R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

ドラマのように眠りたい(Vol.4)

2010-08-05 20:58:33 | インポート

SCENE 3 孤独な決意

 男1は、草むらの陰で膝を抱えてプルプルと震えている。男の様子は、シルエットでしかその様子をうかがうことはできない。しばらくすると、自分の毛むくじゃらの手を見つめて話し出す。

男1     確かに俺は熱い出来事を待っていたのかもしれない。でも、でも、こ

       れはちょっと違うような気がする。俺は、こんな怪奇な出来事を期待

       していたんじゃないんだ。燃えるような熱い恋をして、恋に恋して、

       自分に酔って…。大粒の涙をしこたま流し、雨にずぶ濡れになりなが

       ら、彼女をきつく抱き締める。そんな熱い思いをしたかったんだ。ピ

       アノの悲しげな旋律がバックに流れる中を、今までの思いの全てを涙

       に託し、彼女にその思いをぶつける。それが、俺の若き日のドラマの 

       クライマックスになるであろう出来事だったのに…それが…それ

       が…。

 男1泣き崩れてしまう。しかし、すぐに両手を握り締め、思いを断ち切るかのように立ち上がる。

男1     …俺のどこに、狼男になってしまう血が流れていたというんだ。なぜ

       俺は、満月を見てしまった。それもこれも運命だとでも言うのか。

        俺は、俺の中にドクドクと流れている狼の血を恨む。こんな運命を

       与えてくれた神を恨む。そして、その神を恨みながらも、なってしま

       ったからしかたない、狼男としての、俺の第二の人生を、神の望みど

       おり、見事に請け負って見せようじゃないか。

        俺は、俺は、狼男だ!う~!みゅぅ~!…あれ?

 男の拍子抜けした、かわいい声が響き渡る。

            

     暗 転