「古いバルカ」 透明水彩画 A5(210×148)2018年作 イタリア・ヴェネチア 個人蔵
2018年の夏、
ヴェネチアの税関跡の岬へ向かう大運河沿いの道でスケッチをして描いた作品です。
サンマルコから水上バスに乗って大運河に入っていくと
左側の岬の先端近くに古い船が停泊しているのが見えました。
少し気になったので見に行こうとサルーテ駅で降り、
運河沿いの岬へ向かう道を心ウキウキと歩いていきました。
だんだん見えてきて、白地に赤いラインが印象的な二本マストの小型の帆船でした。
よく見ると木製の板がくたびれてはいますが、
エンジンも積んでいるようだし、まだなだ元気に走れそうです。
今となっては珍しい存在ですが、
昔はこんなふうな帆船がヴェネチアの海で帆を美しく広げ
時代の主役となってかっこよく走っていたのでしょうね。
動力源はなんといっても風だよりですから
その見えない相手を敏感に感じ取り
自然を知り逆らわず
船を無理なく自由に操り
目的地まで運んで行く船乗り達の素晴らしい力を
この古い帆船が静かに物語っていました。
私もそうですが、
ヴェネチアの街やサンマルコの建物たちもこの帆船をずっと眺めていました。
気が付けば水の妖精も現れていて船の下で遊びだし
それはまるで古い友達をあたたかく迎えているかのようです。
古いバルカは歌いだしました。
ガラガラと割れた声ではありましたが、
どこか遠くを見つめているようないい歌声です。
独り言のように歌い
彼が見聞きしたいろんな昔話を物語っていました。
水の妖精がその歌の拍子に乗っかって丸くなり
ゆらゆらとクラゲのように遊び流れて
やがて海の中へと持ち帰るように消えていきました。
私の大好きな
ヴェネチアの一コマであります。
※写真は実際に停泊していた古いバルカ(船)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます