内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

生きている形は見ることによって捉えられるのであって、分割することによってではない ― カンギレム『生命の認識』より

2020-08-23 15:03:03 | 哲学

 ビュルガの本の序論で、ゲーテの形態学について言及されている同じ段落で言及されているのがカンギレムの『生命の認識』(La connaissance de la vie, Vrin, 2e édition revue et augmentée, 2009 ; 1re 1965. 邦訳『生命の認識』法政大学出版局 叢書・ウニベルシタス 2002年)の序説である。そこに示された生命観は、ゲーテのそれと重なり合う。
 生命とはさまざまな形が成ることであり、認識とは形を与えられた物質の分析である。だから、いくら分析を重ねても、形を成すことそのことを説明しつくすことはできない。それどころか、さまざまな形において、その形の構成要素から成っている結果しか見ないとき、それらの形がどこから来ているのか見失ってしまう。あらゆる生ける形は、それぞれが一つの全体なのであり、その意味は、それらの形が置かれた環境に対して形成されていく傾向そのものの中にある。だから、それらの形はそれとして見られることによってはじめて捉えられるのであって、分割することによってではない。形は、それとして一つの全体を成しているのだから、本来分割しようのないものであり、何かそこから中身を抜き取れるようなものでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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