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iPS細胞の臨床試験の実態

2021-03-14 10:24:40 | 健康・医療
京都大学の山中先生が見出したiPS細胞は、すでに15年がたっていますがなかなか実用化のめどが立っていない気がします。

研究資金としては2013年度から10年間の計画で約1100億円が投入されており、それなりに良い環境で研究が進んでいます。再生医療として大いに注目を集めていますが、臨床試験でも多額の費用がかかったり、当初の予想よりは進展していないような気がします。

週刊朝日に掲載された臨床研究の記事がありましたのでその一部を紹介します。最初の臨床研究は、理化学研究所との共同で網膜色素変性症の患者にiPS細胞から作った神経網膜シートの移植です。

この病気は光を感じる網膜の視細胞が周辺から死んでいき失明に至るもので、国内に約4万人の患者がいると推定されています。この治療法は現実的には存在しないため、この網膜移植術が期待されています。

健康な人のiPS細胞からつくった前駆細胞を使った直径約1ミリ、厚さ約0.2ミリの神経網膜シートを、網膜下に1〜3枚挿入するものです。視細胞になる直前である前駆細胞の段階で移植すると、成熟していくため網膜再生が期待されています。

今後は約1年かけて安全性を確認し、さらに数年機能面の観察を続けるようです。2020年10月に始まったもうひとつの臨床研究が、iPS細胞から作った免疫細胞であるナチュラルキラー(NKT)細胞を、ガン患者の血管に注入する治験です。

対象者は頭頸部ガンの患者で、頸や顎、鼻、口の中、のどなどにできるガンで、国内に数万人の患者がいると推定されています。この研究は千葉大学と理化学研究所が共同で進めています。

NKT細胞とは自然免疫系に属するリンパ球の一種で、入ってきた外的を真っ先に反応して退治するパトロール隊のようなものです。しかし人血液中にはわずかしか存在しないので、実用化は難しいとされていました。

この臨床研究ではNKT細胞を取り出し、iPS細胞にして増やしたうえで再びNKT細胞に変化させるというプロセスを経ています。こうすることでより免疫の働きを持つ物質を多く分泌することができるとしています。

今回の治験の主な目的は安全性を確かめることで、合わせて有効性なども調べています。この様にいくつかの臨床試験は始まっていますが、このiPS細胞を用いる場合の最大の欠点は非常に準備に時間がかかるという点です。

そのため一つの治験に莫大な費用がかかり(先の網膜でも5000万円以上)、果たして一般的な治療法になり得るのか疑問です。当然コストダウンの研究も行われているようですが、iPS細胞から目的の細胞を作ること自体にまだ何千万もかかっているようです。

私もiPS細胞には再生医療という新しい分野での応用を期待していましたが、何となく期待外れにならなければよいのですが。


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