
その名の通り、秋の彼岸の頃に咲く。
突然地中から茎が伸びて花が咲く時には葉は姿を見せず、花が終わると葉が伸びてくる。
刈入れ前の稲穂が黄金色に垂れるたんぼの畦道に、あるいはそれを取り囲んでいる土手の叢などに
ビッシリと並んで咲く姿は一種異様な雰囲気を醸し出す。
幼い頃の記憶にはすっくと伸びた薄緑色の茎の頂に真っ赤な炎のような花をつけた彼岸花を
地面に一番近い辺りから手折って茎の外皮を左右交互に残しながら花の部分まで折り、「勲章」を作った思い出。
その根に毒素を含んでいるせいもあって、決して好まれる花ではなかった。
むしろ墓地や雑木林などに咲き乱れていた花だったから
「しびとばな(死人花)」「そうれんばな(葬式花の意)」「てくさり(手が腐るの意)」等と忌み嫌われた。
あの深紅が、死者の血を連想していたであろうことは、
同じように墓地に咲いていた「紅椿」の赤と共通するものだったと思う。
故郷の、今では周辺の殆どが宅地化され当時の面影は
裏手に広がる小さな小山程度にしか残されていない、淨蓮寺(じょうれんじ)裏の墓地。
かの地で、昭和30年代後半まで残っていた「土葬」の風習が綿々と営まれていた場所は「さんま」と呼んでいた。
死者を弔う場所として名づけられた「三昧場(さんまいば)」の意味だったのだろう、
かの地で「さんま」と呼ばれていたその裏手の墓地に至る途中のたんぼの畦道には、それはそれは見事に彼岸花が咲いていた。
死者の棺を乗せた大八車の後に従う、野辺送りの人たちの列に子供たちは連れ添い
時には畦道を走り抜けて彼岸花を手折った。
死者に繋がる記憶の中に、彼岸花は時に強烈な印象を残し、ぼんやりとした印象をも残した。
白花は、曼荼羅華(曼陀羅華/まんだらげ まんだらか とも)と呼ばれるのだけれど
本来は曼荼羅華、曼殊沙華は共に白い花。
まんじゅしゃげ【曼珠沙華】
〔仏〕(梵語 ma jūṣaka) 天上に咲くという花の名。四華の一で、見る者の心を柔軟にするという。
〔植〕ヒガンバナの別称。 季・秋 。日葡「マンジュシャケ」
曼陀羅華も、曼殊沙華も、仏教発祥の地であるインドでは、伝説の天界の花で白を基調とした花を指していた。
中国に渡った辺りから「manjusaka」が「赤い」を意味することでもあったので赤い花・曼殊沙華になったそうだ。
しけ【四華・四花】(シカとも)
〔仏〕法華六瑞(法華経が説かれる時に現れる六つの瑞相)の一として空から降るという
四種の蓮華(レンゲ)
白蓮華すなわち曼荼羅華(マンダラゲ)、大白蓮華すなわち摩訶(マカ)曼荼羅華、
紅蓮華すなわち曼珠沙華(マンジュシャゲ)、大紅蓮華すなわち摩訶曼珠沙華。
白・青・紅・黄の四種の蓮華。棺の四方に立てる白い蓮華、または、その造花。
こんな抹香臭い話は、花にとっては迷惑な話だろうけれど、詩人もこんな詩を詠んでいる。
早逝の詩人・中原中也と同じ、山口生まれの金子みすゞが詠んだ「曼珠沙華(ひがんばな)」
村のまつりは
夏のころ、
ひるまも花火を
たきました。
秋のまつりは
となり村、
日傘のつづく
裏みちに、
地面(じべた)のしたに
棲むひとが、
線香花火をたきました。
あかい
あかい
曼珠沙華。
▲ 2006 秋 ▲
▲ リコリス・ 詳しい名前までは知らないけれど、ヒガンバナではない。▲
☆
赤いヒガンバナはリコリス・ラジアタ(Lycoris radiata)
ショウキズイセン(時に、黄色のヒガンバナと呼ばれたりする)はリコリス・オーレア(Lycoris traubii(=Lycoris aurea =Lycoris africana))、
二つを掛け合わせた白いヒガンバナはリコリス・アルビフロラ(Lycoris x albiflora)
この辺りの名前の複雑さが面倒だ。
学名の一部だけをとって花の名前を云々することはかように取り違えをきたすことになる。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ヒガンバナ ヒガンバナ ヒガンバナ ヒガンバナ
リコリス・2022 白花ヒガンバナ2022
【季節の花たち サルスベリ】 【季節の花たち ネムノキ レンギョウ】 【季節の花たち トロロアオイとモミジアオイ】
ヒガンバナ・・・色々見させていただきました。
ありがとうございました。
リコリスですか・・・。コヒガンバナと言うお花もあるのですね。
でも、やっぱりヒガンバナと言えば、赤い赤いお花を想像することが多いです。
小さい頃の思い出の彼岸花も赤い色です。
母とのやりとりが思い出されます。
また、お彼岸の頃に何処かで出逢うことができたらと思います。
見つけると撮っていますね。
稲穂が黄金色に染まる頃に田んぼのあぜ道で…と言う図が
季節の風物詩などと新聞に載せられるので観光用に植えることも多い花。
それでもやはり私には「死者の野辺送り」が今でも連想されてしまう花。
コヒガンバナの種子を見たい…と思いながらも未だに果たせないでいます。
https://blog.goo.ne.jp/ken328_1946/e/3dab46c04e856ebe6fd876f50f6d4153
https://blog.goo.ne.jp/ken328_1946/e/dec5e0c04177496e46c74c70d4b22a40