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ガンや糖尿病に関係する「免疫の老化」

2023-12-18 10:34:24 | 健康・医療
私は現役のころかなり長期間抗生物質を研究していました。

感染症治療に重要な働きをする免疫についても色々調べていましたが、最近この「免疫の老化」という事が話題になっているようです。

まずT細胞についてみると、加齢によって生まれたてで抗原にまだ出会っていないナイーブT細胞は激減し、高齢者の血液中のT細胞の多くは、以前の抗原の情報を記憶した「記憶型」となります。T細胞は胸腺で生まれますが、この胸腺が年齢とともに萎縮していくのです。

特に50歳を過ぎると顕著に委縮し脂肪細胞に置き換わります。このため新しく生まれるナイーブT細胞が減少し、代わって記憶型のT細胞が増えていきます。しかも理由はよく分かっていませんが、記憶T細胞はどんどん「疲弊化」していきます。

この疲弊化は特にキラーT細胞で顕著となるようです。加齢によるナイーブT細胞の減少や疲弊化記憶T細胞の増加は、感染の慢性化やガンの増加につながり、老化T細胞の増加は老化を促進する慢性炎症の増加や自己免疫疾患の増加につながると考えられます。

強靭な体を持つスポーツ選手は免疫能も高く、風邪などひかないだろうと思われがちですが、激しい練習や競技会のストレスで胸腺が委縮し、T細胞が減って免疫能は低下しています。このため優秀な選手でも色々な病気に冒されることがあります。

骨髄は加齢によって胸腺ほど萎縮することはないのですが。骨髄の支持細胞が老化しT細胞ほどでないにしても新しく生まれるB細胞は減少するといわれています。

自然免疫についても一般的に加齢によって、骨髄での造血は赤血球とリンパ球は減少し、単球や好中球への分化が増加するといわれています。

高齢者は、炎症を起こして病原体を排除するのに必要な物質である「サイトカイン」が過剰に産生され、炎症が過大に起こるサイトカインストームを起こしやすいのですが、それにはこの自然免疫系が強くなる傾向が関与しています。

さらに単球から分化するマクロファージも炎症性のM1型が多く、貪食や組織修復に関わるM2型が減少します。このマクロファージの変化も、高齢者で老化細胞の除去が減ることと慢性炎症が増えることに結びついています。

このようにいろいろな免疫の老化について述べてきましたが、その他加齢によりブレーキ役のPD-1が多く発現したりもするようです。

近年老化を自然現象ではなく、一種の病気と捉える見方が出てきていますが、やはり老化を治療することは難しいような気がしています。


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