HAYASHI-NO-KO

北岳と甲斐駒ヶ岳

イヌビワ2(イヌビワコバチ)

2013-07-03 | 番外編 昆虫・鳥など

ここまで撮るとは思いもしなかった。
須磨離宮公園で毎月20日に開かれている「見どころ散歩」は
台風が気がかりだったけれど中止にはならなかった。

雨がまだ少し降り続いていたので、潮見台休憩所で座学。
後半にイヌビワとイヌビワコバチの共進性の話をした。
幾つか残っていた雄株の果嚢と、新しい花嚢をサンプルにしたのだけれど
果嚢の中からイヌビワコバチが飛び出してきたグループがあった。

だから今日、三個ほどの雄株の果嚢を割って中を調べた。
居る、居る。

持っているカメラの限界だから、画像そのものは不鮮明だけれど確かに動いていた。


この画像は明石公園で撮ったもの。


二つに割った雄株果嚢、上の画像と同じ程度のもの。
割った時点で、数匹の雌バチが動いていた。

雄果嚢の開口部、翅を持った雌のイヌビワコバチがここから飛び出す。

開口部近くには、飛び出してゆく雌バチに花粉を運んで貰えるように雄花が咲いている。
 
点々と見える黒がイヌビワコバチ
しばらくルーペで見ていたら、次々と胚珠から出て来はじめた。

よく見ると、イヌビワコバチの卵が産み付けられた花には、かなり目立つ大きさの膨らみが見える。

画像右側が開口部と、雄花
左側は殆どが雌花で、寄生されてイヌビワコバチが出て来る直前のものは
黒い玉状に膨らんでいる。

全部の雌花が膨らんで見える訳ではない、つまりは寄生されている訳でも無い。
 


光を浴びることはないから、花の一つ一つは半透明。


 




翅がまだ乾ききっていないのか、花の間を何度も往復している。


 
時には、翅のないものも動いている。
雄バチだろうか。
 





 










すっかり翅も乾いたようで、この直後にイヌビワを離れた。
 



(2013.06.22 大明石町)

雌株に花が咲き始めている。
やはり雄株よりもかなり遅い。

(2013.06.29 明石公園)

イヌビワ(犬枇杷) クワ科イチジク属 Ficus erecta
ビワはバラ科植物、花の仕組みは全く違う。
(2013.07.01 明石公園)








▲ 冬に花嚢をつけるのは雄株。そこにイヌビワコバチが寄生、卵を産む。
やがてその中で羽化したイヌビワコバチの雄と雌。
雄には翅はない。

▲ 雌には翅があるので雄花嚢から抜け出る際に、入り口付近の雄花の花粉を翅につけられる。
この仕組みはイヌビワの知恵。

雄は残念ながら飛び立てないので、花嚢の中で死ぬ運命。

▲ 飛び立った雌は、育ち始めた雌株の雌花嚢にも入り込む。
ここでもイヌビワは二つの仕組みを持っている。
雌株には花柱の長い雌花、雄株には花柱の短い雌花。
花柱が長いと雌は産卵出来ず、翅につけられた花粉をまき散らしてくれるので無事に「果実」が出来る。
花柱が短い場合には産卵が可能なので、コバチはしっかりと寄生出来る。
いずれにしても、花嚢に入った雌はその中で死んでしまうことになる。
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今年のイヌビワ



12 コメント

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よくこれほどまでに! (とんちゃん)
2013-06-24 14:44:46
永久保存版!!!
大成功ですね!!!
イヌビワの花なんて見たいと思うことが間違いだなんていえなくなりました。
イヌビワコバチの翅は飛び出すときに抜けるのだったか入るときに抜けるのだったかうろ覚えです。
お互いに一生を委ねて仲良く!ということでしょうか
中がこのようになっていたなんて興味をそそられました。
なんだか見たいものをはっきりした形で見られた!という感じです。
お陰さまで不思議の世界を垣間見ることができてありがとうございます。
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撮ろうとは思いませんでした。 (林の子)
2013-06-24 20:16:42
とんちゃん、こんばんは。
イヌビワの花は、撮ろうと思ったことがありましたが、わざわざ切り開いてまで撮ることは無い…と思っていました。
それでも、イヌビワコバチとの共進性を図解して説明している時に、雄果嚢からコバチが出て来ましたから、今の内なら撮れる…と思った訳です。
それ以上に、イラスト説明よりも画像の方がおもしろいかも知れませんし。
顕微鏡写真などは、顕微鏡が必要でしょうが、この程度だと肉眼でも動いている事は充分見えます。
イヌビワの花を撮る…と言うより、イヌビワコバチを撮ろうとして、ついでに花の状態まで撮れたと言うことになりますね。
興味の問題なので、見たくもないものとおっしゃる方も多いようです。
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びっくり (庭のzassou)
2013-06-24 23:09:00
気になっている実?花?のひとつで
中がこんなになっているなんて衝撃です
コバチが? 未知の世界で ありがとうございます

浜松城の崖で見たのは・・・数年前? 工事をしていましたのであれからどうなったか
zassouの植物図鑑=林の子さま 流石です
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外から見えない… (林の子)
2013-06-24 23:43:13
庭のzassouさん、こんばんは。
外から見えないけど、花が咲いている…。
それでも二つに切ってまで撮る花でも無いと思っていました。
ただ、たまたまこのイヌビワとイヌビワコバチの共進性の話をする事になって、雄株の果嚢を割ったところコバチが出て来たので、面白がって撮りました。
それだけの事ですから、他の果実の中まで見ようとも思いません。
時折、顕微鏡写真までやれば…と言われたりもしますが、そんな興味は全くありません。
鳥や昆虫などもたまたま近くに居るから…程度にしています。
あれもこれもやるほどの前提知識も持ち合わせていないし、素人の手には負えない…と言うのが実感です。
やはり身の丈に合った趣味の範囲から出ないようにしたいものだと最近特に感じます。

イヌビワ、近くにあれば是非一つ位は割ってみて下さいね。
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イヌビワとイヌビワコバチ (こいも)
2018-03-29 01:27:51
林の子さん
イヌビワとイヌビワコバチのお話・・・
目が点・・・です~
イヌビワって見たことがありませんが
とても小さなものなのですね。
その中のイヌビワコバチはさらに小さなものなのですね。
ビックリの連続です。すごいです・・・
何度も画像とにらめっこ状態です。
知らないことばっかりで
色々教えていただきありがとうございます。
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こんな画像…ですね。 (林の子)
2018-03-29 08:24:22
これも自分では驚きました。
調べて文字で理解しても分からなかったことが、カメラ向けて撮っている内に覚えられたと思っています。
興味があつても、虫は嫌い…だと、ここまではやらないですものね。
イヌビワにちゃっかり寄生して育つイヌビワコバチ、
イヌビワコバチに寄生されても、しっかりと受粉の手伝いをしてもらっているイヌビワ。
ここから、イチジクにも繋がったので面白かったです。
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感謝です! (やく)
2018-03-30 09:52:50
ちょうど鳥仲間からイヌビワとコバチの話を聞き、
偶然読んでいた本の中にその話が登場して、
頭の中がこんがらがったところへ、
林の子さんのこの映像に出くわしました。
おかげでよーくわかりました。
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おもしろいネタです。 (林の子)
2018-03-30 10:36:37
興味があれば…ですけどね。
何事もそうだと思いますが、興味があればどこに花が?と考えてしまうイチジク、
その元祖みたいなイヌビワに も、花粉媒介してくれる昆虫との不可思議な関係を覚えることになりますね。
五年ほど前に須磨でこの話をしたときのレジュメがありましたので
添付しました。
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続きが・・・ (とんちゃん)
2018-03-30 14:31:21
なんだか今でもはっきり分かりそうもないのですが翅のことがまだ引っかかっていたところ図解されているのでこれなら!って今感じています。
でも納得するにも時間がかかりそう
以前NHKテレビで放映されたのを録画してたまに見ていたのですがテレビが変った際に消えたのでもう見ることができません。
イヌビワとイヌビワコバチとの約束というような題名だったと思います。
哀れというか・・・オスには翅はないんですね
日にちをおいて再掲してくださればありがたいです。
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それぞれの役割 (林の子)
2018-03-30 15:35:32
人間が一番偉い…と思っている人が大半でしょうが、周りの助けナシでは何も出来ない。
動物や植物などは「馬鹿の一つ覚え」と人間が揶揄しているような
誕生の昔から、自然界に順応しながら生き延びている。
そう思うと、それぞれの持って生まれた知恵に驚かされます。
人間の限界はまだまだだと思いつつも、こうした自然の仕組みをのんびり見ていたいな…と思いますね。
理解出来ない魑魅魍魎が跋扈する人間界よりも単純明快な部分が多い気がします。
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