けんけん日記 ~おもしろき こともなき世を おもしろく~

名古屋にて某会社を経営、その実態はトライアスリート&四国お遍路公認先達、そして「モノノフ」。(笑) 日常を綴っています。

雉も鳴かずば撃たれまい

2013年12月27日 | その他
思うことがあります。




雉も鳴かずば撃たれまい・・・。(笑)




ちなみに「雉も鳴かずば撃たれまい」の民話。
けっこう悲しい話なんですよ。

むかしむかし、犀川(さいがわ)のほとりに、小さな村がありました。
この村では毎年、秋の雨の季節になると犀川がはんらんして多くの
死人が出るため、村人たちは大変困っていました。

さてこの村には、弥平(やへい)という父親と、お千代(おちよ)という
小さい娘が住んでいました。
お千代の母親は、この前の大雨に流されて死んでしまいました。
二人の暮らしはとても貧しかったのですが、それでも父と子は毎日
仲良く幸せに暮らしていました。
そしてまた、今年も雨の季節がやってきました。
そのころ、お千代は重い病気にかかっていましたが、弥平は貧乏だ
ったので医者を呼んでやることも出来ません。
「お千代、早く元気になれよ。さあ、アワのかゆでも食って元気を
出せよ」
弥平がお千代に食べさせようとしても、お千代は首を横に振るばか
りです。
「ううん、わたし、もう、かゆはいらねえ。わたし、あずきまんま
が、食べたい」
あずきまんまとは赤飯の事で、お千代の母親が生きていたころに、
たった一度だけ食べた事があるごちそうです。
ですが今の弥平には、あずきどころか米の一粒もありません。
弥平は寝ているお千代の顔をジッと見つめていましたが、やがて決
心すると立ちあがりました。
「地主(じぬし)さまの倉(くら)になら、米もあずきもあるはずだ」
こうして弥平は可愛いお千代のために、生まれてはじめて泥棒をし
たのです。
地主の倉から一すくいの米とあずきを盗んだ弥平は、お千代にあず
きまんまを食べさせてやりました。
「さあ、お千代、あずきまんまじゃ」
「ありがとう。おとう、あずきまんまは、おいしいなあ」
「おお、そうかそうか。いっぱい食べて、元気になるんじゃぞ」
こうして食べさせたあずきまんまのおかげか、お千代の病気はだん
だんとよくなり、やがて起きられるようになりました。

さて、地主の家では米とあずきが盗まれた事に、すぐに気がつきま
した。お金持ちの地主にとっては犬のエサほどの量で、たいした物
ではありませんでしたが、一応、役人へ届けました。
やがて元気になったお千代は家の外に出ていくと楽しそうに歌いな
がら、マリつきをはじめました。
♪トントントン
♪おらんちじゃ、おいしいまんま食べたでな
♪あずきの入った、あずきまんまを
♪トントントン
お千代の歌を、近くの畑にいた百姓(ひゃくしょう)が聞いていまし
た。
「変じゃなあ、弥平の家は貧乏で、あずきまんまを食べられるはず
がないのだが。・・・まあ、いいか」
そのとき百姓は、大して気にもとめませんでした。

やがてまた大雨が降り出して、犀川の水は今にもあふれださんばか
りになりました。
「このままじゃ、また村は流されてしまうぞ」
村人たちは、村長の家に集まって相談しました。
すると、村人の一人が言いました。
「人柱を立てたら、どうじゃろう?」
人柱とは、災害などで苦しんでいる人々が生きた人間をそのまま土
の中にうめて、神さまに無事をお願いするという、むかしの恐ろし
い習慣です。その生きながらに土の中にうめられるのは、たいてい
が何か悪い事をした人だったそうです。
「そういえば、この村にも悪人がおったな」
と、言ったのは、お千代の手マリ歌を聞いた百姓でした。
「なに? 悪人がおるじゃと? それは誰じゃ?」
「うむ。実はな」
百姓はみんなに、自分の聞いた手マリ歌の事を話しました。

その夜、弥平とお千代が食事をしていると、
ドンドン! ドンドン!
だれかが、戸をはげしくたたきます。
「弥平! 弥平はおるか!」
「へい、どなたで?」
「弥平、おぬしは先日、地主さまの倉から米とあずきを盗んだであ
ろう。娘が歌った手マリ歌が証拠(しょうこ)じゃ」
お千代はハッとして、弥平の顔を見ました。
「おとう!」
泣き出すお千代に、弥平はやさしく言いました。
「おとうは、すぐに帰ってくるから、心配せずに待っていなさい」
「おとう! おとう!」
泣き叫ぶお千代を残して弥平は村人に連れて行かれ、そしてそのま
ま帰っては来ませんでした。犀川の大水を防ぐために、人柱として
生きたままうめられてしまったのです。
「しかし、たった一すくいの米とあずきを盗んだだけで、人柱とは
な」
と、同情(どうじょう)する村人もいましたが、下手な事を言うと今
度は自分が人柱にされるかもしれません。そういう時代だったので
す。

さて、村人からお父さんが人柱にされた事を聞いたお千代は、声を
かぎりに泣きました。
「おとう! おとう! おらが歌を歌ったばかりに」
お千代は何日も何日も、泣き続けました。
やがてある日、お千代は泣くのをやめると、それからは一言も口を
きかなくなってしまいました。
何年かたち、お千代は大きくなりましたが、やっぱり口をききませ
ん。村人たちはお父さんが殺されたショックで、口がきけなくなっ
たと思いました。

ある年の事、一人の猟師(りょうし)がキジを撃ちに山へ入りました。
そしてキジの鳴き声を聞きつけて、鉄砲の引き金を引きました。
ズドーン!
見事に仕留めたキジを探しに、猟師は草むらをかきわけていってハ
ッと足をとめました。撃たれたキジを抱いて、お千代が立っていた
のです。お千代は死んでしまったキジに向かって、悲しそうに言い
ました。
「キジよ、お前も鳴かなければ、撃たれないですんだものを」
「お千代、おめえ、口がきけたのか?」
お千代は猟師には何も答えず、冷たくなったキジを抱いたまま、ど
こかに行ってしまいました。それから、お千代の姿を見た者はいま
せん。
「キジよ、お前も鳴かずば撃たれまいに」
お千代の残した最後の一言が、いつまでも村人のあいだに語りつた
えられ、それからその土地では人柱という恐ろしい事は行われなく
なったという事です。

おしまい


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