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休業手当について(2)「使用者の責に帰すべき事由」とは?

2020年06月01日 07時19分32秒 | お仕事
「休業手当」について、前回
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、
その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」
という労働基準法の条文をご紹介しました。
(前回:休業手当について(1)そもそも「休業手当」とは? - 朝寝-昼酒-夜遊

今回は(2)として、「使用者の責に帰すべき事由」について説明します。

(2) 「使用者の責に帰すべき事由」とは?
この文言だけを見ますと、「使用者に故意・過失がある場合」程度の、かなり限定的な範囲のように見えますが、
実際にはかなり広範に認められる(=使用者が、「休業手当」を払う必要のある範囲が広い)と解釈されています。

使用者の責任度合に応じて、以下のように区分して整理します。
1) 不可抗力(天変地異など)
2) 故意・過失があるとは言えない「経営上の障害」
3) 使用者の故意・過失による事由

1) については、「使用者の責に帰すべき事由」には該当しない(=「休業手当」を払う必要はない)と解釈されています。
これは、当然のようですが、
実は、法律が制定される際には「労働者の最低生活の保障」の観点から
労働者の責に帰することのできない事由による休業の場合」を「休業手当」の対象にする、という構想だったようです。
この表現だと例えば「天変地異」についても(「労働者の責」に帰することは、当然できませんので)「休業手当」の対象となります。
ただ、これは事業主にとってあまりにも酷、ということで、
「不可抗力」は除外された「使用者の責に帰すべき事由」という表現になったようです。

2) は後で詳細に検討します。

3) については、「使用者の責に帰すべき事由」に該当する(=「休業手当」を払う必要がある)と解釈されています。
これは当然かと思います。
ただ民法では、
「債権者(=使用者)の責めに帰すべき事由によって債務を履行する(=働く)ことができなくなったときは、
債権者(=使用者)は、反対給付の履行(=賃金の支払)を拒むことができない。」(民法第536条2項)と規定されています。
民法での「債権者の責めに帰すべき事由」は「故意、過失または信義則上これと同視すべき事由」と解されていますので、
使用者の故意・過失による休業の場合は、労働基準法による「休業手当」(平均賃金の60%)でなく、
賃金を100%請求することも可能
である、ということになります。
ただ実際には、「使用者の故意・過失」を証明するのは困難であり、裁判となると時間もかかりますので、
労働基準法の「休業手当」を請求するケースが多いのでは、と思います。
# 「休業手当」の目的の一つは、この「使用者の故意・過失」の証明を省略し、使用者の責任範囲を拡大することで、
 裁判(費用・時間を考えると労働者にとって不利になります)を経ずに
 実質的に労働者の最低生活の保障を図る、ということにあるのだと思います。

ここで、「2) 故意・過失があるとは言えない「経営上の障害」」が問題になりますが、
次回説明したいと思います。

【参考】
労働法(菅野和夫著)第11版(P.439)
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