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休業手当について(3)「平均賃金の百分の六十以上」とは?

2020年06月03日 09時55分34秒 | お仕事
休業手当について、労働基準法では、
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、
その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
と規定されています。

前回までで、このうち「使用者の責に帰すべき事由」についてお話ししてきました。
休業手当について(1)そもそも「休業手当」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?
休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?(「経営上の障害」について)

今日は、「休業手当」として最低限支払わなければならない「平均賃金の百分の六十以上」について
説明したいと思います。

1)そもそも「平均賃金」とは?

「平均賃金」という言葉は、「休業手当」に限らず、様々な局面で出てきます。
例えば「解雇予告手当」「年次有給休暇中の賃金」「減給の制裁の上限額」などです。
計算方法としては共通で、
a.算定すべき事由の発生した日以前3カ月間に、
 b.その労働者に対して支払われた賃金の総額を、
 c.その期間の総日数で除した金額」です。
但し、賃金締切日がある場合には、
「算定すべき事由の発生した日」の、直前の賃金締切日から起算していきます。
# また、出勤日数が少ないパートなどの場合は、最低額の保証があります。

a.「算定すべき事由の発生した日以前3カ月間」
休業手当の場合は、「休業を開始した日」になりますので、
例えば、
末日締の事業所で
4/27に休業計画を周知し、5/7から実際に休業を開始した場合ですと、
直前の賃金締切日は(5/7の直前の)4/30になりますので、
「2/1から4/30」の3カ月間の賃金額を見ることになります。

また、産前産後、育児・介護休業中、試用期間中などは除きます。
これらの期間は、給与が支給されない、または通常より給与が低いことが多いので、
平均賃金の計算に入れると金額が小さくなってしまうからです。

b.「賃金の総額」
原則として、全ての賃金(固定給、時間外労働の割増賃金、通勤交通費など)が含まれます。
但し、「賞与」「臨時に支払われたもの」などは含まれません。

c.その期間の総日数
ここが紛らわしいのですが、平均賃金を計算するときは
「所定労働日数」ではなく、「総日数」(暦日数)で割ることになります。
例えば、
賃金が固定給300,000円と交通費15,000円の場合で、
2月:所定労働日数20日(暦日数:29日)
3月:所定労働日数22日(暦日数:31日)
4月:所定労働日数21日(暦日数:30日)
とします。
この場合、所定労働日数ベースで計算しますと、
  (300,000円+15,000円)×3ケ月 / 20日+22日+21日 = 15,000円 
になります。
欠勤控除や日割計算する場合は、所定労働日数ベースで計算することが多いのではないでしょうか。

ところが、平均賃金の計算では、暦日数で計算しますので、
  (300,000円+15,000円)×3ケ月 / 29日+31日+30日 = 10,500円 
になるのです。

2)平均賃金の百分の六十(6割)
「休業手当は6割」というところから、
何となく「(欠勤控除される額である)15,000円の6割=9,000円」が最低限支給される、と
思っておられる方が(事業主、労働者とも)多いのですが、
労働基準法で最低限支給しなければならない「休業手当」の金額は、
10,500円×6割=6,300円
ということになります。
所定労働日数や残業代にもよりますが、欠勤控除額の4~5割程度、ですね。

また、「1日の内、一部休業した場合」についても、注意が必要です。
労働基準法では、「休業があった日について、平均賃金の6割は支払わなければならない」定めですので、
例えば半日勤務(半日分の給与を支払う)、半日休業の場合、
この「半日分の給与」が平均賃金の6割を超えていれば、
追加で休業手当を支給する必要はありません。

先ほどの例ですと、
日割計算した場合の半日分の給与は 15,000円/2 = 7,500円 であり、
平均賃金の6割(6,300円)を超えていますので、
休業手当の支給は不要、ということになります。

何となく違和感もあるのですが、
「休業手当」が、「使用者は、労働者に対して、1日あたり平均賃金の6割の収入を保障しなければならない」
という考え方で設定されているのだろう、と思います。

# また別の話ですが、休業手当は「給与所得」となり、労働者の所得税の課税対象となります。
 No.1905 労働基準法の休業手当等の課税関係|国税庁
 また、社会保険の標準報酬月額は、4月・5月・6月の支給額をベースに9月分以降が決定されますが、
 休業があり、休業手当が支給された場合には(休業の日数等により)注意が必要です。
 こちらは別途、整理して書きたいと思います。
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