11月22日(金)AM8時半 ベランダから通りを眺めた。
朝陽を受けて妻と娘が急ぎ足で駅に向かう。
母娘でディズニーに行くのだ。
母親の誕生日に息子夫婦がチケットをプレゼントした。
漁港の魚屋で鰊を買う。
豆腐も買う。
鰊の塩焼き、鰊の香ばしい匂いと味合いは良いな!
豆腐は豆乳鍋にした。
16時半、鳥豊で焼き鳥を10本買う。
銀座線 三越前まで歩く。
渋谷駅をエスカレーターで下りた。
18時 排気ガスが匂い立ち、エンジン音飛び交い
冬の蛍のごときネオンが瞬き揺れている。
交差点は蛾のように若者を魅了して集まるのだ。
道玄坂の道は、人群れで歩みはのろい。
18時半 介護病院の3階に上がった。
お袋はベッドの柵に手を打ち付けていた。
私をぼんやり見詰める。
会うたびに、表情が乏しくなる。
看護婦さんが鼻を吸引する。
「次男の○○さんですね」
私の名前を看護婦さんは呼んだ。
分かっているのだ。
「ご兄弟3人は、みなさん、お母さん似て、目がクリッとしていますね」
お袋は入院する前は太っていたので気付かなかったが
意外に目は大きいのだ。
弟夫婦が入って来た。
義妹は手袋をして、お袋の顔を上に上げた。
喉の吸引をした。
お袋の体を手荒に動かした。
こうすることで循環が良くなるらしい。
義妹が言った。
「男兄弟3人とも、頭の髪 前が少し白く後は黒い」
「お母さんと同じね」
これも意外だった。
89歳のお袋に道路地図のような皺はなかった。
私も実年齢より皺は少ない。
気付いていなかった。
やはり遺伝子繋がりの親子なのだ。
20時 弟夫婦に焼き鳥を渡し、病院を出る。
1階 フロアにクリスマスツリーが輝く
去年12月、年内いっぱいの命と告げられたが
まもなくクリスマスだ。
来年のクリスマスを迎えることが出来るだろうか?
山手通りは車のライトが絶え間なく騒音と共に通り過ぎる。
道玄坂を下った。
地下鉄車内は暖かくまどろんでいた。
突然、11月22日 良い夫婦の日
浮かんだ。
30数年前の私たちの結婚式だ。
当時は 良い夫婦の日 呼び名はなかった。
娘はその日を知っていて、母親をディズニーに連れて行ったのだ。
無頓着な父親をカバーしたのだ。
娘は高校大学を通して5年間ディズニーでバイトした。
22時自宅着。
早速 風呂を沸かし、ベランダで冷たくなった洗濯衣類を取り込む。
妻と娘は23時帰宅。
野生動物は雌の母娘はずっと暮らすが、雄は放浪の果てに死ぬ。
母親が風呂入浴中に聞いた。
今日が結婚記念日なのを知っていた?
「うん!お母さんも知っていたけど、お父さんは忘れている」と言った。
これでいいのだ。