ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

薬が市場に出るまで 臨床試験Ⅲ 続

2015-05-31 10:33:07 | 
先日臨床試験のフェーズⅢが薬効の比較試験であり、その対照薬を決めるのはなかなか難しいことを書きました。このフェーズⅢにはもう一つ比較しなければいけないものがあります。それがプラセボ(プラシーボ)といわれている、日本語に直すと「偽薬」という、何の薬効も害もない物質です。通常このプラセボにはグルコースなどの糖類が使われています。なぜこのようなプラセボを比較として入れるのか、これはこのブログのサブタイトルにある「病気を治すのは薬ではなく自分自身」という点を差し引く必要があるからです。

すべての病気に適応できるかというと、当然無理な病気もあるのですが、患者さんがこれは新薬でよく効くと思って飲むと、その病気の薬でなくても病状が改善されることがあります。これをプラセボ効果と呼んでいますが、非常に大雑把にいうと、30%ぐらいこの効果が出ることが多いようです。私は現在の医療環境を考えると、このプラセボとの比較試験は必要がないと思っています。フェーズⅢの進め方を定めた薬事法が、いつできたのかわかりませんが、それなりの根拠があって3種の比較になったとは思いますが、対照薬との比較だけで十分と感じています。

具体的なフェーズⅢの進め方は、ダブルブラインド、二重盲検試験という方法がとられています。つまり薬を投与するお医者さんも、自分が投与する薬がこの3種類のうちのどれなのかわからないという方法です。医者がわかっていると、投与するときに微妙に差が出てしまい、プラセボ効果の出方が変わってしまうのを防ぐためです。
余談ですが、ある医療機関の結果を集計すると、新薬は対照薬よりは良い結果が出たが、プラセボに負けたなどという笑えない結果が出ることもあるようです。ですからやはり患者さんが自分の力で直してしまうというのは、かなり強いといえます。

どこの病院のどの患者さんに何を投与したかというのは、厳密な管理のもとに進み、最終的に新薬・対照薬・プラセボの有効性の比較を行うわけです。ここで新薬が最も効果が高いという結果が出て、やっと臨床試験がすべて終わるわけです。しかし実際には、既存薬は実際に使われている薬ですので、どの程度の有効性かは膨大なデータがあり分かっています。また新約もフェーズⅡでしっかり有効性を把握しているわけですので、ある程度結果は予測できる、つまりフェーズⅢが形式的なものになっているような気もします。

ここまでずいぶん長く書いてきましたが、以上の前臨床試験や臨床試験の結果をすべてまとめて、中央薬事審議会に申請することになります。

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