こぐま経済研究所ブログ

やさしく金融情報をお伝えします

生産・消費落ち込み最大 3月震災で供給網寸断 鉱工業生産15%低下 消費支出8.5%減少

2011-04-29 11:24:20 | 日記
東日本大震災後の景気の一時的な落ち込みが鮮明になってきた。経済産業省が28日発表した3月の鉱工業生産指数は前月比15.3%低下し、過去最大のマイナスになった。消費支出も前年同月比8.5%減と最大の減少幅を記録。家計にも震災の影響は及びつつある。原油高の影響で消費者物価指数は全国の先行指標となる東京都区部で4月に約2年ぶりにプラスに転じた。生産は4月以降に回復に向かう見通しで、景気は年度後半にかけて持ち直す公算が大きくなっている。

経済産業省が発表した3月の鉱工業生産指数は82.9と2009年7月(81.9)以来の低水準。前月比マイナス幅はリーマン・ショック後の09年2月(8.6%)を上回り、1953年1月の統計開始以来過去最大になった。経産省は基調判断を初めて「急激に低下」に引き下げた。ただ4月と5月の生産は上昇を予測している。

3月の生産指数は事前の市場予測の中心値(10.6%低下)を大幅に下回った。マイナス幅を地域別にみると、被災地は31.9%、被災地以外は13.5%だった。被災地以外の低下が全体に与えた影響が約8割を占め、震災でサプライチェーンが寸断された結果、被災地以外にも減産が波及した。

全業種での生産指数が低下した。低下の5割は輸出機械工業が46.4%減少した影響だった。なかでも普通乗用車と小型自動車の減産率は50%を超えた。一般機械工業もマイナス14.4%と6カ月ぶりの減少。3分の2の工場が被災地にある半導体製造装置は34.1%の減産だった。

日経 28日夕刊
---------------------------
大方の予想通り、大震災の影響で、1~3月期の生産および支出が大きく落ち込みました。今回の指数算定では、被災地域を除外するような特例措置は設けないで、詳細情報の提出が困難であったり、連絡が取れない事業所については、経産省が推計値を使って指数計算しています。ですので、過去データとの連動性はとれるようです。

今後の見込みとしては、4月以降は、生産は回復と経産省も発表しています。すでに流通インフラはほぼ回復してきましたし、部品供給の工場も7月までには9割近く回復する見込みであることは、27日の朝刊に記載されていました。このような背景で4~6は大きく反転してくるのではないかと私も想定しています。次の焦点は、夏の電力不足。このファクターの生産活動に与える影響をいかに小さくするか、今からの対策準備にかかっています。

経済産業省の関連ページはこちら。

こぐま経済研究所

日本国債 格付け見通し下げ S&P、財政悪化を懸念

2011-04-27 23:32:49 | 日記
米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は27日、日本国債の格付け見通しを現行の「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表した。東日本大震災の復旧・復興費用が20超~50超円程度に膨らむ結果、財政赤字が拡大すると予想。財政再建策が打ち出されない場合は、格下げの可能性があるとしている。

格付けは「ダブルAマイナス」に据え置いた。東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて日本の財政見通しを下方修正、同時に格付け見通しを変更した。増税などの措置が取られなければ、国と地方をあわせた一般政府の財政赤字は国内総生産(GDP)比で2011年度は2ポイント、12年度には1ポイント従来予想より悪化するとみている。

S&Pは今歩の見通しについては「政府のリーダーシップと財政再建策に関する政治的コンセンサスに大きく左右される」と指摘。「今後2年以上に悪化した場合は、格下げとなる可能性がある」とした。

日経 27日夕刊
--------------------------
本来の国力とは、自然災害による影響も考慮して測られるものなのでしょうか。単純に財政悪化からのみ格付け見通しを変更したS&Pですが、想像を絶する災害受けたにも関わらず、ものの1カ月半で新幹線を復旧させ、部品供給工場は7月に9割近くが供給を再開する日本の国力をどのように判断しているのでしょうか。金融の世界では、国債増発で返済計画の見通しがはっきりしないことは確かに不安要素ではあります。ただ、未曾有の被害を瞬く間に回復していく日本人の底力も評価のファクターに加えて欲しいと思います。

こぐま経済研究所

東電の株価下落 投信にも影響 国内外で1000億円超も

2011-04-26 22:12:35 | 日記
福島第一原子力発電所の事故に伴う東京電力株の急落は国内外の投資信託にも影響を広げている、投信評価会社モーニングスターによると、投信全体が組み入れている東電株数は約7800万株に達し、損失は1000億円を上回ったとみられる。原発事故後は投信の運用会社が投資対象から東電株を外す動きも広がっており、こうした売りが株価下落に拍車をかけた面もある。

投信による東電株の組み入れ状況は国内外の運用会社の運用報告書をもとに推計した。1239本の投信に合計で7884万株が組み込まれており株価を単純に掛け合わせると、東日本大震災前の約1700億円から25日に約350億円まで目減りしたことになる。

東電株を大量に組み入れていたのは、日経平均株価のような日本株指数に連動する海外上場の大型ETF(上場投資信託)だ。東電株が指数の構成銘柄であるため、機械的に保有しているケースが多い。運用世界最大手のブラックロックのETFでは、2月末時点で「MSCI EAFE」という商品が約450万株、「MSCI JAPAN」が約340万株を組み入れていた。

(中略)

国内外の投信の東電株組み入れ比率は高くても2~3%のケースが多く、株価急落が運用成績に与える影響は限られそうだ。

日経 26日朝刊
------------------------
東電株の値下がりの影響が、特にETFに出ているようです。BLACKLOCKが運用するiSharesMSCI Japan Index Fundは、1年リターンが-3.04%、3月16日に大きく値を下げた後、少し戻していますが、震災前の状態にはまだ戻っていません。国内外の投信は、東電比率の組み入れ比率を低く抑えていたものがETFに対して多く、直接的な影響はなさそうです。分散効果のおかげですね。ETFのように、インデックス運用にかぶせてポートフォリオを組む場合、225銘柄を同じように購入することは難しいため、パフォーマンスを同様に管理できるようにポートフォリオを作成します。その際に、東電のような安定性の高い銘柄を高い比率で持ったために、影響を受けたものと思います。

こぐま経済研究所

個人マネーも投資先を選別 レアル・豪ドル建て商品人気

2011-04-25 22:07:53 | 日記
主に投資信託を通じて新興・資源国通貨に投資している日本の個人投資家も、為替相場の動向をにらみながら投資先を選別する傾向を強めている。中長期的な経済成長や通貨高の期待が高いブラジルレアルやオーストラリアドルで運用する商品に資金が集中する一方、中国の人民元などに投資するタイプへの関心はまだ高まっていない。

個人マネーがどの通貨に向かっているかを如実に表すのが、「通貨選択型」と呼ばれる投信の動向。米国の社債など投資対象とは異なる国の通貨を選び、運用成績の向上を目指す商品だ。

投信評価のリッパー・ジャパンによると、通貨選択型投信の純資産残高は3月末時点で8兆円を超えるが、この6割強を占めるのがレアル建てだ。高金利と通貨高に着目した個人の投資意欲は根強く、2010年度はレアル建て投信に2兆2000億円が流入した。

(後略)

日経 25日朝刊
------------------------
金融危機で損失が拡大した個人投資家への救いの手として登場した通貨選択型投信。当初からブラジルレアル建ての商品は人気がありましたが、資源国通貨の豪ドルと併せ完全に2強を構成しています。ブラジルは、オリンピックやサッカーワールドカップの開催国として今後大規模な公共工事が見込まれ、経済成長はしばらく安定して続くものと考えられます。このような背景から、ブラジルレアル建て投信に資金が流入しているものと考えています。

中国、外貨準備で産業育成 政府系ファンド半導体大手に出資

2011-04-23 07:04:18 | 日記
中国が蓄積した外貨準備を国内産業の育成に活用し始めた。外貨準備を投資原資とする、政府系ファンド、中国投資(ICC)はこのほど、中国半導体大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)に2.5億ドル(約210億円)を出資することで合意した。中国の外貨準備高は3月末に3兆ドルを突破。新たな運用先を求めて、CICが重要産業を担う国内企業に出資する事例が今後も出てきそうだ。

SMICは中国最大のファウンドリー(半導体受託生産会社)。北京市で投資総額460億元(約5800億円)の新工場を計画するなど設備拡充を進めており、中国政府に支援を求めていた。

CICはSMICが発行する2.5億ドルの優先株などを取得する。普通株に転換すると、発行済み株式の11.6%に相当し、通信機器大手の大唐電信集団に続く第2位の株主になる。取得時期はまだ明らかにしていない。

SMICは資金調達に充てるほか、負債削減も進める考え。CICは将来、5千万ドルを追加出資する権利も取得した。SMICは香港とニューヨーク市場に上場しているため、CICは手持ちの外貨をそのまま出資に充当できる。

中国政府はIT(情報技術)など先端分野で技術力を備えた有力企業の育成を急ぐ。中国のIT関連企業は、香港や米国など海外市場に上場している場合が多く、「外貨準備を産業育成に回す余地は大きい」(国内証券)とみられる。

日経 21日朝刊
------------------------
中国が、有り余る外貨を国内産業の育成に利用し始めました。先進国の金融緩和などを通じて中国市場に流入してきた外貨を、香港や米国に上場している企業に政府系ファンドを通じて投資します。主力産業への投資に利用してもらうのは、企業にとってもありがたいことと思います。

懸念材料としては、SMICなどに出資する政府系ファンドの株主としての存在が大きくなってしまうこと。国営企業とまではいきませんが、筆頭株主になれば、影響力は大きいはず。国の管理下に置かれることは避けなければなりません。

こぐま経済研究所