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細胞が異物を排除、「オートファジー」の仕組み

2021-01-04 10:24:16 | 自然
「オートファジー」というのはあまり耳慣れない言葉ですが、日本語では「自食作用」と訳されています。

日本語にしてもあまり良く分かりませんが、概念自体は非常に古いもののようです。その意味は「細胞の中のものを回収して、分解してリサイクルする現象」と説明されていますが、細胞の恒常性を保つ働きとされています。

もともとは飢餓状態になった時に、細胞の中身をオートファジーで分解して栄養源にするというメカニズムが注目されていました。この辺りから自食作用という訳が出てきたのかもしれません。

その他細胞の新陳代謝を行うことがありますが、現在注目されているのは3番目の役割である細胞内の有害物質を除去する作用です。これは健康のために重要で、細胞内に有害なものが現れると、それを積極的に隔離して壊す作用です。

この有害物のひとつがウイルスを含む病原体であることから、最近注目されるようになりました。病原体が体内に侵入すると、免疫システムなどで排除しようとしますが、細胞内に入ってしまうと免疫細胞は手が出なくなってしまうのです。

オートファジーは、本来自分自身の成分を包み込んで壊すのですが、病原体は外から来た敵ですので、栄養にするためではなく細胞を守るために包み込んで壊す作用です。

このようにオートファジーが細胞の中で免疫の働きを担っていることが分かったのは、感染症学や免疫学の歴史の中でも大きな一歩となりました。オートファジーの能力は免疫細胞ではない普通の細胞にも備わっているので、とても広範囲な免疫ということができます。

このことが分かって以来、世界中の微生物学者が実験を始めた結果、多くの細菌やウイルスをオートファジーが攻撃することが分かってきました。しかしウイルスはなかなかの難敵のようで、全てのウイルスを攻撃排除できるというわけではありません。

たとえばヘルペスウイルスはオートファジーによって増殖が抑制されますが、HIVや日本脳炎ウイルスにはオートファジーが歯が立たないようです。

オートファジーはオートファゴソーム(細菌やウイルスを包み込んでしまうタンパク質の袋)というタンパク質で包み込んでしまうのですが、ある種のウイルスはこのタンパク質合成を抑制する遺伝子を持っているのです。

現在問題となっている新型コロナも、合成遺伝子にくっつくタンパク質を持っています。そこでひとつの考え方として、この新型コロナのタンパク質を阻害するような薬剤ができれば、オートファジーによって排除できる可能性が出てくるわけです。

このようにうまくオートファジーが働く環境を作れば、全く新しい作用機構の治療薬となるのかもしれません。この古くて新しいオートファジーなどは、細胞の防御機構として非常に面白いような気がします。


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