くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

暴排条例を食い物にする人々

2012-02-04 09:04:23 | 総務のお仕事(反社対応)
ある公的機関から、注意喚起の通知がきました。
すでに新聞などでも報道され、ネットでも検索すると出てきますが、
おもに以下のような内容でした。

1.事案概要 暴力団と無関係な企業として認定することを主たる業務とする団体の
         設立に伴う役員就任等の勧誘行為

2.発生年月 平成23年10月

3.発生場所 三重県
 
4.相手方   財団法人 全国暴力団関係評価認証機構(自称の団体名)

5.事案内容 (1)三重県在住の男性(建設業)が、上記相手方を名乗る者から、
           県内に設立する支部代表への就任をもちかけられ、就任に係る
           必要経緯として1,000万円の支払いを求められた。

         (2)上記相手方は同団体について
           ①暴力団と無関係であると認定することを業務とする。
           ②警察庁のデータベースにアクセスし、犯歴情報の確認ができる。
           ③暴排条例の制定によって今後ニーズが高まり、儲かる。 

6.対応等  上記の情報だけでは、直ちに違法であるとは言えないが、
         警察庁のデータベースに外部からアクセスできることはありえず、
                   また、金銭を要求していることから、詐欺の可能性が高い。

                   都内でも同様の事案が発生しており、
         今後も同種・類似の行為が行われる可能性があることから、
         勧誘等があった場合は、警察に連絡・相談すること。

この団体のパンフレットによると、
顧客や取引先の人間が暴力団関係者であるか否かを1人につき1,000円で調査し、
また、希望する企業や法人には、暴力団とは無関係であることを認証し、
それを証明するマークを有償で付与するとあります。

そもそも非営利目的でなければならない「財団法人」を名乗りながら、
「これから儲かる」と勧誘しているあたりが、すでに自分で墓穴を掘っているのですが、
この通知を読んで、「いろいろな商売を思いつくものだなあ」と感心してしまいました。

これだけブームのように「暴排条例」が取りざたされると、
「暴力団無関係企業の認証」や「調査機関」があると便利だと考える会社も多いでしょう。

もしかしたら、代表就任の勧誘ではなく、
団体への会員の加入勧誘であれば、引っかかった会社はあったかもしれません。
そんなことを思わせる事案だけに、今後も同様の事案は発生すると思います。

この手の詐欺は、「振り込め詐欺」のように、
理屈の破綻を修復しつつ、よりもっともらしい話しに進化しながら
繰り返して発生、広がってくものです。
ご注意ください。

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上記団体の関係者三名は、平成24年5月22日、詐欺容疑で逮捕されました。
本当にだまされる人がいるんですねえ。(H24/5/27追記)

以下、新聞記事の引用

詐欺:暴力団排除団体装い、100万円詐取 容疑の3人再逮捕 /大阪

毎日新聞 2012年05月23日 地方版

 暴力団排除を推進する架空の団体を装い、権利金名目で金をだまし取ったとして、大阪府警捜査4課は22日、自称会社役員、田中晃(57)=大阪市城東区=と自称音楽クリエイター、川瀬明宏(49)=兵庫県宝塚市=の両容疑者ら男3人を詐欺容疑で再逮捕した。逮捕容疑は昨年10月、「全国暴力団関係評価認証機構」のメンバーを名乗り、大阪市の無職男性(33)に「100万円を払えば、暴力団情報をチケット制で(企業などに)提供する仕事ができる」などと持ちかけ、同11月、現金100万円を支払わせたとしている。同課によると、男性は川瀬容疑者の知人で両容疑者は「警察庁に親戚がいて暴力団関係者の名簿をもらった」などとうそを言って信用させていたという。




    

反社とのしがらみを断つ(2)

2011-12-11 22:17:00 | 総務のお仕事(反社対応)
「月夜の道ばかりじゃねぇぞ」 とはドラマなどでもおなじみのセリフです。
しかし、不当要求を繰り返す反社会的組織は、そんなわかりやすい脅し方はしません。
ましてや 「殺すぞ、テメェ」なんて下品なセリフを吐くのはドシロウトもいいところです。

彼らは、不当要求のプロです。
したがって、逮捕されるリスクと得られる利益を常に計算しています。
そして目的と釣りあわないようなリスクを冒したり、時間を費やしたりはしません。
つまり、不当要求で得ようとしているのが5万円なら5万円に見合うやり方を、
1000万円なら、それに見合うやり方をするわけです。

「昔からのしがらみ」や「好ましくないおつき合い」を断とうと会社で決め、
新しい担当者が対応にあたったときには、こんなことを言われた若い社員がいました。

「にぃさんは、結婚してるんだろ」 
男は社員の左薬指にはめた指輪を見て言ったそうです。
「もう、子どもはいるの? いくつ? かわいいんだろうねぇ」

これだけを読むと、なんでもない雑談に思えますが、
不当要求の強要を必死で断っている合い間に言われたとなるとどうでしょう。
意味は、まったく違ったものになってきます。
少なくともその社員はそう感じ、言い知れぬ恐怖をおぼえたといいます。

「そんなことは、いま関係ないじゃないですか」

彼はそう応えたそうです。
「脅迫するんですか!」とは、怖くて言えなかったそうです。

すると相手の男は薄笑いを浮かべながら、
「世間話だよ。寒くなってきたからねぇ。風邪ひかせないように気をつけな」
と言ったそうです。

確かに「ブッ殺す」とも「危害を加える」とも言っていません。
だから、これは脅迫にはならない、ただの世間話なのでしょうか。

弁護士のアドバイスは以下のとおりでした。

1.相手が「何を言ったか」ではなく、言われた本人が「どう感じたか」が重要。
2.「折衝の本題とはまったく関係のないことを言われた」、
  そして「それに恐怖を感じた」という事実は重要であり、証拠を残すこと。

具体的には、「その会話が普通の世間話しから出たものではない」
ということがわかるように記録を議事録や録音で残し、
さらに、言われた自分がどう感じたかを議事録に書き加えたり、
手帳などに、日付とともにメモ(記録)しておくということです。

先の会話だけで、ただちに逮捕とはならないでしょうが、
万一、脅しや嫌がらせがエスカレートするようなら、
充分に証拠として通用するとのことでした。





反社とのしがらみを断つ(1)

2011-12-10 09:38:50 | 総務のお仕事(反社対応)
わが社の片隅にある小さな倉庫の奥には、
立派な装丁の文献集だの日本史といった類の本が眠っています。
奥付を見ると、今から20年近く前のもので、数万円するものばかりです。
いわゆる「書籍購入の強要」で「買わされた」ものです。

かつては、わが社でも断りきれずに「購入」していた歴史があったのです。

そんな歴史に終止符を打つべく、10年ほど前に総務が中心となって、
そういった「悪いしがらみ」「好ましくないおつき合い」を断ち切ることになりました。

そのために行なった方法は、次のふたつだけでした。

1.新しい対応者を決め、それまで対応していた担当者は絶対に相手と接触させない。
2.物品の購入や取り引きの依頼など、相手の要求はただひたすら断る。

たったこれだけですが、もちろん「言うは易し、行なうは難し」です。

相手は不当要求のプロ。
「屁理屈」や「恫喝」など、軟硬織り交ぜた攻撃を繰り出してきます。
矢面に立たされた社員は、かなり苦労しました。

しかし、対応を繰り返していると、
相手の言うことには一定のパターンがあることがわかってきました。
そうすると、こちらの返答もパターン化して社員どうしで共有できるようになり、
しどろもどろにならないぶん、相手との接触時間も短くできるようになりました。

「おまえじゃ話にならん。前の担当者か上司を出せ」
  →「私が担当になりましたので、私がお話をお聞きします」

「これまでの事情をオマエは知っているのか」
「これまでのつき合ってきた経緯は、〇〇(前の担当者や上司)に聞け」
  →「事情は知りませんが、事情を聞いても結論に変わりはありません」

「理由を言え」
  →「会社の決定です」

「誰が決めた。決めた奴を連れてこい」
  →「会社ですから合議です。特定の人間が決めるわけではありません」

決着がつかない場合は、弁護士に代理人となってもらい、
「その後の対応窓口を弁護士にして、会社への接触は一切拒絶する」
という方法になりますが、そこまで至ったケースはありませんでした。

ただ、相手は暴力団の構成員ではないものの、反社会的組織の一員です。
対応した社員の中には、恫喝されなくても「怖い思い」をした者もいました。

それはまた、次回に。

ちなみに、最初から弁護士を出さなかったのは、
「カードは小出しにしたほうが良い」という、弁護士のアドバイスによるものです。
(本当にそうなのか、弁護士のやる気の問題なのか、個人的にはちょっと疑問ですが)



いまならアウト!

2011-11-18 23:02:45 | 総務のお仕事(反社対応)
昔は年末が近づくと、会社の出先の事務所へ
コワモテの人が正月飾りを押し売りにきたものでした。

私が初めて遭遇したのは新入社員の冬、
年の瀬もおしせまって事務所が長期休暇に入り、
たまたま電話番をしていたときでした。

テキ屋系の反社団体を名乗ったその男は、
私が、事務所の責任者がすでに休暇に入っていることを告げると、
「にいちゃんの小遣いで買えるような値段じゃねぇからいいよ」
と言って残念そうに引き揚げていきました。

しかし、一方で別の事務所では、
やはり若い社員が別の団体に押し売られていました。
彼は値段を聞かされて、「そんなお金、持っていません」と断ったら、
「本当かどうか見せろ」と言われ、財布を見せてしまいました。
そして、その中に7千円が入っているのを確認され、
「しょうがねぇな、大負けに負けてやるよ」と言われて、7千円で買わされたそうです。

その男は、普通の会社名が書かれた領収書と、
それは立派な正月飾りを置いていったそうです。
(言い値は1万7千円。モノはかなり立派なものだったそうです)

後日、経理からは「カツアゲに遭った中学生か、オマエは!」とさんざん説教され、
事務所では、事情を知らないお客さんたちから「立派なお飾りですねぇ」と感心され、
苦笑いするしかなかったそうです。

いまなら反社会的団体や悪質商法などについて、
正しい対応の仕方や断り方を研修や講習会で教えてくれますが、
当時は暴対法も、暴排条例もない時代でした。

法律を知ることは、私たち一般人が、
理不尽な暴力に対抗する武器を身につけることでもあります。



書籍「日本一のクレーマー地帯で~」から

2011-10-27 23:08:43 | 総務のお仕事(反社対応)
昨日に引き続き、
「日本一のクレーマー地帯で働く日本一の支配人」(三輪康子・著/ダイヤモンド社)から。

「おもてなしとは、命を張ること」 と著者は言います。
命をかけてまでも人を信じて対応することから発しているそうです。

著者が身の危険も顧みず、なぜ従業員やお客様のためにそこまでできるのか?
それは、地域医療に生涯をささげ、亡くなってもなお地域の人々から愛された、

開業医の父親の生き方と教育の影響だと著者は記しています。

「怒りをぶつけられたら、やさしさで返す」
「真心があったら、必ず通じる。そういう信念があれば、人は必ずわかりあえる」

さすがに凡人には、この支配人と同じ心境で反社対応はできませんが、
本書からは不当要求に対抗するうえで、大切な法則を見出すことができます。

それは、「対応に決して例外を作らない、認めない」 ということです。

不当要求への対応が長引いたり、怖い思いをしたりすると、
つい「このくらいなら」「今回だけは特別に」といった妥協をしたくなります。
しかし、それこそが相手の思うつぼ。
反社会的勢力や悪質クレーマーにつけ入られる大きな要因のひとつとなります。

「ヤクザは泊めない」「クレーマーにはお金を渡さない」
どのような場面にあっても、このルールだけは決して曲げず、
一歩も引いていないことがわかります。

ブレることのない、毅然とした対応をしつつ、
怒鳴られても、やさしさを一つでも多く返す・・・

やはり凡人には無理です!