携帯電話業界ブログ

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携帯端末向け次世代放送、1枠競う KDDIとドコモ陣営、免許争奪

2010-06-10 | 携帯事業者/日本



 2011年度にも始まる携帯端末向け次世代放送を巡り、NTTドコモとKDDIの免許獲得競争が本格化してきた。

 KDDIは3日、コンテンツ配信会社を設立したと発表し、NTTドコモ陣営は4日にも総務省に事業計画を申請する。同省は1社だけに放送免許を与える方針で2陣営の一騎打ちとなる。

 しかし、インターネットとの競合も激しく事業の将来性は不透明。


●事業者認定へしのぎ

 携帯端末向け次世代放送は、2011年7月にテレビのアナログ放送終了で空く周波数を使い、11年度中にも始まる放送サービス。

 専用受信機を搭載した携帯電話や携帯型ゲーム機、多機能情報端末で視聴できる。

 地上デジタル放送の番組を流す「ワンセグ」と異なり、映画やスポーツ中継、電子書籍など様々なコンテンツを独自に配信できる。視聴者は夜間などに端末に番組を蓄積しておき、後で見ることも可能。

 免許を取得した事業者は800億-1000億円をかけて、電波を出す基地局を全国に整備する必要がある。

 KDDlが新設したメディアフロー放送サービス企画は、コンテンツを配信する準備会社。資本金は5000万円で、KDDIが82%、残りをテレビ朝日など5社が出資した。

 他の放送局や出版社などにも参加を呼びかける。KDDIは米半導体大手、クアルコムと2005年末にインフラ整備の準備会社を設立ずみ。

 クアルコムが開発した「メディアフロー」と呼ぶ方式を使って参入することを表明している。

 総務省は参入事業者を選定するため、5月に事業計画の募集を開始。ドコモとKDDIの2陣営が締め切りの7日までに申請する予定。

 総務省は両陣営の事業計画を審査し、早ければ7月にも事業者を決定する。「全国放送免許」は1社にしか交付しないため、ドコモとKDDIがしのぎを削っている。


●視聴者獲得に課題も

 ドコモは06年にフジテレビジョンや伊藤忠商事などとマルチメディア放送を設立。地上デジタル放送技術を応用した国産の「lSDB-Tmm」方式を採用、4月には社員を大幅増員し、事業計画策定を進めてきた。

 新しい携帯向け放送が成功するかどうかは、対応する端末の普及にかかっているとみられる。

 当初メディアフローを支持していたソフトバンクは、携帯電話シェアの5割を押さえるドコモが優位と見て、08年秋にドコモ側に転じた。

 KDDI側は3日の記者会見で、「米国で商用化の実績があり、技術の成熟度に自信がある」(クアルコム日本法人の山田純社長)とアピールした。

 総務省は携帯端末向け次世代放送の実用化について、2004年ごろから議論してきた。

 その後、米アップルの「iPhone」や米グーグルのユ-チューブなど新しい端末やサービスが現れ、動画配信の環境は一変している。

 携帯電話会社主導の放送が視聴者をひきつけるには課題も多い。

 3日、準備会社設立を発表したKDDIの増田和彦サービス・プロダクト企画本部長は「国産技術にこだわってガラパゴス化を招く不幸を繰り返してはならない」と強調。

 日本独自の規格にこだわり世界から孤立することへの懸念で、NTTドコモ陣営が国産技術である「ISDB-Tmm」方式を採用するのをけん制する狙いがある。


●携帯向け放送の危うさ

 だが、両陣営のどちらが免許を獲得するにせよ、携帯向け放送の危うさを指摘する声は多い。

 KDDIは米クアルコムの通信方式が「国際標準」であることを強調するが、同方式でサービスを開始しているのは米国内にとどまる。

 一方でパソコンやスマートフォンなど端末を選ばずにインターネット経由で動画を配信するユーチューブや、特殊な機材を使わず生中継放送ができる「ユーストリーム」が利用者の支持を集めている。

 国は無線周波数が空くたびに事業者を募集する形でサービスと市場の育成を狙ってきたが、必ずしもうまくいっていない。ウィルコムの「次世代PHS」は、同社の経営破綻のため事業化の見通しが立っていない。

 衛星を使った携帯向け放送では、東芝の「モバイル放送」が事業に失敗し撤退した。

 台頭するネット系のサービスと互角に戦える有料コンテンツを豊富に供給し、受信可能な端末の種類を増やすことが成否の鍵を握りそう。





【記事引用】 「日本経済新聞/2010年6月4日(金)/3面」


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