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塩化物イオンに隠された味覚・食塩の甘さ

2023-04-09 10:38:54 | グルメ
味覚は不思議なものでメカニズムは皆同じはずですが、どちらが美味しいかアンケートを取ると絶対に100%はなく、偏っても7:3ぐらいになります。個人の好みと味覚とは異なるものかもしれません。

食塩(塩化ナトリウム)は、ナトリウムイオンと塩化物イオンが結びついています。ナトリウムイオンは口の味細胞にある塩味の受容体に結合し塩味として感じられますが、塩化物イオンは甘味やうま味の受容体に結合していることが分かりました。

岡山大学などの研究グループが、メダカやマウスの実験で発見しましたが、ヒトにも同様に塩化物イオンが結合するタイプの受容体があるようです。

ヒトの口の中には甘味、うま味、塩味、苦味、酸味を起こす物質と結合する受容体があります。それぞれの味を起こす物質と対応する受容体の構造が、カギとカギ穴の関係のようにぴたりと結合して味を識別します。

こうして甘味受容体は砂糖、塩味受容体はナトリウムイオンを感知します。この仕組みは人や魚類など脊椎動物に共通しています。ヒトはみそ汁に近い0.8〜1%ほどの濃度の食塩水は美味しい塩味として感じますが、その10〜20分の1ほどだと甘く感じます。

これは60年前の米国の心理学研究で知られてきましたが、その理由は未解明でした。岡山大学の研究グループは、2017年メダカの甘みやうま味を感じるタイプの受容体のカギ穴部分の立体構造を解明しています。

この構造を詳しく調べるうちにアミノ酸が結合するカギ穴のすぐそばに、何らかの別の物質が結合しているカギ穴があることが分かり解明に挑みました。放射光施設やフォトンファクトリーで解析した結果、この物質が塩化物イオンであると判明しました。

しかもこのカギ穴は甘味受容体とうま味受容体の共通の構成要素にあり、ヒトを含むほとんどの動物が持つことも分かりました。甘味やうま味の受容体のカギ穴にアミノ酸などの味物質が結合すると構造増が変化し、味の情報が体内に伝えられると考えられています。

メダカで調べると、塩化物イオンが結合してもこれと同様の構造変化が起きました。マウスの神経を調べたところ、塩化物イオンが甘味受容体を介して甘味の神経を応答させており、味覚として感知していることを確かめました。

塩化物イオンが受容体や味の神経に働くときの食塩水の濃度は0.05%ほどで、これは60年前の研究のヒトが甘味を感じる濃度とよく一致しました。実際マウスはただの水よりこの薄い塩化物イオンを含む水を好んで飲み、好ましい味と感じているようです。

食塩は生命維持にに必要ですが、取りすぎると血圧が上がるなどして不健康です。

薄い食塩水は身体に必要なミネラルを補給するためにこのようなメカニズムとなっており、味覚と健康とが理にかなった形で関連していることがうかがえる成果としています。


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