R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

ドラマのように眠りたい(Vol.3)

2010-08-03 22:32:30 | インポート

SCENE 2  捜索

          

 喫茶店で同じテーブルに並んで座って、遠くを見つめている男女二人。男は目の前にパソコンを広げている。女は一方的に、自分がここに至るまでの経過を切々と話した後のようだ。コーヒーに一口口をつけた後、女が話し出す。

          

女1    …その日以来彼は姿を見せないの。

 男は、パソコンのキーボードをたたきながら話し出す。

男2    よし子の言い方が、余り露骨だったから嫌われたんじゃないのか。男だ

      って、いざ結婚を決意してはいても、『さあ、10年間の愛の結末とし

      て、結婚しましょう!』って断言されれば興醒めってところもあるよ

      な。

女1    そんな派手な言い方はしなかったよ。それに、同時に『結婚しよう』っ

      て言う言葉は口にしたんだし。 

男2    …そんなに焦んなくたって良いのに。

女1    ちょっと、気になるんだけど…。

男2    何。

女1    話をしながら、パソコン打つのやめてくれる。

男2    別にいいじゃないか。癖なんだから。

女1    癖って。

男2    人にはいろんな癖があるじゃないか。爪をかむ、貧乏ゆすり、髪をいじ

      る、咳ばらいをする…。それと一緒。迷惑をかけるわけじゃないからい

      いじゃないか。

女1    迷惑じゃないけど。

男2    それに、今日の話しの内容をメールで送ってやるよ。きちんと確認も取

      れるじゃないか。

女1    何それ。会話をする意味がないじゃない。

男2    そうだよ。俺にとっちゃ、こんなところまで出てきて、おまえに会うこ

      とすら面倒くさいよ。今度はチャットでやろうよ。

女1    人との会話をもっと大切にしなさいよ。あんた、仮想空間でハンバーガ

      ーを食べておなかいっぱいになるわけ。

男2    精神的にはね。

女1    あんたさ、腹いっぱいの夢見ながら餓死できそうね。

男2    何だって、幸せならいいじゃないか。

女1    自分が幸せって思っているんだから、幸せないいでしょうね。こんな男

      でも、昔からの仲間なんだから、少しは頼りにしてるんだからね。

男2    こんな男ってのだけは余計だ。撤回してくれよ。そうすれば、文章から

      も削除するからさ。

女1    わかった。わかった。ごめんなさい。

男2    わかってくれればよろしい。ここの文章ドラックして削除っと。良し。

女1    はぁぁ。

男2    ため息なんてついちゃって…。結婚なんて考えなきゃいいのに。    

女1    男は気楽でいいわよ。女はね、やっぱり婚期が遅れてくれば、高齢出産

      になっちゃうとか、いろんな事を考えてくるでしょ。知ってる?高齢出

      産になると、丸高ってマークが母子手帳に入るんだってよ。

男2    今は無くなったんだってよ。

女1    マジ。

男2    丸高で、今インターネット検索してみた。見る。

 パソコンの画面を見せる。

女1    結構です。

男2    今や、体外受精で六〇歳の人だって子どもが産める時代なんだよ。考え 

      が古いね。

女1    それは特別な例よ。

男2    おまえだって特別だろう。おまえ位丈夫なら、六〇歳とは言わなくて

      も、四十歳ぐらいまで平気で子どもが産めると思うよ。印象的なんだよ

      な…。中学の時、バレー部のキャプテンだったおまえが両腕に2本のバ

      レーのポールを抱えて体育館を歩いているところ…。

 女1、男2を殴り飛ばす。

女1    まぁ、子供はさておいても、私ね、派手に結婚披露宴をしてみたいわ

      け。

男2    披露宴?

女1    一応、人生のビッグイベントとして、ホテルを借りきって五百人くらい

      の人を呼んで結婚披露宴をして、『お父さん、お母さん今までありがと

      うございました。』ってやつをレーザー光線バシバシの、ドライアイス

      ぶわぁっていう中でやってみたいわけだ。そんでもって、はやばや子供

      を産んで、同じホテルで子供のお披露目式をやってみたいわけ。家もす

      ぐ建てるのよ。私ね、そのために貯金してるの。

男2    お前みたいなののおかげで、日本のホテル産業もこれだけ大きくふくれ

      あがってきたっていうわけだ。

女1    私だって、普通の女なのよ。みんなそう思ってるんじゃない。

男2    そんなことは、普通親たちが世間体考えて企画することであって、今時

      の若者は、そんなこと考えねぇよ。

女1    そうかなぁ。実はね、私計算してみたんだけど、一見派手でお金を使う

      ように見えるこの結婚披露宴という人生最大のイベントだけれども…

 女1、おもむろに計算機を取り出す。

女1    まず、収入を、一人ご祝儀約2万円とするじゃない。それが五百人で、 

      単純に考えれば一千万ね。そんでもって、支出で考えると、実は誰も食

      べたいと