ろくびー

山中清隆 作品日記
Kiyotaka Yamanaka

イタリア風景「古いバルカ」イタリア・ヴェネチア2018年 水彩画

2018-12-18 19:38:17 | ヴェネチア

「古いバルカ」 透明水彩画 A5(210×148)2018年作 イタリア・ヴェネチア 個人蔵



2018年の夏、

ヴェネチアの税関跡の岬へ向かう大運河沿いの道でスケッチをして描いた作品です。



サンマルコから水上バスに乗って大運河に入っていくと

左側の岬の先端近くに古い船が停泊しているのが見えました。


少し気になったので見に行こうとサルーテ駅で降り、

運河沿いの岬へ向かう道を心ウキウキと歩いていきました。


だんだん見えてきて、白地に赤いラインが印象的な二本マストの小型の帆船でした。


よく見ると木製の板がくたびれてはいますが、

エンジンも積んでいるようだし、まだなだ元気に走れそうです。


今となっては珍しい存在ですが、

昔はこんなふうな帆船がヴェネチアの海で帆を美しく広げ

時代の主役となってかっこよく走っていたのでしょうね。



動力源はなんといっても風だよりですから

その見えない相手を敏感に感じ取り

自然を知り逆らわず

船を無理なく自由に操り

目的地まで運んで行く船乗り達の素晴らしい力を

この古い帆船が静かに物語っていました。



私もそうですが、

ヴェネチアの街やサンマルコの建物たちもこの帆船をずっと眺めていました。


気が付けば水の妖精も現れていて船の下で遊びだし

それはまるで古い友達をあたたかく迎えているかのようです。


古いバルカは歌いだしました。

ガラガラと割れた声ではありましたが、

どこか遠くを見つめているようないい歌声です。


独り言のように歌い

彼が見聞きしたいろんな昔話を物語っていました。


水の妖精がその歌の拍子に乗っかって丸くなり

ゆらゆらとクラゲのように遊び流れて

やがて海の中へと持ち帰るように消えていきました。




私の大好きな

ヴェネチアの一コマであります。







※写真は実際に停泊していた古いバルカ(船)



広島の風景「ティティン ティティン」2017年 水彩画

2018-12-07 20:00:42 | 広島

「ティティン ティティン」 透明水彩画 広島 A2(594×420) 2017年作 個人蔵



広島県尾道市にある標高178.8mの浄土寺山の展望台よりスケッチしました。

現場スケッチは2015年ごろで、着彩は2017年にして完成させています。


この展望台は千光寺よりも高い東側の山の上にあるので尾道の東半分を見渡せ、

目の前の尾道水道が東西に長く伸びて見えるとても気持ちのいい場所です。


また、尾道から少し離れているので観光客がわりあい少なく、

静かにのんびりと瀬戸内海風景を楽しむにはちょうど良いところでした。


やっぱり

のんびり静かな気持ちで風景を眺めていると

いいことがあります。



瀬戸内海に吹く島風を

肌でここちよく感じれたり


たまたま通りかかった空を滑るように飛ぶハヤブサに気付いて

嬉しくてやたらと興奮したり


しまなみの隙間にチラリと見える遠くの青い海に

静かな時の流れを味わうことができたり


そして

あんまり気持ちがいいので

風景の物語だって見えてきますよ。


たとえば・・・


ずいぶん昔、きっとここは山々に挟まれた谷でした。

その谷底にはきれいな小川が流れていて

いつも眩しくキラキラと光り

「ピチャピチャ ピチャピチャ」と楽しそうなせせらぎのリズムで

この谷一面にやさしく響かせていました。



鳥たちも動物たちもその楽しげなリズムにつられて谷を下り、

きれいな小川の水を飲んで

あまりの美味しさに嬉しい気持ちになり、

谷底から見上げる青い空と白い雲に

不思議な幸福感を味わって

また山の中へと消えていきます。


谷底の小川で生き物たちが感じた

たくさんの幸せな思い出は、

いつのまにか時がたって

今では海の底に横たわってしまい

もう誰も見ることはありませんが、


尾道水道を流れる海の水が

いつどこで知ったのか

潮の満ち引きの流れを使って

右へ左へと

ゆりかごでやさしく寝かしつけるように

その思い出を眺めているのでした。



そして今では

「ティティンティティン」と人々を運ぶ列車の楽しそうなリズムが

たくさんの夢と一緒にここちよく遠くまで響いています。






















そういえば

動物園で見たフラミンゴや女の子やクロエリセイタカシギなんかが

私のスケッチブックの中で

なんだか楽しそうなリズムに乗って

踊っているように見えました。







長崎風景「マリーナのある港町」2017年 水彩画

2018-12-02 19:25:39 | 長崎

「マリーナのある港町」 透明水彩画 長崎 A3(420×297) 2017年作 個人蔵


この作品は、2016年に長崎スケッチ旅行にて、稲佐山の山頂展望台から描き、

着彩は2017年にして完成させています。


港町の先にあるのが長崎サンセットマリーナ、

中ほどにある学校は福田中学校です。


小さな港町の狭い入り江の斜面には

まるで映画館の客席のように

家がぎゅうぎゅうと立ち並んでいました。



坂の町を上り下りするのは不便でしんどいけれど、

足腰を鍛えれると思えばありがたいし

ご褒美に見晴らしのいい景色が見れると思えば

嬉しくなります。


お家の窓を開け、長崎名物の格別に旨いかまぼことビールでも飲みながら

素敵なサンセットが眺められるというのは

とてももうらやましいですね。


一人のときも、誰かといるときも

うれしいときも、悲しいときも

いきものだって、船だって町だって

きっとその宝物の景色を楽しみに

毎日をここでがんばって生きているのです。

























そういえば

動物園で見たマンドリルは

カラフルでかわいらしいお尻と赤い鼻に

いかつい体格と強面な顔つきですが、


やっぱりそのまま素直に攻撃的な性格らしく

街で出会っても近づいてはいけません。



でも

時折見せてくれる

優しい目でチラリと見る表情を読み取ってみると

実は寂しがり屋のいいおじさんのようで


キャッキャとはしゃぐ子どもたちや

興味をもって眺めてくれる人たちを楽しみに

毎日をここでがんばって生きているように

思いました。