ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

発起人の権限

2008年11月21日 01時25分01秒 | 商法
発起人の権限についてもう少し考えてみます。


発起人の権限をいうとき、設立中の会社の権限も述べるものもありますが、私は同一と解し、発起人の権限のみを論ずる立場を採っています。




まず、同一性説から。

原則として、設立中の会社は本来権利能力を有しないが、設立中であってもその実体は存在し、発起人を機関として行為をなし得る。

よって、設立中の会社は権利能力なき社団と解し、発起人がした行為は、形式的には発起人に帰属し、実質的には設立中の会社に帰属する。

そして、会社が設立すると、形式的にも何ら手続きを要せず、設立前にした発起人の行為は設立後の会社に帰属する。


しかし、発起人がした行為は、発起人がなし得る権限内の行為でなくてはならない。

では、その権限内の行為はいかなるものと解すべきか。


設立中の会社は、発起人を介して行動しうるのであるから、発起人の権限は、設立中の会社の権限と同じと解する。

設立中の会社は、成立を目的とするものであるが、直接的な行為のみとするのでは、設立が困難になる場合もあり得る。

しかし、広く開業準備行為まで及ぶとするのでは、成立を目的とする以上のものになり、妥当でない。

定款に記載する変態設立事項(28条各号)は、会社の財産的基礎を確保し、健全な会社設立を目的とするものである。

そこで、成立のために法律上のみならず事実上、経済上必要な行為まで及ぶと解する。


そして、発起人が権限外の行為をした場合、発起人に帰属し、会社には帰属しないのが原則である。

では、会社は発起人がした権限外の行為を追認し得るか。

28条を規定した趣旨が会社の財産的基礎を確保し、健全な会社設立を目的としたものと解する以上、現物出資を潜脱する行為は追認(民法116条を類推)を認めるべきでない。


もっとも、その後、事後設立を新たに行うのであれば、認められるというべきである。

一方、相手方の保護は、発起人が行った行為は、無権代表行為というべきであるから、民法117条1項を類推し、善意無重過失である限り、相手方が保護され、発起人が責任を負うべきである。
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