大黒さんの金魚鉢

黒金町の住人の独り言は“One”

One voice , one mission , one family

ケインズ伝(3)

2014年12月03日 | 労働者福祉
12月14日の投票日に向かって候補者たちが師走の街を駆け巡っています。
「大義なき解散」に有権者は白け気味ですが、日本の進路を決定する大事な選挙です。
絶対に棄権すること無き様、そしてあなた自身の意思で日本の進路を見極めてください。
判断材料のひとつにと、本日の中日新聞からデータを拝借いたしました。


さて「ケインズ伝」の続きです。

19世紀から20世紀への転換期、英国は世界の金融センターの役割を果たしていました。
金融センターの役割を担うには、利子率を高く設定して世界中から資金を集める必要があります。
しかし、高いハードルレートは国内の総資本形成を停滞させ、失業問題を慢性化させます。
これを目のあたりにしたケインズは「おかしい」と感じ、国に繁栄をもたらす経済理論を模索したのです。
彼が得た結論は、国の繁栄はハードルレートを高く設定して国際金融センターの役割を担うことによってもたらされるのではなく、ハードルレートを低く設定して国内の失業を減らすことによってもたらされるということでした。

ケインズは、2030年を展望した論文の中で、理想の社会を思い描いています。
『完全雇用が継続的に達成されている理想の社会では「人類はまともな問題、永遠の問題に直面することになる。
切迫した経済的な必要から自由になった状態をいかに使い、科学と複利の力で今後に獲得できるはずの余暇をいかに使って、賢明に、快適に、裕福に暮らしていくべきなのかという問題である。
金儲けを目的として必死に働く人たちのお陰で、わたしたちはみな経済的に裕福になるかもしれない。
だが、経済的な必要から自由になったとき、豊かさを楽しむことができるのは、生活を楽しむ術を維持し洗練させて、完璧に近づけていく人、そして、生活の手段にすぎないものに自分を売り渡さない人だろう」。
そのような人たちは、「貪欲は悪徳だという原則、高利は悪だという原則、金銭愛は憎むべきものだという原則」にしたがい、「効用より善を選ぶ」。
「経済的な問題の解決に必要だとされる点のために、もっと重要でもっと恒久的な事項を犠牲にしないようにしようではないか』

ケインズの思考が持つ哲学的な側面は、経済学にかぎられたものではありませんでした。
その思考は、「倫理」や「道徳」にとってもきわめて重要です。
彼は人道主義的な改革者であり、国内・国際双方において世界をより善い場所にすることに関心を持っていました。
その点では、彼はムーアの倫理哲学の追従者です。
ムーアの倫理哲学によれば、世界における善の量を増加させることこそが「人間の活動の合理的で究極の目的であり、社会進歩の唯一の基準である」としています。
ケインズの目的は、資本主義社会を、もっと倫理に基づき、善を増進させる社会に変えることでした。