚い親切な人」という仮面をかぶって近づいてきます。

普通の人々にとっては、もともと「暴力団は怖い」という印象がありますから、
そうされると、「怖い人ばかりじゃなんだ」と、コロッと騙されてしまいます。
そしてどんどん深みにはまり、あるとき突然豹変し・・・というのが典型的なパターンです。

彼らは心理的な騙しのプロでもあります。

島田紳助が芸能界引退の記者会見をした翌日、
所属事務所には、多くの「擁護」のメールや電話が寄せられたと聞きます。
いかに、心理的な騙しのテクニックに陥れられている視聴者が多いかを表しています。

彼の芸風が好きだった人は、反社の餌食にならないよう要注意です。