神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

京都・釘抜地蔵(石像寺)。

2008年04月12日 | ◇京都府 -洛中


家隆山 光明遍照院石像寺

(かりゅうざん こうみょうへんじょういん しゃくぞうじ)
京都市上京区千本通上立売上ル花車町


通 称
釘抜地蔵




千本通沿いに建つ「釘抜地蔵尊」の表門。良く見ないとつい見過ごしてしまいそうです。



〔宗派〕
浄土宗

〔御本尊〕
阿弥陀如来像
(あみだにょらいぞう)



 京都には、本来の名前よりも通称のほうが有名な寺院が数多くあります。北野エリアの千本通沿いを歩いていると、千本今出川の交差点を少し北に上がったところの民家や商店が並ぶ町並みのなかに、真っ赤な提灯が下げられた山門があるのに気付きます。ここが、人々の抱える悩みや苦しみを取り除いてくれるという「釘抜地蔵」、正式な名前を家隆山光明遍照院石像寺という、1,200年近い歴史を持つ古刹です。

 遣唐船で唐に渡り、真言密教の奥義を日本にもたらした高僧・弘法大師空海。その空海が、人々を現世の苦悩から救うという思いで唐から持ち帰った石を刻んで作ったという「苦抜地蔵」を安置したのが始まりだと言われています。819(弘仁10)年のことでした。当初は真言宗の寺院でしたが、平安時代から鎌倉時代初期にかけて東大寺の大仏殿の再建に尽力した俊乗坊重源によって中興されたときに浄土宗に改められました。




 
石畳の参道の先にある中門(左)。右は地蔵堂の前に立つ大きな釘抜きのモニュメント。



 「苦抜地蔵」が「釘抜地蔵」と呼ばれるようになったのは、室町時代に入ってから。1556(弘治2)年のこと、京都有数の大商人だった紀伊国屋道林は、突然両手の激痛に襲われます。名医の診立てを受け、効用のあると言われる薬を服用するなど手を尽くしましたが、一向に痛みが治まる兆しがありません。どうしたものかと苦悩する紀伊国屋道林は、出入りの商人から「千本通の苦抜地蔵は霊験あらたかである」と勧められ、藁にも縋る思いで7日間の願掛けをして平癒を一心に祈りました。すると満願の7日目の夜、紀伊国屋道林の夢枕に苦抜地蔵が立ち、「その手の痛みは、汝が前世において人形に八寸釘を打ち込んで他人を呪詛した報いである。私はその釘を抜き取り、前世の罪障を解いたので痛みも治癒するだろう」と告げました。

 翌朝、痛みがすっかり消えたことに驚いた紀伊国屋道林が早速石像寺を訪れて地蔵尊像にお参りしたところ、像の前には血に染まった2本の8寸釘が置かれてあったといいます。その恩に大いに感謝した紀伊国屋道林は地蔵尊の恩に少しでも報いようと、それから100日間お礼参りをしたといいます。このエピソードから「苦抜地蔵」は「釘抜地蔵」と呼ばれるようになり、以前にも増して人々から厚い崇敬を集めるようになりました。




 
人々の「苦」を抜いてくれる本堂(左)。右は、壁面に飾られている御礼の釘抜絵馬。



 祈願をする際は、まず地蔵堂脇にある箱の中にある竹の棒を自分の年齢数だけ手に持ちます。そして身体や心の苦悩の元となる「釘」を抜いて欲しいと願いながら、地蔵堂を一周まわるごとに1本ずつ箱の中へ棒を納めていきます。竹の棒が全て箱に収められたところで祈願終了となります。こうした願いが実って苦しみが癒えたときは、2本の8寸釘とミニチュアの釘抜きをくくり付けた絵馬を地蔵堂の外壁に奉納して「釘抜さん」に感謝の気持ちを伝えるというのが慣わしとなっています。




 
本堂の左奥にある、石造りの阿弥陀三尊如来像を祀る地蔵堂(左)と、右奥の稲荷社(右)。



 地蔵堂の裏には、1224(元仁元)年に伊勢権守の佐伯朝臣為家卿によって彫られ、翌年開眼されたという花崗岩製の阿弥陀如来三尊像が納められています。この石仏は台座から仏像本体まで、全てが一つの石から彫られた秀作で重要文化財に指定されています。また、観音堂には行基上人の作と伝えられる観音菩薩像も安置されています。さらに境内の奥には、空海が自ら掘ったといわれる井戸・加持水や、平安時代の歌人・藤原定家卿と藤原家隆卿の墓があります。




  
寺務所裏の墓地の奥には、弘法大師空海が掘りあげたという井戸・加地水があります。


アクセス
JR「京都駅」より市バス206系統「千本上立売」バス停下車すぐ
京阪電車「三条駅」より市バス59系統「千本上立売」バス停下車すぐ
釘抜地蔵(石像寺)地図  Copyright (C) 2000-2006 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.

拝観料
・無料

拝観時間
・5時30分~17時


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