田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

「ビッグコミック」とメルケル首相

2021年09月06日 | 話の小箱

 居間の小さなマガジンラックに一冊の漫画雑誌がある。今年の3月に買い、読み終えても捨てずにいた。名前は「ビッグコミック」 

 あれは大学の3回生の時だったと思う。銀閣寺道停留所で市電を降り、下宿に帰ろうとして、前の煙草屋で何気なく手にしたのがこの雑誌との出会いである。創刊して数年たったころで、当時は手塚治虫、石森章太郎、白土三平、水木しげる、さいとう・たかお等の錚々たる漫画家が寄稿していた。青年向けの質の高い漫画雑誌で、それからは月2回の発行を楽しみにしたものである。

 この雑誌は表紙がユニークだった。毎号、その時々の著名人の写真の様な似顔絵が表紙を飾っていた。とはいっても漫画だから2頭身などに戯画化されている。仮にいま過去の表紙を並べると、この半世紀における世相と時の人の移り変わりを見ることが出来るだろう。

 ところで。

 この春、忘れ去っていたこの雑誌を50年ぶりに買った。まだ出版されていたのかというのが正直な感想である。書店にはよく通っていたが、就職してから漫画雑誌を買わなくなり、見れども見えずで目に入らなかった。

 久方ぶりにその雑誌を手に取ったのは、当月号の表紙似顔絵がドイツのメルケル首相だったからである。陳列棚からじっとこちらを見据える彼女の視線に思わず引き込まれた。彼女は東ドイツ出身の物理学者で、16年の長きにわたりドイツ連邦共和国を率いてきた。強力なリーダーシップで欧州連合をも牽引してきた。

 コロナが世界に拡大し始めた昨年3月に彼女は異例のテレビ演説を行った。国民に対して厳しい現況を説明し、危機における自国の歴史を引用しながら、自身の行動に責任と自覚を持つよう率直に語りかけるその姿は話題を呼んだ。難民問題では国内から批判も浴びたが、ドイツの偉大なる母と称えられ、鉄の女と呼ばれたサッチャー首相とも比較される。そのメルケル首相がこの9月で政界を引退する。

 折しも、我が国の首相も今月での退任を表明した。思い返すとコロナ禍での首相就任で、火中の栗を拾うようなものだった。残念なことに、彼からは国難に立ち向かう覚悟と明確なメッセージは最後まで伝わってこなかった。16年間にわたりドイツ国民を指導してきたメルケルと、いつも伏し目がちに話し、1年で身を退く首相との二人の言葉には大きな違いがある。ただ私はそれは個人の資質というよりも、政治にかかわる国民性の違いに由来するのではないかと思っている

 ドイツのバラ「フリージア」 

 

*メルケル首相のテレビ演説内容はドイツ大使館のホームページで閲覧できます

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4 コメント

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メルケル首相 (tango)
2021-09-06 12:40:32
助成でもすごい方だなと思ってみていました。
会議に出られてもしっかり活躍されて存在感が
ありましたね。演説の時からだが震えているのを
見て心配したことがあります!
リーダーは難しいと思います
資質??・・訴える力・・何事も一緒ですが?
真面目だけでは難しいのですね?
日本の防衛大臣の時も問題がありましたね?
あの時、責任を取って辞めたOさんは知人でした。
返信する
漫画誌・・・・。 (kiyasume)
2021-09-07 19:18:21
ビックコミック・・・・・。

今でもありますよね。
私は勝手。月間漫画誌の
「ガロ」をよく読んで居ました。

この漫画誌にライバル心を寄せた、、
手塚治虫氏は「COM」と言う
月間漫画誌を創刊して居ましたよね。

私はいまだに此の2誌は所有して居ますよ、、
すみませんなんか書きたくなりました。

またお邪魔します。。。
返信する
kiyasume様 (九州より)
2021-09-07 22:04:13
こんばんは。
ガロは有名でしたが、あまり読んだことはありません。
あの当時は従来のコミックや新しい潮流の劇画など面白い時代でした。
ビッグコミックで子ども向けとは違う、大人の漫画があることを知りました。
コメント有難うございます。
返信する
tango様 (九州より)
2021-09-07 22:11:33
国を率いるリーダーは事務方とは違って、なかなか難しいです。
バブル崩壊以後、日本の指導者は小粒な人が多くなりました。
後世に伝説として残るような人がいませんね。
メルケルさんはドイツ統一という荒波を乗り越えて行動力、情と理が備わっていたような気がします。
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