クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

何気ないところに旧流路が眠っている? ―見沼代用水路―

2016年12月28日 | 利根川・荒川の部屋
「藤間橋(行田市)を下っても何もないよ」
高校生の頃、そんな言葉を聞いたことがある。

ふむ。
確かに何もない。
いや、高校生にしてみれば興味を引くものは何もない。
服やCDを売っているお店があるわけではないし、
飲食店もない。

が、見方を変えれば風景は変わってくるもの。
興味が変われば景色は激変する。

何もない……
わけではない。
ある。
色々ある。

神社仏閣があれば、用水路の起点もある。
橋の傍らに佇む供養塔や石仏。
行人塚や控えの土手など、
案外豊富に点在している。

むろん、大人になってもその手のものに興味を覚えない人は多くいる。
それが悪いわけではない。
僕は郷土史に興味を持ってから目に留まるようになったが、
見慣れた景色でも新しい視点で更新されていくのが結構楽しい。

「ある」の一つに数えられるのは旧流路跡。
見沼代用水路は江戸期に掘削され、その流れは健在だ。
でも、最初からコンクリートで護岸されていたわけではない。
かつてはいまほどスマートではなかった。
クネクネと蛇行していた。

見沼代用水路の一部は星川であり、古代の荒川に比定される。
用水路を掘削したことに違いないが、元々流れていた星川を利用している。
だから蛇行していても何らおかしくはない。

現在の形に整備される中で、蛇行している箇所はショートカットされた。
旧流路である蛇行の流れは田んぼに利用されるか、
あるいは沼として1部現存しているところもある。

藤間橋から少し下ったところにも、旧流路跡を見ることができる。
そこは田んぼとして利用されているが、
土手の跡が残っている。
大きく蛇行して流れていたらしい。

ちなみに、藤間橋から少し上ったところには旧流路の一部が沼として現存している。
田島橋も藤間橋も整備後にできた橋だ。
江戸時代から架かっていたわけではない。

景色としてはすこぶる地味。
意識しなければ目に留まることはない。
目に留まったとしても何の変哲もない田んぼ。
思わず足を止めてしまう……ということはまずないだろう。

でも、「旧流路」の視点で見れば立ち止まってしまう。
何もないわけではない。
山羊座のせいか、物理的な大幅の変化は好みではないが、
静かに更新される景色に熱さを感じる。


埼玉県行田市
コメント
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