歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

航空機とガルバニック腐食、そして工作機械需要

2008-08-24 16:41:55 | Weblog
 最近の航空機には炭素繊維強化樹脂(CFRP)が多用されます。CFRPは強くて軽く、耐腐食性にも優れており、航空機の機体にうってつけの素材なのですが、従来機体の材料として多用されてきたアルミ合金との相性が悪く、CFRPと接触したアルミ合金が腐食されやすくなってしまうという大きな欠点がある、と工作機械メーカーの方から教えられました。どういうことなのかと思い、ネットで調べてみたところ、日本材料学会に提出された「複合皮膜による耐ガルバニック腐食CFMLの創製」という論文を見つけました。

(以下引用)
 近年、航空宇宙を初め、造船、車両、建築など多様な分野において、炭素繊維強化樹脂(Carbon Fiber-Reinforced Plastic 略称CFRP)を代表とする先進複合材料が積極的に利用されている。中には繊維強化金属積層板(Fiber-Reinforced Metal Laminates 略称FMLまたはFRML)というハイブリッド複合材料が航空分野に新規採用され、注目されている。(中略)しかし、CFRPとアルミ合金の接触に起因するガルバニック腐食問題は依然として未解決なままである。従来、この腐食問題を克服するため、CFRPとアルミ合金の間に一層のガラス繊維強化樹脂(Glass Fiber-Reinforced Plastic 略称GFRP)や熱可塑性フィルムなどを挿入する方法を研究されていたが、いずれもCFMLの剛性や強度などを低下させる弱点があるため、未だ実用化に至らなかった。従って、炭素繊維を強化繊維とするCFMLを実用化させるためには、ガルバニック腐食を克服し、FMLの剛性や強度などの力学特性を最大限に発揮できる防食方法の開発は必要である。
(引用終わり)


 正直言って「ガルバニック腐食」についての詳しいことはよくわからないのですが、CFRPとアルミの電位差が原因となってアルミ合金が腐食されてしまうんですね。
 CFRPといえば、ボーイングの次世代中型旅客機B787はこれを大胆に使用していることで知られています。このCFRPという取り扱いが厄介な素材にボーイングが手間取っていることが、B787の生産開始が大幅に遅れている背景の1つであると聞きました。
 とはいえ軽量化のニーズに対応するため機体にCFRPを活用する動きは止まらないでしょう。CFRPが多用されるとアルミ合金が使いにくい、そうはいっても機体に金属を全く使わないわけにもいかない、では何を使うかというとこれがチタンです。つまり、CFRPが航空機に多用されるようになるとチタンが多く使われるようになる、チタンが多く使われるようになるとこれを削るための低速・高剛性・大トルクの工作機械が必要になるわけで、日本の工作機械メーカーの大手はこの需要を狙っているのだそうです。なるほどなあ。