SCENE 3 孤独な決意
男1は、草むらの陰で膝を抱えてプルプルと震えている。男の様子は、シルエットでしかその様子をうかがうことはできない。しばらくすると、自分の毛むくじゃらの手を見つめて話し出す。
男1 確かに俺は熱い出来事を待っていたのかもしれない。でも、でも、こ
れはちょっと違うような気がする。俺は、こんな怪奇な出来事を期待
していたんじゃないんだ。燃えるような熱い恋をして、恋に恋して、
自分に酔って…。大粒の涙をしこたま流し、雨にずぶ濡れになりなが
ら、彼女をきつく抱き締める。そんな熱い思いをしたかったんだ。ピ
アノの悲しげな旋律がバックに流れる中を、今までの思いの全てを涙
に託し、彼女にその思いをぶつける。それが、俺の若き日のドラマの
クライマックスになるであろう出来事だったのに…それが…それ
が…。
男1泣き崩れてしまう。しかし、すぐに両手を握り締め、思いを断ち切るかのように立ち上がる。
男1 …俺のどこに、狼男になってしまう血が流れていたというんだ。なぜ
俺は、満月を見てしまった。それもこれも運命だとでも言うのか。
俺は、俺の中にドクドクと流れている狼の血を恨む。こんな運命を
与えてくれた神を恨む。そして、その神を恨みながらも、なってしま
ったからしかたない、狼男としての、俺の第二の人生を、神の望みど
おり、見事に請け負って見せようじゃないか。
俺は、俺は、狼男だ!う~!みゅぅ~!…あれ?
男の拍子抜けした、かわいい声が響き渡る。
暗 転