神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

大阪・法案寺。

2009年09月29日 | ◆大阪府


志宜山 法案寺

(しぎさん ほうあんじ)
大阪市中央区島之内2-10-4

摂津国八十八ヶ所霊場・第1番札所
大阪七福神・弁財天

通 称
日本橋聖天
(にほんばししょうてん)



道頓堀から1本北に入ったところに、朱塗りの山門が立っています。


〔宗派〕
高野山真言宗 準別格本山

〔御本尊〕
大聖歓喜天像
(だいしょうかんぎてん)


 法案寺の創建は非常に古く、推古天皇が皇位に就いていた6世紀末から7世紀初頭にかけての時期に開かれたといわれています。当時は、摂政として活躍していた聖徳太子が、仏教の受け容れを巡って対立していた排仏派の物部守屋公を打ち破った直後の時期でした。593(推古天皇元)年には「物部守屋公を破る事が出来れば仏塔を造り仏法の弘通に努める」と手彫りの四天王像に戦勝祈願をした聖徳太子が、その約束を果たすために四天王寺の建立を開始していることから、法案寺もこの頃に創建されたと考えられます。





「志宜大将」の扁額が掲げられた楠稲荷大明神(左)と、美しい松(右)。



 法案寺は摂津国の志宜野に建てられたことから「志宜山」という山号が付けられ、聖徳太子がこの地で仏法や経典を広めるための公案をされた事から寺号を「法案寺」としました。創建の地・志宜野は現在の法円坂町付近のことで、法案寺の「法案」が時代を下るにつれて「法眼」、そして「法円」と転じて今の「法円坂」という地名になったといわれています。

 その後は時の移ろいと共に衰微していきましたが、室町時代に入った応永年間(1394~1428年)には、長い対立の末に南北朝合一が行われた「明徳の和約」の際の天皇・後小松天皇の第1皇子だった称光天皇が再興を発願。その勅命を受けた松永政廣公が尽力し、四天王寺と並ぶほどの大規模な伽藍が再建されて往時の華やかさを取り戻すことが出来ました。この時の伽藍の広大さは、法案寺の第3世・正教上人の帰依を受けた蓮如上人法案寺の敷地を借りて石山本願寺を建立したという記述が「天文日記」にあることでも推し量ることが出来ます。





山門をくぐった正面にある本堂。



 法案寺は、戦国時代に本願寺が石山から退去した直後に起こった火災で類焼して灰燼に帰し、その後1583(天正11)年に大阪城築城に伴って強制移転され、同様に焼失した生玉明神(現在の生国魂神社)と共に現在の天王寺区生玉町に移転しました。それ以来、法案寺生国魂神社の別当寺となり、神社にあった9つの官寺を束ねる立場にありました。江戸時代には幕府から寺領300石を与えられ、歴代の大坂城代が帰依したこともあったので、法案寺は隆盛していきました。

 明治時代に入ると、法案寺は1879(明治12)年に新政府によって出された神仏分離令に伴って全国に激しく吹き荒れた廃仏棄釈のあおりを受け、大阪府の命を受けて寺領を失うこととなり、現在地である大阪市中央区島之内に移転してきました。1883(明治16)年6月には復興されましたが、残念ながら境内は往時のような規模に復することは叶いませんでした。その後も、1945(昭和20)年3月には米軍による大阪大空襲で焼失するなど受難が続きますが、聖観音立像大聖歓喜天は疎開していて焼失を免れ、戦後復興した堂宇に戻されて人々の崇敬を集めています。





「聖天さま」を象徴する巾着の形の香炉(左)と弁天堂(右)。



 本堂には平安時代末期の作といわれる聖観音立像が安置されています。聖観音は十一面観音とも呼ばれていることから、この立像も「十一面さん」と呼ばれており、元旦から1週間の間のみ開扉されます。さまざまな資料では御本尊は薬師如来だとされていますが、お寺の方にお伺いしたところ、この「十一面さん」の奥に安置されている秘仏・大聖歓喜天が御本尊だそうです。大聖歓喜天は「日本橋の聖天さん」と呼ばれ、「貧を転じて福を与える神」として広く信仰を集めていますが、非常に人間臭い仏様のため願い事が成就した際にはきちんと御礼参りをしなくてはならないなど、実際に人と接する時のような礼儀作法をわきまえて向き合わなくてはなりません。





山門をくぐってすぐ右にある水掛け不動尊。


アクセス
・大阪市営地下鉄千日前線・堺筋線「日本橋駅」下車、北東へ徒歩5分。
・近畿日本鉄道難波線「日本橋駅」下車、北東へ徒歩5分。
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拝観料
・境内無料  (※御朱印は300円)

拝観時間
・7時30分~16時

公式サイト



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