R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

ドラマのように眠りたい(Vol.8)

2010-08-10 21:48:37 | インポート

SCENE 7 逃走

 舞台中央のスクリーンに、テレビ画面が映し出される。テレビではちょうどニュースが始まろうとしていた。

            

アナウンサー ニュースです。本日未明、川原公園にて、パンダが出没している事が

       確認されました。付近の住民は、危険ですので、公園へは近づかない

       で下さい。本日未明。川原公園にて、パンダが出没している事が確認

       されました。付近の住民は、危険ですので、公園へは近づかないで下

       さい。なお、このパンダ。近くの動物園などから逃げたというもので

       もなく。個人密輸によって入手され、ペットとして飼われていたもの

       と見られ、密輸入並びに、国際動物保護法の面からの捜査も行われて

       います。  

       それでは、パンダに襲われたという女子高校生、年齢はえ~っと。ま

       ぁいいですね、そんな細かいこと。その方へのインタビューが入って

       おります。御覧ください。

 映像が変わり、女2が映し出される。警察官が女2を抱きかかえている。

            

女2     そうなんです。パンダが、草むらから現れて、あんな事や、

警察官    あんなこと!

女2     こんな事までされちゃったんです。

警察官    こんなこと!

女2     具体的な事?……ごめんなさい。恥ずかしくて言えません。

警察官    こんないたいけな善良なる市民にあんなことやこんなことをしたパン

       ダなどゆるせん!

 警察官、女2を抱きかかえたまま、ピストルを構える。

            

     小暗転

            

 場面は、さっきとはちょっと違った河川敷の草むらになる。男1は、草むらの中に身を隠しながら話し始める。

            

男1     まったく弱ったな。こんな事になっちゃって。あららら、またパトカ

       ーが出てきたよ。たかがパンダ一匹に、こんなにも大騒ぎになるのか

       ね。今の日本、それだけ平和だってことなんだろうねぇ。

       やばい、隠れろっ。

 男1、草むらに頭だけを隠している。そこへ、男3(謎の武闘家)が現れる。

            

男3     頭かくして尻隠さず。わちゃー。はい。はい。はい。はい。

 男3、男1の尻をけり飛ばし、攻撃を仕掛け続ける。

男1     うわぁ。

            

 男1、びっくりして跳び上がり、構える。

            

男1     びっくりしたなぁ。もう。

男3     お主、どこの門下生だ。なかなかやりおる。

男1     …どこの門下生だって…僕をみて変だとは思いませんか。。

男3     私は、中国へ修行の旅をしてきたことがある。中国では5人に一人

       が、パンダに化けられる。

男1     嘘だぁ。

男3     お主やりおるな。どうして嘘だと分かった。

男1     もう少しましなことを言ったらどうですか。中国の奥地ウルムチの、

       北西に聳える雅山で採れる桃を食べるとパンダになるんだとか。

男3     食べたのか。

男1     だから嘘だって。

男3     嘘?本当か。

男1     本当です。

男3     さっき嘘だといったぞ。

男1     嘘だって言ったのが本当だっていうことで、嘘ではなく本当のことだ

       って言う訳じゃないんですけど…。

男3     何だか分からないけれども、諄すぎる!あちょー。はい。はい。は

       い。はい。

 男3 攻撃してくるが、男1それを全て受けてしまう。

男3     なかなかやるな。パンダにしておくにはもったいない。  

男1     普通に話しかけてくれた人はあなたが二人目だ。僕にはびっくりしま

       せんか。

男3     まぁ、パンダが人間の言葉、しゃべってりゃぁちょっぴりは不思議だ

       って思うけどよ。世の中不思議なことだらけだ。パンダがしゃべった

       ぐらいど

       うってことはない。私の師匠は、気をためて、豆腐の角に頭をぶつけて血を

       流すという芸当ができる。そっちの方がよっぽどびっくりした。

男1     みんなその位に思ってくれればいいのに。

            

 また、ひとしきりサイレンの音が聞こえる。

            

男3     あれじゃぁさわぎすぎだ。パンダ君、君に同情するよ。

男1     ありがとうございます。人の親切がこれほど身に沁みたことはないです。

男3     私は、何もしてないよ。

男1     …あなたは…。

男3     何のこたぁない。ただのさすらいの武闘家だ。このごろ良く街で見かける