「いつも見てくれてありがとう」 透明水彩画 A5(210×148)2019年作 イタリア・ヴェネチア 個人蔵
2019年の夏もヴェネチアで絵を描いて個展をさせていただきました。
Kokonton Galleryのみなさまには大変お世話になりまして、
心より感謝しております。
3年続けて夏のヴェネチアで絵を描いたのですが、
作品が出来上がってきますと、その年の顔がそれぞれあって面白いです。
何度描きに行ってもヴェネチアが楽しくて飽きない。
なぜこんなに好きなのだろうかと思い当たる理由を考えてみました。
運河のゆらめきが好きだし
船の移動の面白さも好きだし
立派な屋敷のボロボロの壁の適度な補修の美しさなんか最高だし
などなど
どんどん出てきます。
そして好きになると
不思議と気にならなくなってくることもあります。
運河のドブ臭い匂いだって気になりませんし
船のエンジンのうるさい音だって心地いいですし
犬や鳩の糞の多さだってほほえましくなりますからねー
また
寂しくなってしまうこともあります。
去年まであったお店が閉めていたとか
去年まで毎日家の前で椅子を出して風景を眺めていたお爺さんの姿が見えなくなったとか
去年まで窓が開いていて、素敵な緑でいっぱいのバルコニーのお家が空き家になっていたとか
さびしいけど
移りゆく流があって
しかたないね・・・
まぁ
風景と楽しく飽きずに向き合って絵を描く場所があるって
ほんと幸せでございます。
さて今年の作品のご紹介です。
「いつも見てくれてありがとう」
この絵はサンマルコ広場にある大きな鐘楼を描いた作品です。
漁師の島のブラーノ(Burano)島なんかに行く船に乗って遠くベネチアの方を見ると、
ちょこんとこのサンマルコの鐘楼が顔を出していて、
ああーヴェネチアはあそこか~と思って、
まるで自分のお家を見つけたように嬉しくて安心いたします。
なにせ遠くからでも見えるぐらい大きくて、高さは98.6mもあるそうですよ。
作られた当初は海のかなたからやってくる敵を見つけるための見張り塔の役目があったものですから
それぐらいないといち早く見つけれませんからね。
そして
あのガリレオ・ガリレイがこのサンマルコの鐘楼から望遠鏡の実験をしていたという話ですから
歴史の大きさも感じます。(今の鐘楼は1902年に崩壊したので、1912年に再建されたもの)
この鐘楼が崩壊して瓦礫の山になってしまうまでの連続写真を見たことがあるのですが、
見た目はまったく同じ形のようでした。
ヴェネチアで愛された人気者だったから、また同じような姿になって生まれたのでしょうね~
よかったよかった。
サンマルコの鐘楼は
今日もヴェネチアの街を
風が気持ち良いあたりの
高いところから
ご機嫌に
見守ってくれています。