クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

木村拓哉vs渡辺謙? 時代劇視聴率ベスト5は…… ―時代と歴史―

2006年12月14日 | レビュー部屋
周知のように、12月14日は大石内蔵助をはじめとする赤穂浪士が吉良邸へ討ち入った日です。
事件発生から約300年もの歳月が流れていますが、
年末になると必ず話題になりますし、
テレビ局も「忠臣蔵」を放送します。
もはや「忠臣蔵」は風物詩のようなもの。
浄瑠璃、歌舞伎、映画、ドラマと数々上演され、
長い間日本人に親しまれてきました。

さて、時代劇と言えば、映画「武士の一分」(木村拓哉主演)
「硫黄島からの手紙」(渡辺謙主演)が現在話題になっています。
ヤフーニュースでは木村拓哉vs渡辺謙、
もしくは木村拓哉vs二宮和也(「硫黄島……」出演)のジャニーズ対決と捉え、
映画の内容とは別の視点で両作品の話題性を強調していました。
ちなみに、映画ではありませんが、
20世紀において最も視聴率を獲得した時代劇ベスト5は次のとおりです。

1 水戸黄門(1979)43.7%
2 日曜劇場・女たちの忠臣蔵(1979)42.6%
3 必殺仕切人(1984)33.9%
4 大岡越前(1978)31.6%
5 日曜劇場・花のこころ(1985)30.9%

やはり「水戸黄門」は強い。
ゲームやパチンコに登場するくらいのことはあります。
5位の「花のこころ」は橋田壽賀子原作で、
徳川家光(石坂浩二)の周囲を巡るドラマです。
(のちの忍藩主「阿部忠秋」も登場していた模様)

それにしても大河ドラマと違い、いずれも創作性の強いものばかりです。
一般的に文芸では「時代小説」「歴史小説」と区別されていますが、
ドラマなどでは「歴史劇」とは言いません。
ちなみに「歴史小説」とは実在した人物をモデルに、
実際に起きた事件をモチーフにして書かれたもの。
逆に「時代小説」は架空の人物が登場し、名もなき事件に巻き込まれてきます。
例え実在の人物が主人公だとしても、
史実とは離れたところで活躍するのがほとんどです。
(「水戸黄門」がそのいい例)
歴史上の人物を多く書いた司馬遼太郎は“歴史小説家”で、
庶民を描いた藤沢周平は“時代小説家”と言えるでしょう。

その意味で、「武士の一分」と「硫黄島からの手紙」も自ずと区別されます。
前者は“時代もの”、後者は“歴史もの”です。
「武士の一分」は名もなき武士の名もなき事件を描き、
「硫黄島からの手紙」は実在した人物とその史実をモチーフとしています。
両映画が話題になるのは当然だとしても、
対決するとなると土俵もそのニュワンスもちょっと違うのです。
例えばもし来年公開予定の「どろろ」(妻夫木聡・柴咲コウ主演)が参戦すると言ったら、
まるでお門違いとなります。
妖怪の出てくる「どろろ」は“時代”でも“歴史”でもなく、
“エンターテイメント”でしょう。

年末年始に向けて、テレビでは時代劇が多く放送されます。
“時代もの”“歴史もの”ではどちらが好きでしょうか?
両方好きな人には毎年楽しみな時期かもしれませんが、
好みがはっきりしていると自ずと制限されてしまいます。
いずれにしても“物語”であることは共通しており、
受け手も承知の上でそれを消費しているというわけですね。

参照資料
100年ランキング選定委員会著
『知っておきたい!ランキング100年史』角川oneテーマ21

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月14日生まれの人物は? | トップ | “厳美渓”のもうひとつの名物... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

レビュー部屋」カテゴリの最新記事