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なぜヒトは「裸」なのか、サルの皮膚との決定的な違い

2023-10-31 10:38:28 | 自然
今入力をしているPCの隣にネコが寝ており、尻尾がキーボードにかかり非常に邪魔なのですが、もふもふの毛が気持ち良いのでそのままにしています。

ネコのようにほとんどの動物は体毛に覆われているのに、ヒトだけは頭などを除いて体毛がありません。生存に有利な遺伝的形質が選択される「自然選択説」の観点から考えても、ヒトが「裸」になることは生存にはあまり有利にならないように思えます。

進化論を提唱したダーウインをはじめとして多くの進化学者が、なぜ類人猿の中でヒトだけが体毛を持たなくなったのかについてさまざまな仮説を提唱していますが、未だ定説が確立されるに至っていません。

現時点で最も有力とされるのが、樹上生活をしていたヒトの祖先が、生活範囲を草原に広げてことがきっかけで急速に無毛化が進んだとする「サバンナ説」です。ヒトの祖先が生活したとされるアフリカ大陸のサバンナは、厳しい直射日光を遮る樹木が無く高温で乾燥しています。

こうした過酷な環境で生き抜くうえでは、体温が高温にならないように効率的に体を冷やす必要があります。ヒトは水分を大量に含んだ汗を分泌するエクリン腺を全身に持っており、大量の汗を放出することで皮膚から気化熱を奪い体温を下げています。

発汗にによる効率的な熱放出を考えると、汗腺が長い毛で覆われているより、薄い産毛で汗腺が外気に露出している方が有利というのが「サバンナ説」です。

2021年にフィラデルフィアのグループが、エクリン腺に特異的に発現しているEN1という転写因子が、サルに比べてヒトに多いことを発見し、それがヒトが汗をたくさんかける要因になったのではないかと報告しました。

ヒトとチンパンジーの遺伝子はわずか1.4%しか異なりませんが、最も異なっているのが皮膚のバリア形成に関わる遺伝子群です。さらに皮膚のバリア機能だけでなく、髪の毛のケラチンに関連する遺伝子群も異なっています。

ヒトの祖先とされるネアンデルタール人の遺伝子が皮膚や毛に関わるケラチン遺伝子に高い頻度で保持されていることが分かっています。

この辺りの詳細は省略しますが、比較ゲノム解析の進歩は著しく、今後ヒトの皮膚の性質に関わる遺伝子が、近縁の霊長類やネアンデルタール人のような旧人類からどのように受け継がれてきたのか、詳細なことが分かりつつあるようです。

もしかすると、ヒトは「裸」になることで、サルからヒトになることができたのかもしれません。


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