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「クローン病」の発症経路を解明

2018-01-05 10:36:32 | 健康・医療
大阪大学の研究グループが、小腸の末端部である回腸等に炎症が起きる難病「クローン病」の発症メカニズムの一端をマウスを使った実験で解明しました。

異常な免疫細胞が肝臓で作られた胆汁酸に触れ、腸内で暴走して炎症を起こすと考えられ、新たな治療法の開発も期待されています。

腹痛や下痢が続くクローン病は国指定の難病で、10~20代で発症する人が多く、国内の患者数は約4万人と推定されています。食の欧米化で脂肪の摂取量が増えたことで患者数も急増しているとされますが、はっきりした原因はわかっていませんでした。

研究グループは米国の研究機関と共同研究で、免疫細胞のリンパ球の表面に発現する特殊なタンパク質に着目しました。このタンパク質はT細胞に発現する多剤耐性トランスポーターとして知られるMDR1で、胆汁酸による腸管炎症を抑制するために重要であることが分かりました。

また一部の炎症性腸疾患の患者のT細胞ではこのタンパク質の機能低下が起こっていることを突き止めました。この研究では、MDR1の遺伝子を欠損させたマウスと野生型のマウスの脾臓からT細胞を回収し、T細胞がいないマウスに投与し、腸炎を誘導することで、MDR1が腸管炎症を制御するメカニズムを解析しました。

胆汁酸が豊富に存在する回腸では、MDR1が欠損するT細胞により、炎症性サイトカインの産生や酸化ストレスが高まり、回腸に重篤な炎症が生じることが分かりました。また胆汁酸吸着剤であるコレスチラミンが含まれたエサを与えることにより、回腸の炎症が抑制されることを見出しました。

このコレスチラミンは、胆汁酸を吸着する陰イオン交換樹脂で、高脂血症治療薬として使用されています。これは胆汁酸と異常なT細胞が触れ合わないようにすることで、炎症を起こす物質がリンパ球から放出されるのを防いだためと見られます。

クローン病や潰瘍性大腸炎のマウスのリンパ球ではこのタンパク質の働きが低下していることも判明しましたので、ヒトでも回腸は同様のメカニズムで炎症を起こしていると推測できました。当然これはマウスでの結果ですが、基本的な物質は同じですので、ヒトにも応用できそうな気もします。

研究グループは、コレスチラミンはすでに脂質異常症の服用薬として使われており、有効な治療法がなかったクローン病にも応用できるのではないかと話しています。


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