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脳は「老化」ではなくむしろ「成熟」している

2024-06-11 10:36:51 | 自然
最近はヒトの名前が本当に出なくなり、顔を思い出すのですが名前は出ないことが多くなりました。年齢を重ねるにつれて人間の脳は老いていくと考えて、脳の老化と向きあっています。

しかし年齢とともに脳は「成熟」していき、若いころよりも的確な判断が下せるだけでなく、人生をより充実したものとして楽しめるという説もあります。

また将来技術的には、脳と外付けのメモリをつないでおくことで、必要に応じて過去の記憶を引き出して読み込むことが可能になるでしょう。そうなればもうもの忘れで悩むことはなくなるはずです。

しかし技術の力を借りて脳の機能を維持することで失われるものもありそうで、自然に年齢を重ねて成熟していく脳にこそ魅力があると考えることもできそうです。たしかに高齢者は、レスポンスが遅くなることがあります。

たとえば様々な写真を見せて、写っているものが食べられるかどうか即座に判断する実験を行うと、子供は反応が速い一方で、年配の方は答えるのに時間がかかります。しかし判断を下すまでの時間は長くなっても、決して判断力そのものが衰えているわけではありません。

実験中に高齢者の脳を調べてみると、さまざまなことを考えていると分かったのです。長年にわたって取捨選択してきた有用な知識や経験に基づいて、より正確でニュアンスに富んだ判断を下そうとしているのでしょう。

また記憶力が衰えていくことも、人間らしい生活を支える重要な要素になっているのです。ゲノム編集をで脳の機能を強化して、一度覚えたことを忘れない「天才ネズミ」を作った研究があります。

記憶力が抜群だと、1年前の出来事も昨日のことと同じくらい鮮明に覚えてしまいます。そのためどちらが古い記憶なのか、さらにどれが進行中の現実なのかすら分からなくなるのです。実験中餌場の位置を変えてみると、天才ネズミはすぐに新しい場所を覚えます。

しかしかつての餌場の位置も忘れることができないため、脳内でのアップデートが起こらず、新旧2つの餌場に向かい続けてしまいました。この例はやや極端ではあるものの、忘れるという脳の特性には重要な意味があります。

過去の楽しい体験の記憶が薄れていくからこそ、今目の前にある現実を新鮮にクリアに鮮烈に楽しむことができ、今を存分に味わえるのです。少しずつ記憶が色あせていき、昔の出来事がきちんと過去になるからこそ、新しい楽しみを見つける意欲や活力が湧いてくるのでしょう。

今が楽しいのは忘れられるおかげとポジティブにとらえることが、成熟した脳と上手に付き合っていく秘訣といえそうです。



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