クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

羽生の中村さん -簑・笠展示のお知らせ-

2006年04月29日 | お知らせ・イベント部屋
画像の人物は中村貞夫さんです。
中村さんは知る人ぞ知る簑・笠のコレクターです。
つい先日(※)、羽生郷土資料館主催の
「簑・笠展示」について紹介しましたが、
実は展示物の約9割は中村さんの所蔵物です。
ポスターの副題に「中村これくしょん」とあるのはこのためです。
展示室では(毎日ではないものの)、
画像のような簑・笠姿の中村さんを見ることができますし、
体験学習用の簑を着ることもできます。
展示物を見るのもよし、コレクターの中村さんに会いに行くのもよし、
羽生へ来た際には、ぜひ羽生郷土資料館に足をお運び下さい。

ところで、中村さんはいつから簑と笠を集め出したのでしょう。
また、集め始めたきっかけはどのようなものだったでしょうか。
ぼくは好奇心の虫がザワザワと騒ぎだし、
中村さんに直接話を聞いてみました。

中村さんは昭和10年埼玉県羽生市生まれの、羽生育ちです。
現在も羽生市に在住しており、
近所では簑・笠のコレクターとして有名な人物です。
羽生の特産品と言えば、
小説『田舎教師』(田山花袋著)にも描かれてる青縞で、
簑と笠が特に有名な地域というわけではありません。
今回の展示物の中にも羽生の簑も飾られていますが、
あまり独創性はなく至ってシンプルです。
そんな羽生に生まれ育った中村さんが、簑にのめり込んだのは、
旅先で偶然出会った簑に、ひと目惚れしたからだそうです。
それは幾重もの編み込みのある簑だったといいます。
芸術的な網目の模様を目にした瞬間、
簑の魅力に一気に引き込まれたということです。
今回の展示物にもその簑はありますが、
日本人がいかに器用であるかを感じさせてくれます。
簑を指差す中村さんの頬が少し緩んで見えたのは、
ぼくの気のせいではなかったでしょう。
その簑に出会った中村さんは、
コレクターの道を歩むことになります。
ときに昭和30年代初頭、中村さんは20代前半の若さでした。

中村さんの話によると、いままでの歳月の中で、
簑・笠の制作者に会えることは滅多になかったそうです。
収集のほとんどは旅先で、たまたま訪れた金物屋や竹屋から、
制作者を紹介してもらうことはあったといいます。
しかし、制作者から直接買うのではなく、
旅先の骨董屋や日本民芸館の展示会などで仕入れるとのことでした。
そんな50年以上も収集してきた中村さんの足跡が、
いま羽生郷土資料館の展示室において結集しているわけです。
展示できなかった簑・笠もたくさんありますし、
そのひとつひとつに多くの情熱がこもっているのでしょう。
ひとりのコレクターの道をそこに重ねてみると、
展示物がひと味違って見えるかもしれません。

先に書きましたが、当たり日には、
羽生郷土資料館で中村さんに出会うことができます。
簑と笠を着ていますから、すぐにわかると思います。
遠目で見ることもできますが、
近くに来た際にはぜひお立ち寄り下さい。
話の最後に、ぼくが継続の秘訣をお尋ねしたところ、
中村さんは次のように語ってくれました。
「とにかく毎日続けること。1日15分でいいんです。
大切なのは1日も休まずわずかな時間でも続けることです」
物静かで腰の低い中村さんですが、
そのとき少し大きく見えました。

現在催されている「簑・笠展示」のご案内は次のとおりです。

開催期間:平成18年4月22日(土)~6月4日(日)
開館時間:午前9時~午後5時
会場:羽生市立図書館・郷土資料館展示室
入館は無料。
休館日は毎週火曜日・第4木曜日・祝日(5月5日は開館)

なお、簑と笠を実際に着用する体験学習
「みの・かさ つけて」も催されます。
日時は5月5日(金)・5月20日(土)10時~11時30分
場所は、上記と同じ郷土資料館展示室です。

羽生市立図書館・郷土資料館ホームページアドレス
http://www.lib.city.hanyu.saitama.jp/index.html

※2006.4.24「火をまたぐ嫁とかさじぞう-簑・笠展示のお知らせ-」参照

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 古墳上に祀られる武者は誰か ... | トップ | 羽生西中に眠る大道遺跡 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

お知らせ・イベント部屋」カテゴリの最新記事