クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

出陣に際しては、馬や鎧はきらびやかに? ―おうち戦国―

2021年01月26日 | 戦国時代の部屋
おうちの中で資料を介して訪れる戦国時代。

後北条氏は出陣にあたって、武具や馬、身だしなみについて気を配っていたようです。
というのも、普段から合戦の準備を怠ることのないよう指示を出しており、
それが案外細かいのです。

例えば、天正13年(1585)比定4月5日付の「道祖土図書助」に宛てた北条氏政の印判状。
きたる出陣の支度にあたって、
鑓に金銀の箔を推し直すことや、一騎、自身の仕立てについては、馬や鎧等をきらびやかにするよう指示。
また、皮笠、立物、具足類のものを修復して綺麗にし、
小旗類は見苦しくないよう新たに仕立てるよう伝えています(『戦国遺文 後北条氏編』2793)。

 来調儀、別而諸軍之支度下知之間、前ゝ着到之辻、弥可致覚悟条々
 一指物四方
 一一騎、自身之仕立、馬鎧等迄、綺羅美耀(きらびやか)ニ可致之、諸武具委細、先着到ニ載之事
 右、先帳ニ一ゝ雖有之、猶改而申出候、皮笠、立物、具足類之物をハ、悉修復(綺)麗ニ致立、小旗類見苦敷をハ、何をも新可仕立、出来之日限五月五日を可限者也、仍如件

 四月五日(印文「有効」)
    道祖土図書助殿

戦場のおけるドレスコードのような印象さえ持ちます。
身なりは口ほど物を言う。
あまりにみすぼらしい恰好は合戦の準備不足を物語るものであり、
軍事的にも精神的にもよろしくなかったのでしょう。
きらびやかな格好で臨めば、経済的にも軍事的にも強く見えたのかもしれません。

出陣準備の慌ただしさが伝わってきます。
現代の感覚で言えば、試合前にユニホームを整え、
持っていく道具を確認するとともに、必要に合わせて修復や新調したりするといったところでしょうか。
それなりに時間を要しますし、出費もかかります。
思い付いてすぐに試合に臨めるわけではありません。

ただし、道祖土氏へ伝えているのは支度の指示です。
4月5日付の印判状で、上限を5月5日日までとしています。
緊急事態というわけではなく、もし敵勢の急襲があった場合は、
武具を修復したり新調したりする余裕はないでしょう。

ちなみに、4月5日付で同様の印判状を発給したのは、道祖土図書助だけでなく、
金子中務丞や鈴木雅楽助などに数名がいます。
きらびやかに……と指示をしているのは、道祖土氏と内田兵部丞です。
この両者にはそう指示するほどの何かがあったのでしょうか。

戦国時代において、派手好きな人もいれば地味を好む人もいたはずです。
きらびやかの定義は何だったのでしょう。
ブランドものの武具に身を包むか、
それとも買い物上手に適度な予算で整えるか……。
戦国大名のみならず、
国衆にしても武具や身だしなみからその人の性格が垣間見られたかもしれません。
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