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酵素・微生物の有機化学への利用

2018-07-24 09:57:14 | 化学
私の専門の有機合成化学に酵素や微生物を利用し、有機化学では作るのが難しいような化合物をつくりだすという仕事を10年ほどやっていました。

ここでこの仕事について書いてみますが、分かりやすく書けるかどうかあまり自信がありません。

私は若いころから酵素反応などに興味を持っていました。特に立体特異的に反応が進むという点で、何とか利用できないかと漠然と考えていました。この立体化学というのは例えばアミノ酸のDとLという問題ですが、多くの化合物は平面的に書くと全く同じですが、立体的には重ね合わせることができない立体異性体というものを持っています。

よく右手と左手にたとえられますが、鏡に映したような関係(鏡像体という言い方もあります)でよく似ているのですが、上下に重ね合わすことができない状態です。

実際の有機反応の場合は、反応点に表から攻撃するか裏からくるかは50%の確率で起きてしまいます。これを裏をブロックして表からだけ攻撃するようにすると立体特異的となるわけですが、通常の有機反応では全く区別することができませんので、確率通りDとLが1:1でできてしまうわけです。これをDL体とかラセミ体と呼んでいます。

薬の受容体というのはいわば手袋のようなもので、右手だけしか入りません。私が研究していた以前は、ラセミ体であっても半分効果のある薬物が入っているということで認められていました。しかしこれも半分不純物が入っているという見方に変わり、DまたはLの片方だけを作ることを要求されるようになってきたのです。

その点酵素というのはタンパク質の穴の中での反応ですので、もともと一方しかできない構造になっています。また酵素の種類は多く、かなりの有機反応がカバーできる可能性がありました。

しかし酵素は非常に高価なもので、簡単に手に入れることは難しいものでした。ところが30年ぐらい前から洗剤などに酵素入れるという動きが出始めました。油脂やタンパク質の汚れを落とすための酵素が大量精製され、かなり安価に入手できるようになってきたのです。

そこで酵素メーカーともいろいろ相談し、酵素をセライト(珪藻土)等に固定化したようなもの含め、色々と酵素を集めてみました。

この時期にロシアの研究者から画期的な論文が発表されました。酵素というものは当然水の中で機能を発揮し、有機溶媒などと触れると活性が無くなってしまうというのが当時の常識でした。

この論文は、その酵素を有機溶剤の一種であるヘキサン中で使用してもしっかり機能するというものでした。長くなりましたので次回に続きます。

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