朝寝-昼酒-夜遊

日々感じたことを思いのままに書き散らすのみ。
※毎週土曜更新を目標にしています。

こんぴら歌舞伎

2010年04月19日 15時51分27秒 | 歌舞伎・文楽

昨日「こんぴら歌舞伎」に行ってきた。
失業中で時間が取れるので、せっかく、というのも変だが、
今まで見たいと思っていたが機会がなくて行けなかったものに。

金丸座に行くのは初めてではない。
たぶん20年以上前に行ったことがある。
その時は奈落や廻り舞台の構造を見せてもらった。

前日から琴平に泊まり、昨日は10時前に小屋の前へ。
20年前と違い、小屋の前は砂利が敷いてあった。
開場前に、おそらく地域の方だろう、口上のようなものをやっている。
これはこれで面白い。
今は忠臣蔵の「口上人形」くらいでしかお目にかかれない代物。

開場すると屈んで入っていく。
中は今の劇場と違い、かなり開放感がある。
外との隔ては障子や(暗転させるときに使う)木の雨戸のようなもので、
どうやっても光、風、音が屋内に取り込まれる。
その雰囲気が個人的には好み。

昼の部は、何といっても最初の「義賢最期」が素晴らしかった。
愛之助の声・表情は恐ろしく仁左衛門に似ているのだが、
それがこの間口の狭い舞台に映える。

組んだ襖の上に立ち、その襖を横倒しにするところ、
花道で捕手と絡む際の睨み、
幕切れの「仏倒し」など、
(ありふれた表現だが)歌舞伎の「スペクタクル」の味が強烈に伝わってくる。
間口が狭い、ということは役者が相対的に大きく見えるし、
捕手との絡みも文字通り「所狭し」と暴れることになる。

平場で見ていたのだが、舞台や花道から見下ろされる迫力と、
拍手やどよめきが周囲の客席から降ってきたり、
自分の座っている地面から湧き上がってきたりする感覚。
椅子席だと椅子に音が吸収されるところ、
ダイレクトに音や振動が伝わってくるようだ。
また、客同士も近く、それぞれの息遣いや声から
感じていることが互いに何となく伝わるように思った。
# これは役者からすると逆に恐ろしいところでもある。
 ある客が「面白くない」と感じると、
 他の客に舞台の面白くなさと他の客の感じている面白くなさが
 どちらも伝わることになり、
 加速度的に雰囲気が悪くなると思う。

「棒縛」「なめくじ」はまあ良かった。
これも客が役者に近い分、客の反応が役者に伝わってそれに役者が応え、
という循環ができていたように思う。
「なめくじ」がすっぽんから上がってくるのだが、
手動ならではの微妙なスピードのブレが良い。

夜の部は「敵討天下茶屋聚」の通し。
通し狂言は初めてらしいが、うーん、難しいな。
どうしても陰鬱な場、楽しめない場があるのだが、
そこで冷めてしまう感じがする。

弟が腹を切ろうとして助けられ、というところで
それまでの「これでもか、これでもか」という悲劇的な場面から
「これから良い方に行くぞ」と明るくなる際に
雨戸も開け放って物理的にも明るくするのだが、
時刻が遅く、あまり明転が利かなかった感じ。
照明でフォローしていたのだが、
どうせだったら自然光だけで明るくした方が面白いので、
昼の部にこの芝居をやった方が良かったかも知れない。

個人的には、亀治郎の元右衛門は崩し過ぎかな、と感じた。
芝居の動きを離れてしまっていると思う。
終幕の客席の中に雪崩れ込んで客の羽織で隠れてみたり、
梯子で2階席に上がったりするのは面白いと思うが。
ここでも愛之助の悪役は手強くて好み。

夜の部と雖も18時半に終演。
昼夜通して見て腰は痛かったが、
今の大劇場の芝居とは違う空気、
客席からも芝居を作り、
その中で舞台からだけでなく、他の客からも盛り上げてもらえられる相互作用、
といったものを感じて非常に楽しめた。
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